ぐすたふ

運命は卒然としてこの二人を一堂のうちに会したるのみにて、その他には何事をも語らぬ。

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ととせはたとせ【小説】

 ととせはたとせ  祖父母の家を訪れた、最後の年のことである。降り続ける秋雨の冷たい寂しさがぴっとりと寄り添って離れない日だった。  僕は玄関を入ってすぐの居間でじっと耳を澄ましていた。昼食を片付けて落ち着いた祖父母の長屋には、薄い屋根の上を雨粒の転がる音が聞こえてくるばかりだった。祖父母に見守られてちゃぶ台の上で絵を描きながら、僕は膝のお皿がむずむずするようなじれったい気持ちを燻ぶらせていた。  するとその内、ひんやりと湿った秋の空気が微かに震えはじめた。地鳴りがして、腹

    • 君と雨に打たれる夢を見ました【日記R6.8.27】

       気が付くと、Uさんが僕の隣に立っていた。  Uさんはときどき僕の夢に出てくる。Uさんとは学生だった頃は定期的に顔を合わせていたのだが、もう会わないで一年半近くが経つ。別にこちらから声を掛けても良いのだが、何か申し訳がないような気持ちがしてそういうこともしていない。ひどく世話になった人なのだ。ひどく世話になった人だから、簡単に会いに行けない。そういう人って、居るだろう。次に会うのは誰かの葬式だろうという気がする。僕にとってUさんは、そういう人だ。  僕はUさんが夢に出てく

      • もう二度と足を踏み入れない場所について【日記R6.8.19】

         荷物の箱詰めが終わった。まもなく引っ越し屋が来てくれて、ほとんどすべての家具が運び出される。明日、不動産屋への引き渡しが済んでしまえば、一年余り暮らした東京の家ともおさらばだ。  部屋をぐるり見渡して、ベランダから東京スカイツリーを眺める。明後日以降の僕の人生で、この景色を目にする機会はおそらく無い。僕は一年余り過ごした場所に、二度と足を踏み入れなくなる。  人生で、もう二度と足を踏み入れることの無い場所がいくつもある。そういう場所のことを考えると、不思議な気持ちになる

        • 新宿いちばん好きな街【日記R6.8.17】

           東京に遊びに来てくれた友人と一緒に、朝から新宿三丁目の喫茶店「珈琲喫茶エジンバラ」に向かった。サイフォンコーヒーが楽しめて、煙草が吸えて、24時間開いている、最近では貴重なスタイルの純喫茶である。  いつも夕方一服するか、夜通し粘るような使い方ばかりしていたので、モーニングの時間帯に来るのは初めてだった。トーストとコーヒーのセットを注文した。厚切りのトーストが布団みたいにふかふかしていて美味い。  新宿に初めて降り立ったのは、友人が笹塚に住んでいた頃に、京王に乗り換える

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        ととせはたとせ【小説】

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          休職直後のこと【日記R6.4.??】

           四月、仕事を休職した。  どうやら仕事が忙しかったり合わなかったりしたようで、どこかの回路が焼き切れたように頭も身体もうまく動かなくなってしまった。  眠れない、起き上がれない、飯が食えない、ひどい悪夢を見続ける、息苦しい、すべてのものごとに面白みを感じられない、現在にも過去にも将来にも何の希望も見出せない、仕事上の判断から簡単な買い物まであらゆる決断がつけられない。  といった、今にして思えば鬱病ど真ん中の症状が出ていたが、少なくとも半月くらいは気合いでもそもそと起

          休職直後のこと【日記R6.4.??】

          ものを捨てるのが苦手です【日記R6.8.13】

           コミケが終わり、いよいよ東京の家を引き払うまで数日となった。  引っ越しにあたり、不要なものは思い切って処分するようにしている。といっても、もともと身軽なタチなので、捨てべきものは少ない。もう着なくなった何着かの服と、何本かの透明傘と、それから小物が少しあるくらいである。本だけはたくさんあるが、これはどうしても捨てられない。  大きなゴミはベランダに置いていたゴミ箱だけである。これは規格外なので粗大ごみとして出すことになった。回収をインターネット予約して、コンビニで20

          ものを捨てるのが苦手です【日記R6.8.13】

          18きっぷ上京、3回の緊急停止に巻き込まれ【日記R6.8.9】

           新聞みたいなタイトルになってしまった。3回の緊急停止に巻き込まれ(しかも一度は緊急地震速報)、最後は新幹線に振り替えて終電で東京の自宅に到着するという無茶苦茶な一日だった。  が、とりあえず無事東京にはたどり着けたことを最初に報告しておきます。  昼前くらいの列車に乗って関西を出発。このときから、なんというか旅に対して身体がぴったりと合っていかない感覚があった。旅の前日に、ああ、出かけるの面倒臭いな、と思ってしまうあの感じがいつまでも抜けないような。  最速の新快速に

          18きっぷ上京、3回の緊急停止に巻き込まれ【日記R6.8.9】

          金髪にしたらええねん【日記R6.8.4】

           夕立ちの中僕が実家に着くと、すでにすぐ隣に住んでいる父の友人Dさんとその家族、それから父の弟が集まってビールを飲んでいた。  特に白いシンプルなデザインの入ったTシャツを着た父の弟は朝から呑んでいるらしくべろべろに酔っぱらっていて、僕を見るなり、お兄ちゃん、あのう、久しぶり、叔父さんなあ、もうう、うん! といってビールを一口飲み。みんな、みんなな、にやにや笑いながらぐるりと周りを見回した。ご機嫌なんやわ、うん! うう、お兄ちゃん、叔父さんな、こんな叔父さんで、すんません。

          金髪にしたらええねん【日記R6.8.4】

          ニコニコレンタカーで軽トラを借りた【日記R6.8.2】

           家族が新居を購入することになり、ほとんどの荷物は引っ越し屋が持っていてくれたのだが、いくつか旧居の方に残った荷物があった。まだ旧居の方で使うからとか、これは捨てるか使うかわからないからとか、そんな感じの理由で。  簡単な荷物なら軽自動車でも借りてきて運んでしまうのだが、残った荷物に長さ180cm超の木材など、普通の自動車では運ぶのが難しそうなものが混ざっていた。  ハイエースを動かせる友人を呼ぶかという話も出たが、どうも軽トラならレンタカーで借りられるらしいとわかった。

          ニコニコレンタカーで軽トラを借りた【日記R6.8.2】

          だんじりを見に行った【日記R6.8.1】

           大阪市内の母方の地元では夏祭りをやっている。神社に夜店が出るほかに、四台のだんじりが街を練り歩く。  だんじりといっても、岸和田のように激しく走り回るわけではない。天神祭りの系譜にある祭りで、だんじりはお囃子を鳴らしながらゆっくりと街を歩き回る。  お囃子は大太鼓、小太鼓、鉦で演奏される。お囃子は曲としても完成されていて、地域によって呼び方はいろいろ異なるようだが、「道中→二つ→かやく→しゃんぎり→長うら」などと、叩き方のパターンがどんどん変化していく。一曲をぜんぶ叩く

          だんじりを見に行った【日記R6.8.1】

          猫が死んでしまう夢を見た【日記R6.7.26】

           僕が居るのは戦場だった。  そこは砂ぼこりにまみれた街はずれである。白い塗り壁の石造りの建物がぽつぽつと間隔を空けて並んでいる。干し草みたいな茶色い雑草が蔓延り、牛車のような西洋風の質素な荷物車が一台放置されていた。空は夏の午後のように青く晴れ渡っている。日本ではなかった。どこかの大陸である。  僕の仲間が一人、石造りの建物の裏に身を隠していた。僕とその仲間は、第二次世界大戦の頃の軍人が来ていたような、くすんだオリーブグリーンの制服を着て、黒いヘルメットをかぶっている。

          猫が死んでしまう夢を見た【日記R6.7.26】

          縦書き同人誌の表記統一【日記R6.7.25】

           コミケに向けて原稿の編集を進めている。  想夜旅行舎(Twitter:@souya_ryokousya)という、主に旅行記などを発表するサークルに参加させてもらっている。僕は文芸学科という学科で編集を学んだりDTPソフトをいじったり、仕事でも編集の端くれをしていたので、編集兼執筆という役割を拝命した。  前回C103で制作した冊子の中身は下のようなカンジ。文芸誌と雑誌の中間くらいのテイストを目指した。  主宰に「旅は文学です、縦組みにしてみませんか」とかなんとか色々わ

          縦書き同人誌の表記統一【日記R6.7.25】

          河童忌やバットの小箱は汗に濡れ【日記R6.7.24】

           7月24日は芥川龍之介の命日だ。「河童忌」と呼ばれている。  僕は普段から芥川が好きだ好きだと言って憚らないのだが、いざ芥川の命日となると、一体何を語れば良いのかわからない。  死に至った経緯とか、なぜ河童忌と呼ばれているのかとか、そういう調べればすぐにコトバンクとかが説明している内容を書く気にはなれない。好きな作品やおすすめの作品を紹介すれば良いのだろうか。  せっかくなのでひとまず紹介しておくと、芥川作品をまったく読んだことがない人には『羅生門』とか『鼻』とかの初

          河童忌やバットの小箱は汗に濡れ【日記R6.7.24】

          ロングシートの列車はお好きですか【日記R6.7.23】

           18きっぷで大阪へと帰ってきた。東京から大阪まで都合二日かけて帰ってくることになってしまった。  昨日は東海道新幹線の運休で浜松駅とその先の在来線が法外な混雑になっているという情報をキャッチし、静岡で一泊する方針に切り替えた。  静岡駅のひとつ隣に東静岡という駅がある。操車場の跡地を開発しているようで、駅前には広大な駐車場や広場が作られている。少し歩くと快活CLUB静岡曲金店があり、駅から近く、設備も充実していて、静岡駅前の店舗より価格も安くなっているのでよく利用してい

          ロングシートの列車はお好きですか【日記R6.7.23】

          夏が夏って気づく頃には(『花図鑑』)【日記R6.7.22】

           素敵な曲を見つけた。  『花図鑑』という曲。四分くらいの曲なのでぜひ聴いてみてください。え、時間が無いって? じゃあこんな日記今日の分は読まなくて良いので曲だけでも聴いていってください。  もっと早くに見つけたかったという気持ちもありつつ、夏のはじめの今の時期にこの曲に出会えて良かったという気持ちもあり。  今日は18きっぷで東京から帰阪しているのだが、出発の王子駅で列車を待っていると、ホームの向かいの飛鳥山公園の鬱蒼とした木々の合間からたくさんの蝉たちの声が寄り集ま

          夏が夏って気づく頃には(『花図鑑』)【日記R6.7.22】

          人生とは、蓋をひとつずつ閉じていく営みかもしれない【日記R6.7.21】

           昨日の夜に東京に着いて、ひとやすみ。今日は正式に東京の家を引き払って関西に戻るための契約や手続きや何やかやをこなした。  不動産関係は、払わなくて良い金を払わされたとか、これはどっちの負担だとか何とか、きな臭い話ばかり聞こえてくるのでどうしたものかと思っていたのだが、幸い不動産屋も大家さんも丁寧に対応してくれたので助かった。  天気も良く、歩いていると玉の汗をかいた。駅前の不動産屋に行って退去のことを話してから、大家さんのところへ向かった。あまり詳しく書くのは憚られるが

          人生とは、蓋をひとつずつ閉じていく営みかもしれない【日記R6.7.21】