ぐすたふ

運命は卒然としてこの二人を一堂のうちに会したるのみにて、その他には何事をも語らぬ。

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記事一覧

固定された記事

ととせはたとせ【小説】

 ととせはたとせ  祖父母の家を訪れた、最後の年のことである。降り続ける秋雨の冷たい寂しさがぴっとりと寄り添って離れない日だった。  僕は玄関を入ってすぐの居間…

ぐすたふ
9日前
11

河童忌やバットの小箱は汗に濡れ【日記7・24】

 7月24日は芥川龍之介の命日だ。「河童忌」と呼ばれている。  僕は普段から芥川が好きだ好きだと言って憚らないのだが、いざ芥川の命日となると、一体何を語れば良いの…

ぐすたふ
7時間前
6

ロングシートの列車はお好きですか【日記7・23】

 18きっぷで大阪へと帰ってきた。東京から大阪まで都合二日かけて帰ってくることになってしまった。  昨日は東海道新幹線の運休で浜松駅とその先の在来線が法外な混雑…

ぐすたふ
1日前
3

夏が夏って気づく頃には(『花図鑑』)【日記7・22】

 素敵な曲を見つけた。  『花図鑑』という曲。四分くらいの曲なのでぜひ聴いてみてください。え、時間が無いって? じゃあこんな日記今日の分は読まなくて良いので曲だ…

ぐすたふ
2日前
3

人生とは、蓋をひとつずつ閉じていく営みかもしれない【日記7・21】

 昨日の夜に東京に着いて、ひとやすみ。今日は正式に東京の家を引き払って関西に戻るための契約や手続きや何やかやをこなした。  不動産関係は、払わなくて良い金を払わ…

ぐすたふ
3日前
5

二種類の読書【日記7・20】

 青春18きっぷで東京に出てきた。  急に関西に帰ってきて、宙ぶらりんになっていた東京の家の、なんというか落とし前をつけるためだ。  めずらしく予定通りの時間に…

ぐすたふ
4日前
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ターボライターを買った【日記7・19】

 ターボライターを買った。  そんなに良いやつではなくて、コンビニで150円くらいで売っているやつだ。  これまで喫煙にはマッチを使ってきた。わざわざライターでは…

ぐすたふ
5日前
8

モーニングルーティン 40320日目【日記7・18】

 習慣化が苦手である。  毎朝七時十五分に公園に集合してラジオ体操をやるのがしんどい、とかそんなレベルではなく、病的に苦手である。実際この前それらしい病名がつい…

ぐすたふ
6日前
4

自分の抑うつについて【日記7・17】

 調子が下がり気味である。後学のために、いまの気分を書き残しておく。  このところは調子が下がると眠り過ぎ、あるいは起きられないことが多い。おそらく薬が効いてい…

ぐすたふ
7日前
8

日記【日記7・16】

 ところでこの日記は、ある後輩さんがnoteに日記を投稿されているのを見て感化されて始めた。  その後輩さんは実にたくさん小説を書いている。えらい。書いている人間が…

ぐすたふ
8日前
5

本棚の本は何順に並べるべきか【日記7・15】

 引っ越しに伴って本棚の整理をした。  本棚の整理というのは難しいものだと思う。僕は部屋なんかもすぐに散らかしてしまうたちなので、輪をかけて難しい。  どうせす…

ぐすたふ
9日前
4

みんなには地元ありますか?【日記7・14】

 実家の引っ越しを手伝った。  老後も賃貸を払い続けるのは大変だとか、もう少し広いところが良いだとか、諸々の理由で新居を購入することにしたらしい。  僕は家具類…

ぐすたふ
10日前
4

推しの子、コインロッカー・ベイビーズ、河童【日記7・13】

 漫画の『推しの子』と、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を交互に読み進めている。  どっちも正体のわからない親との因縁を辿るような作品だが、狙ってこの二作…

ぐすたふ
11日前
4

今日は生まれて何日目であるか【日記7・12】

 通院の日だった。このところは毎週通院している。  最初の頃は「今日は何回目の通院だ」と数えるまでもなく意識していたのが、いつからか判らなくなった。  最初は指…

ぐすたふ
12日前
5

「思考の洪水」がやってくる【雑記3】

 「思考の洪水」とは、僕の友人ののか先生の造語である。のか先生は大阪の大学で出会った人だが、とても良い文章を書き、しごできウーマンで、気が付けばなぜか北海道に引…

ぐすたふ
4か月前
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「君の小説のテーマはネ、『ピュアイズム』だよ」【雑記2】

「君の小説のテーマはネ、『ピュアイズム』だよ」  とは、僕のゼミの教授であるF先生の言だ。  大学の卒業を間近に控えた二月の肌寒い夜、四年間世話になり続けたF先生…

ぐすたふ
5か月前
8
固定された記事

ととせはたとせ【小説】

 ととせはたとせ  祖父母の家を訪れた、最後の年のことである。降り続ける秋雨の冷たい寂しさがぴっとりと寄り添って離れない日だった。  僕は玄関を入ってすぐの居間でじっと耳を澄ましていた。昼食を片付けて落ち着いた祖父母の長屋には、薄い屋根の上を雨粒の転がる音が聞こえてくるばかりだった。祖父母に見守られてちゃぶ台の上で絵を描きながら、僕は膝のお皿がむずむずするようなじれったい気持ちを燻ぶらせていた。  するとその内、ひんやりと湿った秋の空気が微かに震えはじめた。地鳴りがして、腹

河童忌やバットの小箱は汗に濡れ【日記7・24】

 7月24日は芥川龍之介の命日だ。「河童忌」と呼ばれている。  僕は普段から芥川が好きだ好きだと言って憚らないのだが、いざ芥川の命日となると、一体何を語れば良いのかわからない。  死に至った経緯とか、なぜ河童忌と呼ばれているのかとか、そういう調べればすぐにコトバンクとかが説明している内容を書く気にはなれない。好きな作品やおすすめの作品を紹介すれば良いのだろうか。  せっかくなのでひとまず紹介しておくと、芥川作品をまったく読んだことがない人には『羅生門』とか『鼻』とかの初

ロングシートの列車はお好きですか【日記7・23】

 18きっぷで大阪へと帰ってきた。東京から大阪まで都合二日かけて帰ってくることになってしまった。  昨日は東海道新幹線の運休で浜松駅とその先の在来線が法外な混雑になっているという情報をキャッチし、静岡で一泊する方針に切り替えた。  静岡駅のひとつ隣に東静岡という駅がある。操車場の跡地を開発しているようで、駅前には広大な駐車場や広場が作られている。少し歩くと快活CLUB静岡曲金店があり、駅から近く、設備も充実していて、静岡駅前の店舗より価格も安くなっているのでよく利用してい

夏が夏って気づく頃には(『花図鑑』)【日記7・22】

 素敵な曲を見つけた。  『花図鑑』という曲。四分くらいの曲なのでぜひ聴いてみてください。え、時間が無いって? じゃあこんな日記今日の分は読まなくて良いので曲だけでも聴いていってください。  もっと早くに見つけたかったという気持ちもありつつ、夏のはじめの今の時期にこの曲に出会えて良かったという気持ちもあり。  今日は18きっぷで東京から帰阪しているのだが、出発の王子駅で列車を待っていると、ホームの向かいの飛鳥山公園の鬱蒼とした木々の合間からたくさんの蝉たちの声が寄り集ま

人生とは、蓋をひとつずつ閉じていく営みかもしれない【日記7・21】

 昨日の夜に東京に着いて、ひとやすみ。今日は正式に東京の家を引き払って関西に戻るための契約や手続きや何やかやをこなした。  不動産関係は、払わなくて良い金を払わされたとか、これはどっちの負担だとか何とか、きな臭い話ばかり聞こえてくるのでどうしたものかと思っていたのだが、幸い不動産屋も大家さんも丁寧に対応してくれたので助かった。  天気も良く、歩いていると玉の汗をかいた。駅前の不動産屋に行って退去のことを話してから、大家さんのところへ向かった。あまり詳しく書くのは憚られるが

二種類の読書【日記7・20】

 青春18きっぷで東京に出てきた。  急に関西に帰ってきて、宙ぶらりんになっていた東京の家の、なんというか落とし前をつけるためだ。  めずらしく予定通りの時間に家を出発できた。無事に郵便局にも寄れた。最高の気分でバスに乗ってJRの駅に出ようとしたところで、今日が土休日ダイヤであることに思い至った。さらば新快速米原経由近江塩津行き。早速予定は崩壊した。  まあいいや。東海道を上るだけである。どれだけ間隔が空く区間でも三十分に一本は列車が来る。なんとかなるだろう。実際、最近

ターボライターを買った【日記7・19】

 ターボライターを買った。  そんなに良いやつではなくて、コンビニで150円くらいで売っているやつだ。  これまで喫煙にはマッチを使ってきた。わざわざライターではなくマッチを使う理由としては、かっこいいからとか、タバコの燃焼温度が低くなる分いい匂いがするとか、色々考えられると思うが僕の場合は単純に「ライターこわい」である。  親指の先わずか数ミリで火が燃えているという状態。なぜ大多数の人間があれを平気で扱えるのか、気が知れない。曲芸だと思う。  そんなに心配しなくても

モーニングルーティン 40320日目【日記7・18】

 習慣化が苦手である。  毎朝七時十五分に公園に集合してラジオ体操をやるのがしんどい、とかそんなレベルではなく、病的に苦手である。実際この前それらしい病名がついた。なぜだかわからないが耐えられない。黒板引っ掻く音みたいなもんである。  人間、朝起きると(あるいは昼起きると(あるいは夜起きると))いくつかやるべきことがある。布団を畳む。カーテンを開ける。顔を洗う。歯を磨く。髪を整える。着替える。朝食を摂る。カバンに荷物を詰め込む。  二十余年間いずれかの時間に起き続けて、

自分の抑うつについて【日記7・17】

 調子が下がり気味である。後学のために、いまの気分を書き残しておく。  このところは調子が下がると眠り過ぎ、あるいは起きられないことが多い。おそらく薬が効いているのだろう。療養に入った当初は夜ほとんどあるいは全く眠れない日の方が多かった。眠れないよりは寝すぎるくらいの方が有難いという気もする。  僕の症状は──詳しく書くと病名が三つくらいつくのだが──とにかく一番に解決したい症状としてあるのが、双極性障害による気分の変動である。  僕の場合はおおよそ半年間隔くらいで大き

日記【日記7・16】

 ところでこの日記は、ある後輩さんがnoteに日記を投稿されているのを見て感化されて始めた。  その後輩さんは実にたくさん小説を書いている。えらい。書いている人間が一番すごくてえらい。僕はこのところ何も書けていない。死。療養中でとかいろいろ言い訳をしようと思えばできるのだが、そんな風にして得た納得に何の価値がある。  日記は、何でも良いから少しでもまとまったものを書いた方が良いだろうと思ってはじめた。  まとまった日記を書くと、だらりとツイートをするよりも心地が良い気が

本棚の本は何順に並べるべきか【日記7・15】

 引っ越しに伴って本棚の整理をした。  本棚の整理というのは難しいものだと思う。僕は部屋なんかもすぐに散らかしてしまうたちなので、輪をかけて難しい。  どうせすぐに使うんだから、その辺に置いておく方が効率が良いだろうとか思ってしまう。そうすると大抵、どうせすぐに使わないものの場所がわからずに困ることになる。  洗濯物なんかも、時間をかけて畳んで、タンスにまで入れる意味がわからない。ワイシャツなんかは掛けておけば良い。後は山積みでも何も困らないだろうと思ってしまう。  

みんなには地元ありますか?【日記7・14】

 実家の引っ越しを手伝った。  老後も賃貸を払い続けるのは大変だとか、もう少し広いところが良いだとか、諸々の理由で新居を購入することにしたらしい。  僕は家具類の運び出しの間、物音と出入りする赤の他人にびびる猫様のお守りという大役を仰せつかった。うちにおはします三匹の猫様を僕の部屋に引き入れている間に、その他の家具を運び出す算段であった。  畏れ多くも猫様におかせられましては、環境の変化には大変敏感であらせられる。引っ越し後にはちゃんと部屋を歩き回れるか、餌を食べている

推しの子、コインロッカー・ベイビーズ、河童【日記7・13】

 漫画の『推しの子』と、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を交互に読み進めている。  どっちも正体のわからない親との因縁を辿るような作品だが、狙ってこの二作品になったわけではない。  『コインロッカー・ベイビーズ』は積読の中から読みたいものを手に取った。つい先だって『限りなく透明に近いブルー』を読んで村上龍に興味が出たから。去年出たばかりの『ユーチューバー』を新鮮なうちに読んだ方が良いのではという意見もあるが、まあ、もうこうなったのでしようがない。  『推しの子』の

今日は生まれて何日目であるか【日記7・12】

 通院の日だった。このところは毎週通院している。  最初の頃は「今日は何回目の通院だ」と数えるまでもなく意識していたのが、いつからか判らなくなった。  最初は指折り数えていたはずのものがいつのまにか判らなくなることはよくある。今日は夏休み何日目であるか。恋人との何回目のデートであるか。新居に移って何度目の自炊であるか。  けれども不思議と何回目かを忘れることがなかったのが大学時代の講義である。半期15回か全期30回のうちの、今日が何回目であるか。配られるPDFに回数の表

「思考の洪水」がやってくる【雑記3】

 「思考の洪水」とは、僕の友人ののか先生の造語である。のか先生は大阪の大学で出会った人だが、とても良い文章を書き、しごできウーマンで、気が付けばなぜか北海道に引っ越していて、北の大地で冬は大雪、夏はぬるい冷房と戦いながら、今やばりばり働いている。「思い立ったが吉日」が座右の銘であれと願いたくなる、行動力に満ち溢れた、蒸気機関車のような人である。好き勝手書いたが、怒られないかなこれ。最近はあんまりnoteは更新してないようだが。↓  そんなのか先生から『思考の洪水』という小説

「君の小説のテーマはネ、『ピュアイズム』だよ」【雑記2】

「君の小説のテーマはネ、『ピュアイズム』だよ」  とは、僕のゼミの教授であるF先生の言だ。  大学の卒業を間近に控えた二月の肌寒い夜、四年間世話になり続けたF先生とサシで呑みに行ったのは、意外にもその日が初めてだった。そうして僕はこの先、もうF先生と呑みに行くことは無いだろうと思っている。何か諍いがあったとか、あるいはそこそこお年を召したF先生に縁起でもない将来を予想しているとか、そういう訳では別にない。ただF先生は「大学を出た学生に対して先生として関わる心算は無い」とい