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『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)販促・1

今回販促をします作品はこれ、

『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)

上下巻です。

前回の記事の通り、こちらは「講談社NOVEL DAYSリデビュー小説賞」の受賞作のひとつです。
自分の作品を含め、6作品が受賞しました。
ざくっとした内訳は、SF3作、ファンタジー1作、異世界転生1作、ミステリ1作。
応募全作品のジャンル割合は存じませんが、こう見るとSF強し、という気持ちになりますね。

さてこの作品、もとのタイトルは『辺獄のパンドラ』。
タイトル変更にあたり、編集者の方から「SF色が強くない方が……」と。
SF……(涙)。

とは言え実を言うとこの作品、中身はそんなにSF強くはありません。
そもそも元ネタは、夢でした。
目が覚めてすぐに、とても印象的だったのでメモった内容が以下(註以外は原文ママ)。

恒星間航行の間のスリープの為にバーチャル空間を作っている
本サーバーとは分離して4つのお試しサーバーがあり、海山のリゾートやカジノなど体験コースの料金で研究開発費をまかなっている
お試し内にいるのはNPCのみ
本サーバーには開始以降のすべての人のデータがある
殺人や暴力を防ぐ為に中にはまだ「死」という概念がない為、本サーバー内には現実で死んだ人もまだ生きている
妻を亡くした男が何とかして本サーバーに入り込めないか画策する
お試し内に入って本サーバーとの接続状況をさぐる
NPCの女性と知り合う
お試しサーバー内は処理の軽減の為に雨は便宜的に空に雫のイラストで表されている
だが雨の概念のある彼だけが濡れている
NPCの女性はそれに気づき彼に接近する
NPCは死人からつくっている?
本サーバーが今の状態になる前の実験で精神に異常を来した人がいる
(註・NPCとは「non player character」。ゲームなどでお店の店員や村人など、元から設定されているプレイヤーの存在しないキャラクターのこと)


自分が見る夢にはいくつかのパターンがあって、「自分自身が主人公」「自分が別人になっているが主人公」「映画のようにただ物語の進行を見ているだけ」、時に入り混じったりもしますがこの3つ。この夢は3つめ、自分は夢内のどのキャラでもなく、ただ映画を見ているような夢でした。

小説に起こす際にだいぶ設定などは変わりましたが、自分にとって一番印象的だったのは、実は小説には使わなかったネタ、「『雨にあたると濡れる』感覚を知っている者だけが濡れる」でした。


濃く暗く曇った空にまるで冗談のように大きな、輪郭だけの雫がたくさん浮かんでいる。
バーチャルな空間のバーチャルな存在であるNPCには「雨で濡れる」という概念がない。
けれどヒトは、空の雫を「雨だ」と認識することで、勝手に全身が濡れてしまう。この空間では、意識が外面に直に反映されるから。
全身を雨に濡らして大きな噴水の淵にうなだれて座っている男を、ふわりとした髪と灰青色のワンピースを着た少女が、じっと見つめている。


この少女の後ろ姿が、とても印象深かった。
物語をただ眺めているだけの夢の中の自分には、全く知り得ない彼女の内面が。
髪も服も肌もじっとりと濡らした男を見つめるその内側に、何があるのか。
それを描きたい、と思ったのが、この小説を書こうと思ったきっかけのひとつです。


どうも何だか到底、販促とは言えない文章になってしまいました。
次回こそ。

冒頭より72ページまで、試し読みできます。
お時間のある際にぜひ。


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