ジャニーズで儲けて、安倍晋三を叩こう
「ジャニーズで儲けて、安倍晋三を叩こう!」
そんなスローガンが実際に職場で言われたわけではないけれど。
でも、ある時期のマスコミの「心の中のスローガン」ではあった。
「サンデー毎日」「週刊朝日」「アエラ」などがジャニタレを表紙に使い、誌面でアベガーを展開したのが典型だ。
左翼メディアの偏向と、ジャニーズへのズブズブの依存は、決して無関係ではなかった。
私はその「空気」を業界の中で体験したが、なかなか言葉で言い表しにくいものがある。
でも、いつか小説か何かの形で、その「空気」を表現したいものだと思う。
「安倍晋三を叩くと儲かるから、安倍晋三を叩こう!」
というのなら、語弊はあるけど、ある意味、「健全」だと思う。
カネになるから、という、少なくとも株主にたいする説明になる。
しかし、アベガーが盛んだったあいだも、マスコミ、とくに新聞社の業績、なかでも上に挙げたような新聞社系週刊誌の部数は、下がり続けた。「週刊朝日」については、ジャニーズ問題が浮上する前に、休刊に追い込まれている。
私は肌感覚で感じていたが、その期間はWillやHanadaのような安倍バンザイの出版物の方が売れていた。これは数字でも裏付けられると思う。
モリカケ桜が「売れた」のは、活動家にたいしてだけである。
それでも、安倍晋三が暗殺されるまで、マスコミはアベガーをやりつづけた。あれは、はっきり左翼政治活動であった。ビジネスでも、ジャーナリズムでもなかった。
重信房子を持ち上げて恥じないような人たちがやっていたイデオロギー活動だった。
その間、ビジネスとしての「数字」を支えるために必要だったのが、ジャニーズ依存や創価学会依存だった。
だから「細かいこと」には目をつぶらざるを得なかったのではないか。
政治活動のために、ジャーナリズムを裏切っていたのである。
ジャニーズ事務所は、それにくらべれば立派だ。
ジャニー喜多川の性加害は論外だとしても、ちゃんと人びとを楽しませて、カネを稼いでいた。
この30年あまりは、日本にとって楽しい時期ではなかったが、その間の世の中を明るくしてくれていたのがジャニタレたちだった。
その表の商売の部分に、嘘はなかった。
いっぽう、その間に商売を傾け、アメリカ発のネット企業に圧倒され、軽減税率を得たり、いろいろ政治的に工作して、日本の足を引っ張りながら、醜く生き延びているのがマスコミである。
ジャニー喜多川は、人間としては最低だったかもしれないが、少なくともビジネスマン、商売人としては、マスコミ経営者の数段上だった。
だから、マスコミが彼に依存せざるを得なかったのでもある。
いま、ジャニーズ事務所の経営者たちは、マスコミの袋叩きにあっている。
記者会見の例の「NGリスト」に載っている記者は、代表的アベガーばかりである。
上に私が述べた構造のなかでは、彼らが心置きなく「アベガー」ができ、高い給料をもらえていたのは、別の部署の誰かがジャニーズ事務所に頭を下げて、ジャニタレの儲けのおこぼれをもらっていたからだった。
いわばジャニーズ事務所の最大の受益者たちが、「恩人」であるはずのジャニーズ事務所の経営者を叩いている。
君たちは、ジャニー喜多川の性加害をまったく知らなかったと言えるのか。
いっぽう、その記者たちも、マスコミの経営者たちも、「人民裁判」の場に引きずり出されることはない。
ジャニー喜多川の性加害を知りつつ見逃してきた、テレビ局や新聞社の社長、副社長が、望月衣塑子的「鋭い追及」の矢面に立つことはない。株主(新聞社の場合は社員の持ち株会)も仲間内だから、追及することも、されることもない。
ジャニーズ事務所は消滅するが、テレビ局や新聞社はいささかも傷つかない。
それどころか、我々はいまも変わらずそれらのニュースソースに頼り、カネを吸い取られている。
「反省文」くらいは作文するかもしれないが、1つの処分も出ずに終わるだろう。
その不公平と不正義、その非対称性、そのいびつさは、誰もが感じるのではないか。
だから、前にも書いたが、ジャニー喜多川の性加害問題が、補償ふくめて仮に片付いたとしても、我々は永遠にすっきりすることはない。
*
ところで、池上彰がいまになって、安倍批判をすると毎日のように官邸などから圧力があった、と発言したらしい。
これかなり大きなニュースだと思うんだけど…。
池上彰氏「安倍政権に対する批判的なコメントをする人がいたり、ニュースの原稿の中にそういうことがあると必ず抗議が来るんですね、官邸から。
安倍さんご本人からではなく秘書だったり、例えば安倍派担当の記者に猛烈に文句を言って来たり。それで変えるということはないけれどもほぼ毎日あるんですね。
ものすごく細かい所について毎日毎日来るとですね、段々うんざりして来るわけですよね。やらない方が面倒臭くなくていいよねみたいな空気が何となくテレビ局の中に出て来るのかなと」
(武田砂鉄のプレ金ナイト 2023年10月6日放送)
池上彰氏「安倍政権に対する批判的なコメントをする人がいたり、ニュースの原稿の中にそういうことがあると必ず抗議が来るんですね、官邸から」 そうだろう、安倍さんはNHKにまで乗り込んだ人だから。あのこれ「官邸」を「ジャニーズ事務所」に変えても立派に通るよ。ほら、ジャストフィットでしょう。
この立川談四楼という人はわかってないようだが、ジャニーズ事務所からの圧力と、官邸からの圧力では、次元が異なる。
もし官邸から日常的に圧力があったなら、はっきりした言論弾圧、報道の自由にたいする憲法違反なのだから、池上は、その場で証拠をそろえ、ジャーナリストとして告発すべきでしょう。
池上彰って、いちおうジャーナリストなんでしょう。なぜそれをしなかったのか。それこそジャーナリストとしての義務だし、報道しないほうが罪だ。
安倍の「NHK番組介入」疑惑があれほど問題になったのを、NHK出身の池上が知らないはずはないではないか。
あのとき中途半端に終わった追及を完遂するチャンスだ。全マスコミが歓迎するだろう。
池上彰はすでに組織を離れ、フリーな立場だった。池上ほど、しがらみなく告発できる立場の人間は他にいなかったと言える。
それなのに、なぜ黙ってたんですか。
それこそ、命をかけてもいいスクープだったはずだ。
安倍が死んで、安倍が反論できなくなって、なぜ言うんですか。
みんなそう思うのではないか。
青木理なども同じようなことをまだ言っているけれど。
彼らはいまだに卑劣なアベガーを続けている。
そしてそれは、ジャニー喜多川問題での「生きている間の卑屈と、死んでからの居丈高」と共通だ。
最近、「飛ばしている」のは、鈴木エイトだ。
こんな記事があった。
2日に行われたジャニーズ事務所の、創業者で元社長・ジャニー喜多川さんによる性加害問題をめぐる2度目の記者会見で、「指名NGリスト」に入れられていたジャーナリストの鈴木エイトさん。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への厳しい追及でも知られるエイトさんが8日、自身のX(旧Twitter)を更新。ジャニーズがFTIコンサルティングへ卑劣な指示を出していた可能性を指摘した。
エイトさんは「ジャニーズ事務所会見当日、私が抱いた最も大きな違和感は”客席”上手側の後ろの方に座っていた男性の存在とその言動だ。大柄なこの男性は質疑応答の際も手を挙げることなく、NGリストの記者が質問者指名選別に異論を唱えていた時、被せるように『捌けよ、司会がぁ!』『司会がちゃんと回せよ!』などと罵声を浴びせていた」と不穏な人物の存在に言及。
そのうえで「私の直感だが、この男性はメディア関係者ではない。各報道において『指名されない記者からの不満の声が~』『加熱する記者に~』というイントロダクションでこの怒号が流れるのは当日の会見場で起こっていたこととは反する」と、この人物の正体に対する私見を披露。
(The Audience 編集部 2023.10.08)
「私の直観」で私見を述べる前に、ジャーナリストを名乗るなら、エビデンスのひとつも持ってくるべきだろう。
アベガーと同じ、私見と憶測による「追及」が、ジャニーズ問題でも平気でおこなわれていることがわかる。
日本のジャーナリズムはなぜここまで落ちたのか。
それが裁かれる日がいつか来ることを願っている。
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