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【練習記録】1000字程度のショートショート

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書くことを習慣にしたい。 1000文字前後で書く練習のショートショート。 ■ 練習作品のテーマにはお題サイト「腹を空かせた夢喰い」による100セットお題を引用しています。htt…
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記事一覧

15、とりついた島はゴミの山

 マス目を埋めるように言葉を並び立てる。少しのニュアンスが気になってバツをつけては、紙を…

三山 重
3か月前

14、空虚を掴む

 ボタンひとつで世界が変わる。一人暮らしの殺風景な部屋が雄大な荒野に変わる。右手には剣を…

三山 重
4か月前
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13、「見えないでしょ?」「見えるよ

 田舎のショッピングモールとは思えない盛況具合に軽く目眩がする。今日は日曜の朝に放送して…

三山 重
8か月前

12、ガスマスク越しに空を眺める

 パジャマを脱いで、制服に腕を通す。前髪を整えて、薄くリップを塗る。先週からコンタクトに…

三山 重
8か月前

11、キーボードを叩き割る勢いで綴る

「読まれた!」  ラジオネーム『影踏み単語』の名前がイヤホンから流れ込む。僕の名前だ。心…

三山 重
8か月前
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10、アイの輪切り

 見た目や行動は人間と遜色ない。食事は必要ないが、同じように食べ物を体内に取り込むことが…

三山 重
8か月前

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だったし、昼休みはどこかに行ってしまうし、夏のプールの授業はアレルギーの関係だかで見学だった。初めは花粉症かと思っていたのだが、うだるような暑さの夏の日もマスクを着けたままだったので少し気味が悪くもあった。彼女の席は直射日光が当たる窓際の席なのに、汗一つかいていなかった。胸元まで伸びた髪を結わえることなく、背中に流し、時折重力に負けてはらりと前に垂れる。結わえたらいいのにな、なんて思うがそれを

9、拒食症とカニバリズム

 爪を噛む。親指から順番に噛んでいたが、中指のターンでぺり、と音がして長く伸ばしていた爪…

三山 重
8か月前
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8、固まった絵の具と君の心を解く方法

 放課後の美術室には絵の具の重く甘い匂いが沈んでいる。窓を開けると風が匂いを床から持ち上…

三山 重
8か月前
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7、焼却炉で見た夢

 お別れなんだと思ったのは、一ヶ月経ってもLINEに既読がつかなくなってからのことだった。少…

三山 重
8か月前
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6、〇〇を□□とするならば

 もしもの話である。  頭に「仮」がつく話をどこまで鵜呑みにすればいいだろうか。  明日…

三山 重
8か月前
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5、マスクに隠した劣情

 隣の席の藤森さんは、新学期の直前に左足を骨折して入院していた。聞けば階段から落ちたらし…

三山 重
8か月前
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4、ほんとどうしようもない

 左手に指輪の痕を見つけたのは、二時間前のことだった。指輪を着けている姿なんて見たことが…

三山 重
8か月前
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3、ありがちなおはなし

 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に向かいました。 「で、川からすいかが流れてくるんだっけ」 「桃だよ」  田畠拓真がベッドに寝転がりながら、不抜けた声で言う。絵本から目を離さないまま鹿野伊月が呆れたように返す。 「上流に間抜けなキャンパーでもいたのかよ」 「そんな時期だよなあ」 「桃太郎ってそんな時期の話なの?」  拓真はベッドから身体を起こして本棚に手を伸ばす。読んでいた漫画を読み終わり、続き