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日本共産党の「自衛隊活用論」は破綻している

ウクライナ戦争で焦ったのでしょう、志位共産党委員長は、参院選対策に前のめりです。

ウチの近所でも、「戦争反対、9条改悪許すな」と共産党系の団体が街宣を始めました。例によって、メンバーは高齢者ばかりでしたが・・。

前にも書いたように、ウクライナ戦争で、安全保障に対する国民の不安は高まっている。毎日新聞の調査によれば、87パーセントが国防に不安だと言っている。

日米同盟と自衛隊の破棄を主張する共産党にはマズイ状況です。

だから志位サンは、「共産党も国防を現実的に考えています」と示すために、今月7日の会合で「有事には自衛隊を活用する」と言った。

それに対して、立憲民主党は賛意を示したが、「言ってることが矛盾している」「選挙対策の御都合主義だ」と国民民主や維新からツッコミが入った。

それに対して志位サンは10日、「何を言ってる。自衛隊の活用は2000年の党大会で決めて綱領に書き込んでいる。いつも正しい日本共産党の姿勢は一貫している。もっと勉強したまえ」みたいなことを言っている。

今、ココですね。


自衛隊を活用する「過渡期」の意味


それで、2000年の党大会決議を、共産党のホームページで読んでみました。

読んでいくと、こういうことが書いてある。

急迫不正の主権侵害、大規模災害など、必要に迫られた場合には、存在している自衛隊を国民の安全のために活用する。

なるほど、これのことだな、と分かる。

しかし、この文言の上には「そうした過渡的な時期に」とある。

何の過渡期かというと、「憲法違反の自衛隊を解消するまで」の過渡期ですね。

ここに書いてある共産党の理屈では、「憲法9条の完全実施」と、「自衛隊解消」「日米同盟破棄」は、表裏一体です。

だから、「9条を守れ」は「安保と自衛隊を捨てろ」と同じですから、「9条守れ。でも自衛隊を活用する」では、「言ってることが矛盾している」と感じるのは自然でしょう。

しかし、共産党によれば、その矛盾は自分たちの責任ではないから、知ったことではない。

(憲法と自衛隊の)矛盾は、われわれに責任があるわけでなく、先行する政権から引き継ぐ、さけがたい矛盾である。憲法と自衛隊との矛盾を引き継ぎながら、それを憲法9条の完全実施の方向で解消することをめざすのが、民主連合政権に参加するわが党の立場である。

この後に、先ほどの「そうした過渡的な時期に」という文章が続く。

つまり、共産党が政権に参加していない、野党でいる間は、自衛隊をなくせない。それを「過渡期」と呼んでいる。

共産党に権力がなく、それをなくせないから、自衛隊が存在する。せっかく存在するから、人権等を守るため活用するのが「政治の当然の責務」だと言っている。

その言い分をいったん認めるとしても、じゃあ、共産党が政権に参加したら、自衛隊と日米安保の解体に着手する、わけだよね。

要するに、自衛隊活用は、共産党が野党でいる間の「方便」だ。

「自衛隊を活用する」と信じて多くの人が投票し、もし「立憲共産党」が政権を取ったら、自衛隊解体のプロセスに入るわけである。

自衛隊を活用すると思ったから投票したのに・・自衛隊なくすの?と、サギみたいになるでしょう。

それがまず許せないのだ。

共産党が政権に参加したら「平和外交」で自衛隊と安保が不要になります!(憲法9条が「実現」します!)。

自衛隊と安保をなくすために共産党に清き一票を!

これこそ、選挙前に共産党が言うべきことでしょう。なぜ正直にそう言わない。

立憲民主党も、共産党と共闘する限りは、防衛に関して「同じ方向」と見られて仕方ない。

それに賛同して投票する人もいるだろう。それはそれでいい。

しかし、そういう「本当の主張」を隠して、「自衛隊を活用する」などと姑息なことを言うから、欺瞞的だと思われる。


甘い見通し。前提が崩壊している


共産党としても、自衛隊と安保が一気に破棄できるとは考えていない。

そこには左翼お得意の「段階論」があり、それもこの2000年大会決議に書いていある。

要約すると、次の3段階がある。


<第1段階>

日米安保破棄の前段階。「世界でも軍縮の流れが当たり前になっている時代」だから、「戦争法」の発動や海外派兵などの9条の蹂躙を許さない。

<第2段階>

日米安保が破棄され、自衛隊解消へと国民合意を「成熟」させていく段階。

<第3段階>

国民の合意で自衛隊解消に取り組む段階。


志位委員長が焦っているのは、この3段階論が説得力を失ったからではないか。

<第1段階>で言うとおり、共産党によれば、21世紀は「軍縮の流れが当たり前になる」はずだった。が、ウクライナ戦争で、いきなり逆の流れになった。

そもそも、この21世紀に入るにあたって開かれた2000年大会で、共産党は極めて楽観的な世界情勢の見通しを述べていた。

21世紀は、軍事力による紛争の「解決」の時代ではなく、”国際的な道理にたった外交”と”平和的な話し合い”が世界政治を動かす時代になる。
この新しい世紀には、憲法9条の値打ちが、地球規模で生きることになる。とりわけ平和と進歩の力強い潮流がわきおこりつつあるアジアでは、憲法9条の値打ちは、いよいよ精彩あるものとなるだろう。

「平和と進歩の力強い潮流がわきおこりつつあるアジア」とは、どこのアジアのことだろうか。ロシアや北朝鮮が存在しない別の世界線での「アジア」であるのは間違いない。


つまり、共産党の2000年綱領は、その前提が崩壊したのである。

前提が崩壊したのだから、その9条論も「自衛隊活用論」も破綻している。

共産党が公党として釈明すべきは、なぜ世界情勢の見通しを間違えたか、である。「以前から現実的な防衛論を言っていた」などとウソで居直ることではない。

共産党の防衛論は、ひいてはその「世界観」は、全然、現実的でなかった。ウクライナ戦争は、それを証明したのである。


志位委員長としては、それに気づかれるのが怖い。選挙民にたいしても、党員に対しても、マズイ。

でも、こんな基本的なことに、人が気づかないことがあり得るだろうか。

党員がどれだけアレかは知らないが、一般人には通用しない。選挙民をナメるな、と言いたい。


(共産党のことだから、自分たちの見通しが誤ったのも、これまでの政権が誤った外交をしたからだ、と責任転嫁、自己弁護しそうだ。しかし、その場合は、自公政権の外交と、今回のロシアの侵攻との間の因果関係を、証明せねばならない。たぶん最初は「安倍が悪かった」で行こうとしたが、どうもうまくいかないので、「自衛隊活用論」を持ち出した、という流れではないか)




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