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古賀書店へのレクイエム 私が買った古楽譜たち

神田神保町の音楽書・楽譜専門古書店、古賀書店が閉店するという。

この冬、いちばん悲しいニュースだ。

近くの会社に勤めていたときは、昼飯で神保町に行くたびに寄っていた。

楽譜をたくさん買わせていただいた。

長年、お世話になりました。


感謝と「追悼」の意味を込めて。

古賀書店で買った思い出の楽譜を紹介していきたい。

バッハ「パルティータとフランス風序曲」


バッハ「パルティータとフランス風序曲」

ニューヨークのKALMUS版。

私が開くことの多い楽譜の1つだ。

ページが外れそうなほどボロボロだが、最初からこんな感じだった。

パルティータはバッハが最初に出版した楽譜。こじつけめくが、このボロボロの楽譜を開くたび、バッハの初心と野心を感じる。

古賀書店で買ったことを示す値札のマークが見返しにある。


古賀書店のマーク


ブラームス「3つのピアノソナタ」


ブラームス「3つのピアノソナタ」


ニューヨークのSCHIRMER版。

ブラームスのピアノソナタの国内版楽譜が見つからず、古賀書店で入手できたときはうれしかった。

表紙の右上部に「800」と値段がある。これも古い楽譜で、捨値だったのだろう。

ブラームスの作品1、2、5。こちらも若きブラームスの野心が表れた作品だ。

ブラームスが書いたピアノソナタはこの3曲だけだから、これでピアノソナタ全集である。

いずれも技術的にかなりの難曲。いつか弾きこなしたい。


リスト「ワーグナー編曲集」


リスト「ワーグナー編曲集」


リストの新全集が銀座のヤマハに並んでいたが、高くて手が出なかった。

旧版だが、古賀書店でこれを見たときは迷わず買った。

フランクフルトのPETERS版。

国内楽譜の、たとえば春秋社のリスト編曲集には、ワーグナーからの編曲は6曲しか入っていませんが、こちらは12曲。春秋社版にないリエンティや指環、パルジファルからの編曲も入っています。


セルバンテス「キューバ舞曲集」


セルバンテス「キューバ舞曲集」

店の外に出してあるワゴン(処分品)を覗くのも楽しみだった。

これはヤマハの国内楽譜。500円でした。

イグナシオ・セルバンテス・カナワは19世紀キューバの作曲家。

期待したほどの民族臭があるわけではない、サロン風の小曲集である。

でも、こういう未知の作曲家の楽譜は、なかなか定価では買えない。ワゴンを覗き、新しい音楽との出会いを期待して、珍しい、古い楽譜を探すのが好きだった。


来日アーティストも覗きにくるので有名だった古賀書店。

狭い店内ながら、クラシックだけでなく、ロック・ポピュラーの音楽書も豊富で、棚を見ているだけで飽きなかった。

古賀書店で買った楽譜は、これからも大事に使いたい。

幸福な時間の思い出をありがとう。


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