ターボライターを買った【日記7・19】

 ターボライターを買った。

 そんなに良いやつではなくて、コンビニで150円くらいで売っているやつだ。

 これまで喫煙にはマッチを使ってきた。わざわざライターではなくマッチを使う理由としては、かっこいいからとか、タバコの燃焼温度が低くなる分いい匂いがするとか、色々考えられると思うが僕の場合は単純に「ライターこわい」である。

 親指の先わずか数ミリで火が燃えているという状態。なぜ大多数の人間があれを平気で扱えるのか、気が知れない。曲芸だと思う。

 そんなに心配しなくてもと言われるが、実際僕は一度ライターで親指をヤケドしているのである。忘れもしない。尼崎の競艇場の喫煙所である。二つ並んでいるうちの入口に近いおっちゃんしかいない寂れた方。風の強い日だった。エビデンスエビデンス。

 爾来マッチばかり使っていたのだが、やはり風には弱い。強風の日だと二、三本無駄にしてヤになってもうタバコを止したりする。

 この前東京に戻った折りに、ある友人と新宿三丁目のエジンバラという喫茶店を訪れた。サイフォンコーヒーが美味しい大変雰囲気の良いお店で、二十四時間いつでも開いていてタバコが吸える。

 無事関東で就職し、タバコも変えたのだとピースライトを見せてくれた友人が、ターボライターで火を付けてくれた。ターボライターの火は強くて良い。「雨でもつくよ」とその友人は笑った。

 それでなるほどと思った僕はターボライターをすぐに、買わなかった。

 抑うつ状態では依存症が悪化することも多いらしいが、僕の場合はむしろ逆だった。人間関係でも趣味でも何でも削ぎ落としていってしまう。そういう時期が来ると、なんだか火をつけるのも億劫になって、数週間タバコを止してしまう。

 ようやく少しは調子がましになってきて、何か自分の楽しいことをやろうという気分になるようになった。それでやっとターボライターを買って来た。なるほど風にも強い。幸い親指も無事で良い気分である。

 ターボライターを教えてくれた友人だが、僕の誕生日祝いにゴールデンバットの箱の装いをした灰皿をプレゼントしてくれた。ありがとうございます。可愛くて勿体ないのでまだ使えていません。すんません。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?