みんなには地元ありますか?【日記R6.7.14】
実家の引っ越しを手伝った。
老後も賃貸を払い続けるのは大変だとか、もう少し広いところが良いだとか、諸々の理由で新居を購入することにしたらしい。
僕は家具類の運び出しの間、物音と出入りする赤の他人にびびる猫様のお守りという大役を仰せつかった。うちにおはします三匹の猫様を僕の部屋に引き入れている間に、その他の家具を運び出す算段であった。
畏れ多くも猫様におかせられましては、環境の変化には大変敏感であらせられる。引っ越し後にはちゃんと部屋を歩き回れるか、餌を食べているか、トイレができているか、細目注意して見てやらなければならない。
みなさんも引っ越しや模様替えの際にはどうか気を付けてあげてくださいね。
人生で都合五度目の引っ越しであった。一番最初は、両親の離婚に伴い生家を逃げるように後にしたもの。最新のは単身東京へ向かったもの。東京の家は、一昨日書いたようにビョーキをやって引き上げて来たので宙ぶらりんになっている。ので、「都合」五回である。
そんなだから、地元というのが覚束ない。
強いて言えば生まれの大阪には愛着を抱いている。善意で舗装された道の間を千中行きの電車がぶおおおと電子警笛を鳴らして走り抜けていく御堂筋線とか。けれども大阪で過ごした期間より、大阪を出てからの年月の方がもう長くなった。
先日、久々に生家の前を通ってみたら、知らない車が停まっていて、知らない誰かの洗濯物が干してあって、大阪維新の会のポスターが貼ってあった。
したがって幼馴染というのもほとんどいない。最も旧い友人で、小学校高学年からのがいるくらいである。
でも僕は中学なんかではちっともクラスに馴染めず、大学に入ってやっと心通う友人に出会ったような人間だったから、生まれ故郷に長年居たとしても状況はそう変わらなかったかもしれない。
それでも、あそこに住んでる誰々がどうとか、自転車で買い物をしていたら誰々とすれ違ったとか、いう話をしている両親や友人が羨ましくなることはある。
家具をあらかた運び出した家は、廊下か洞窟みたいによく音が響いた。寂しくなるねという声を鏡のように返す。
部屋だってきっと寂しく思っているだろう。いままでどんな住人たちを迎え入れて見送ってきたのか、一杯やりながらたんと話を聞いてみたいと思う。
でも僕は薬の都合で酒は呑めない。
おわり
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