芥川龍之介『鼻』――人に笑われることを恐れた内供
『鼻』は芥川初期の短編だ。禅智内供という長い長い鼻を持て余した僧侶が、面白く描かれている。
この物語はよくコンプレックスや自尊心に結び付けて語られるが、もっと単純に読み解くこともできるのではないかと思う。禅智内供はただ「哂われたくなかった」のだ。
こうして読解していくと、『鼻』が結構アイロニカルな作品であることがわかってくる。
自尊心による苦しみ 『鼻』の冒頭、内供の心境について〈実にこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである〉とある。
禅智内供は、