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日本人はみんな<ジャニー喜多川>の共犯者なのか

「ジャニー喜多川の性加害」告発で、たぶんそういう意見が出てくるだろうな、と思っていたような意見が、さっそくツイッターで出ていた。

日本人は、ジャニー喜多川の「犯行」を知りつつ、ジャニーズ文化を許容していたのだから、みんな共謀者だ、という意見だ。


ジャニー喜多川の件について前のめりで糾弾する気になれないのは、言ってみれば加害者意識があるからだろう。ジャニーさんにそういう性癖があり、ジャニタレが被害を受けているらしいことも噂とはいえ知りつつ、そうしたことも全部引っくるめてジャニーズ文化として受容(傍観)してきたわけだからね。


ジャニー喜多川の性癖に関する「噂」は半ば常識と化していたから、芸能界やマスコミに限らず、ジャニオタはもちろん、TVでぼんやりジャニタレを眺めていた人たちまで、極論を言えば日本人のほぼ全体が暗黙裏に共謀して許容してきたわけだ。この問題の根深さはその全体性にあるんじゃないですかね。


「ジャニー喜多川の件について前のめりで糾弾する気になれない」。それを日本人の総意のように前提されては困るので、ひとこと言っておきたい。


「許容」ではなく「絶望」だった


日本人は、それを「許容」してきたのはではなく、「絶望」してきたのである。

象徴的には2001年の「稲垣メンバー」事件だろう。

マスコミ、とくにテレビは、ジャニーズを絶対的に特別扱いすることを、日本国民に知らしめた。

<天皇制>や<創価学会>と同じ、日本のタブーになったのだな、と。

菊のタブー、鶴のタブー、Jのタブーだ。

そうなっては、被害者がいても、何も言えないのである。

芸能分野ではなかったが、私自身はマスコミの中にいたので、その「タブーの実態」をもっと知っている。

私の力ではどうにもならなかった。絶望し、諦めるしかなかった。

私個人については、まったく「許容」したつもりはない。

私は、「稲垣メンバー」事件で決定的にテレビへの信頼を失い、それまでもあまり見ていなかったが、その後は徹底して見なくなったし、「SMAPは国民的アイドルだ」「『世界に1つだけの花』は神曲だ」と周りが言う時も乗らなかったし、ジャニーズタレントが出るドラマや映画も決して見ない。


ファンに罪はない


しかし、もちろん私はひねくれた少数派だろう。

テレビや広告を見ればジャニーズタレントが出ているし、木村拓哉が出れば「話題のドラマ」として全マスコミで囃され、注目される。

マスコミがそう仕向けている以上、国民はそれに触れざるを得ない。

だからといって、国民は共謀者だ、と言われる筋合いはない。

ジャニーズタレントのファンには、罪はない。

ジャニーズタレントにも罪はない。(彼らは基本的に被害者だ)

木村拓哉なんかを含めて、実態を知っていたが、見て見ぬ振りをしてきたタレントも多かっただろうが、第一義的には責められるべきではない。

責められるべきは、第1にジャニー喜多川であり、第2に管理責任があるジャニーズ事務所であり、第3に真実を追究する義務を怠ったマスコミである。

一億総ざんげ風に「罪」を拡散して、責任を曖昧にすべきではないのだ。


まずは事実を明らかに


被害者が告発しているのである。

まずは、司直の手を借りてでも、事実を徹底的に明らかにすべきだ。

事実が明らかにされ、責任が果たされ、適切な謝罪や補償と、今後の予防策がなされれば、それでいいのだ。

そして、事実が明らかになれば、マスコミも、正道に戻れると思う。まさか事実まで曲げるほど堕落しているとは思っていない。罪は償える。


上のようなインターネットの意見とともに、

「性被害に遭ったとしても、有名にしてもらえたからいいじゃないか」

とか、

「同性愛は日本では伝統だ。それを責めるのは西欧の視点だ」

とかの意見も、ネットで見た。

いずれも、もちろん暴論だ。

しかし、こういう暴論が出るのも、「共犯者意識」から、ジャニーズの不正を暴くことに気が進まない心性の表れかもしれないと思う。

だからこそ、直接の加害者以外は、共犯者意識や罪責感を持つ必要がないことを、まずはっきりさせる必要がある。


飛躍を妨げてきたもの


ジャニー喜多川は死んでいるとしても、今後のために、北公次のときのように曖昧に終わらせるべきではない。

私は、ジャニーズ事務所の功績はもちろん認める。これほど権利にうるさい芸能事務所はそれまでになく、マスコミ人としては厄介な相手だったが、それによってタレントや芸能界に大きな収益をもたらした。

その功績を今後も生かし、今後も多くのタレントを発掘し、多くのファンを楽しませるためにも、ひるむことなく今回、すべてのウミを出しきるべきだ。

日本のエンタメ界がいまいち国際化できなかったのは、この問題がノドに刺さっていたこともある。健全な業界になって甦れば、飛躍できる。





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