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詩みたいなやつ

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時々書いてる詩をまとめときます
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『ワイパー』(詩)

『ワイパー』(詩)

機能性が進歩しないワイパーみたいに
僕らはずっと
そろって動いて
横並びに動いて 寝転んで

一本でもワイパー
二本でもワイパー

雨の日に動かすのがワイパーだけど
僕らはずっと
晴れの日も
曇りの日も 働いて

一人でもワイパー
二人でもワイパー

晴れた日に眠るワイパーを
僕らはずっと
知らないで
触れないで 忘れてしまって

一組のワイパー
二本ともワイパー

たまには洗って 乾かして
ゴム

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『君を 花を』(詩)

『君を 花を』(詩)

草かげに隠れて 草の束に潜って
風に煽られるのなんて嫌いだし
そもそも風の強い日なんて好きじゃないし

そよ風が緑の葉先を揺らしても
道はできないけれど
腰ほどの草むらの中には君がいて
僕は踏みつけながら かき分けながら
君にゆく

君が草むらからひょっこり顔を出したら
君を 花をあげるね

君に君はあげられないから
僕が 君を 花をあげるね
僕は花に詳しくないけれど
君の名前を知っているし
花の

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『消える』(詩)

『消える』(詩)

消えてゆく 消えてゆく
あなたの欠片が消えてゆく
散ってゆく 舞ってゆく
あなたの欠片に吸い込まれ

文字が消えるのは一瞬で
声が途切れるのも突然で
届いていたのは 変換されたあなた

あなたの文字を集めて
あなたの画像を敷き詰めて
一人のあなたよりも表面積を大きくして

あなたを積んで
あなたを詰め込んで
抱きしめたあなたよりも体積を大きくして

あなたを作るの ここに作るの

ルールをなくした

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彼らが鳴くのは僕のためでもなく
僕は彼らのためには泣かない

僕の眠りを妨げるつもりが無いのは知っている
彼らは彼らの理由で鳴くのだから

いつ寝ているのだろうかと
尋ねてみるべきかと思うが、
それを知ったところで
彼らは眠る場所へ帰るだけ

僕も同じように眠ると思うが
僕が還るかどうかは分からない

『レンズ』(詩)

『レンズ』(詩)

君のレンズは僕を捉えていたのに
僕から見えるのはレンズに映る僕だけで
現像されなかった君の中の僕は
君の中で弾けなかった

レンズの向こう側から
ときどき出てくる君は
泣かないで笑ってと言うし
時には誘い笑いなんかして

覗き込むのはレンズだけ
レンズに指紋をつけてはいけない
現像されなかった君の中の僕は
君の中で弾けなかった

レンズを通した方がよく見えますか
君は視力が良かったけれど
レンズを

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『冬を巡る』(詩)

『冬を巡る』(詩)

降り積もった白い雪は僕の声を抱え
頬を擦る冷たい陽光に感覚が麻痺する
生命は土の中で息を潜め
蓄えておいた栄養を消費するのみ

僕は冬が好きだ
世界中の誰よりも

雪は跡形もなく消え去り
柔らかな陽射しが肩を撫でる
コートとマフラーはもういらない
人々は花びらが揺れる様を歓迎する

僕は冬が好きだ
たとえ去っていくとしても

熱された地面は水を蒸発させ
刺すような太陽が腕を焼く
実をつけ始めた植物

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『愛の鰻』(詩)

『愛の鰻』(詩)

鰻が苦手な君が
食べたいと言ったから
鰻が好きな僕も
食べたいと思ったから

愛なんて鰻を素手で掴むようなもんだろ
掴んでも逃げていく
掴んだつもりだと思っている
締め付ける 握り締める またほどく
手のひらで踊り狂う
手のひらから逃げてゆく
上手に掴めた ほんの一瞬 ちょうど一瞬

愛なんて都合よく焦がせはしないだろ
次の手を出して
握り潰さないようにして
ぶった切って
串を刺して焼いてしまえ

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『笑って』(詩)

『笑って』(詩)

昼には恥ずかしいから
抱きしめないで
明るいところで抱きしめないで
夜には恥ずかしいから
抱きしめないで
暗いところで一人にさせて

恥ずかしいことは笑い飛ばして

散って濡れた花びらを踵で踏んでも
笑い飛ばして
季節外れの風邪をひいても
笑い飛ばして
梨の皮が上手に剥けなくても
笑い飛ばして
布団を蹴飛ばしお腹を出して寝ていても
笑い飛ばして

もし君の前で泣いてしまったら
笑って許して 笑い飛

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『平日』(詩)

『平日』(詩)

ぐっとくるような
なにもないような

整列した人らは粛粛と
散乱した衣服はバラバラと

走っていたような
歩いていたような

燦然と輝く星々が
散々とさざめく野の青が

歌っていたような
囁いていたような

蓋然ではなく必然で
惨憺とするのは当然で

簡単に 単純に 平凡に

『それでも構わない』(詩)

僕は迷うだろう
君との約束を守るべきか
君は不安だろう
僕の大切なものは一体何だったのか

僕はそれでも 命を賭して

息が続かなくなっても
足を動かして坂道を走り
風が強く前が見えなくとも
正面から受け止めて歩き
腐臭が漂うあの池の中でも
鼻息荒く進み
刃物が僕の皮膚を切り裂いても
痛いとは言わない
誰かに罵声を浴びせられようが
止まらない

そのときが来て 僕は前に進めるか

僕が守る 全てを

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『鳴る声』 (詩)

『鳴る声』 (詩)

なぜ 君の声が聞こえるの
いつから 君は話さなくなったの

昨日の夕陽から
朝焼けの高速道路から
君の家から

僕は まだ話しているよ
僕の声は どこに向かっているの

歩いたの
車輪なんて使わずに歩いたの
手を繋いで 歩いたの

トンネルの中は よく声が響いたね
虹のふもとへは 行けなかったね

旅に出るの
僕は 旅に出るの
君の声と 一緒に 旅に出るの
 
 
  
 
 
 

『林檎』(詩)

『林檎』(詩)

ぼくは いかようにしても凡庸なひとである

きのうまで見ていた夢は
あしたからも変わらず
きみと見る夢は
懐の金では買えない

比べて きみは美しいひとである

寝転ぶといつもと違う方向に流れていく髪を
口の端からこぼれる雫を僕は拾う
コビトになって旅をしたくなるようなその丘を
まるいりんごの表面を滑らかにすべる

ぼくは小さいから 時間をかけて食べるね