懐石小室

神楽坂にある日本料理店「懐石 小室 」です。四季折々の食材を用意してお待ちしております

懐石小室

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マガジン

  • 日本の旬を語る

    神楽坂・懐石小室の主人 小室光博が、旬の食材について語ります。

  • 伊藤初美(ハツ)の小室訪問記

    • 12本

    伊藤初美さんによる小室訪問記です。 四季折々の食材・料理を毎月ご紹介いたします。

最近の記事

初夏への気分が沸き立つ稚鮎 芽吹きものの山菜で目覚める5月

琵琶湖で育った稚鮎(ちあゆ)。串打ちをして軽く塩焼きにしたところを、木の芽酢・酢おろしで味わっていただくと、なんとも春爛漫、初夏を迎える気分が沸き立つものです。からだを覚醒してくれる春の芽吹きもの、さまざまな山菜もご紹介します。 ◆稚鮎暮れから2月ぐらいまでの氷の張る季節は「氷魚(ひうお)」と呼ばれる琵琶湖の鮎。その後、背の色がだんだんと銀色から黒に変わっていきます。 氷魚の頃は、軽く揚げてみたり、酢炊きにしてみたり、佃煮にしたりしてもいいですね。 7~8センチほどの「

    • 花山椒の香りと、脂を包み込む爽やかなしびれ 大人の味覚を味わう4月

      植物が一斉に芽吹き出す春。山椒や山菜、筍……。辛みやしびれ、苦みといった「大人の味覚」をぜひ味わっていただきたいですね。特にこの時季ならではの「花山椒」は、口にしたあとに軽く息を吸い込むと、風薫る季節はすぐそこか、と思わせてくれます。 ◆緑のつぼみの花山椒山椒の木の花である「花山椒」。芽吹いたあと、葉が出そろったあたりに小さな緑色の花芽が出てくる、これが花山椒です。 ブロッコリーと同様、花山椒は緑のつぼみであることが大事なこと。黄色くなって花が咲いてしまうと値打ちがなくな

      • 雛の節句に貝合わせ 貝寄風の季節、二枚貝の違いを味わう

        冬の季節風のなごりとして吹く貝寄風(かいよせ)という言葉もありますように、3月は二枚貝のおいしい季節です。ひな祭り のお吸い物としても使われる蛤(はまぐり)のほか、タイラガイや帆立(ほたて)や赤貝(あかがい)、ミル貝、ホッキ貝……。さまざまな貝の食感や味わいの違いを楽しんでください。 ◆蛤、ひな祭りのお吸い物雛の節句といえば、蛤のお吸い物を楽しむご家庭も多いでしょう。蛤は「日本書紀」にも書かれているほど昔から食されており、貝塚からも出土しています。 対になっている貝殻が「

        • 節分にちなんだ鬼虎魚(オニオコゼ)で邪気払い 旬の干し子・細魚(サヨリ)を味わう2月

          日本料理は節句や催事にちなんだものを材として使うことが多いです。節分を迎える2月は鬼虎魚(オニオコゼ)を味わってください。鬼の金棒のようなかたちのナマコ、その卵巣をつかった高級珍味「干し子」や、この時期に旬を迎える細魚(サヨリ)もおすすめです。 ◆ユーモラスな顔立ちの虎魚虎魚は「夏河豚」と呼ばれて夏に所望される向きがあるものの、寒中でもおいしく、1年じゅう味の落ちることがありません。 鬼のような見た目で、私が何を言うかとおっしゃられそうですが、まことに面白い顔をしています

        初夏への気分が沸き立つ稚鮎 芽吹きものの山菜で目覚める5月

        • 花山椒の香りと、脂を包み込む爽やかなしびれ 大人の味覚を味わう4月

        • 雛の節句に貝合わせ 貝寄風の季節、二枚貝の違いを味わう

        • 節分にちなんだ鬼虎魚(オニオコゼ)で邪気払い 旬の干し子・細魚(サヨリ)を味わう2月

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        • 日本の旬を語る
          11本
        • 伊藤初美(ハツ)の小室訪問記
          12本

        記事

          新春をことほぐ「河豚」の旨み 厳しい冬に耐えた孟宗竹に舌鼓

          新年あけましておめでとうございます。気ぜわしい師走を乗り切り、おせちやおとそでホッと一息、新たな気持ちになる1月は、新春を祝う天然物の河豚(フグ)をご賞味いただきたいですね。そのほかにも、暖かな春にそなえて甘みをたくわえた筍(タケノコ)と、パンチのある風味の老舗の鮒寿司もご用意しています。 ◆味がきれいな天然物のトラフグ高級魚のひとつであるトラフグ。天然物は海を自由に動き回って新鮮なエサを食べているので、身につく味が全く違います。 天然物は養殖と比べようもないほど味がきれい

          新春をことほぐ「河豚」の旨み 厳しい冬に耐えた孟宗竹に舌鼓

          12月 - さばきたての天然の鴨 一年の締めくくりにふさわしい芳醇な味わい

          鳥肉にもいろいろありますけれども、冬に備えて身を太らせた上質な鴨は、まさに一年の締めくくりにふさわしい食材ではないでしょうか。 これは天然物すべてに言えることでもありますが、天然ものの本鴨は、食べるべきものをしっかり食べて実を太らせています。 特に田園地帯でおいしい米をついばんで大きくなった上質な鴨は、生臭みを感じるようなところが一切なく、米の旨みや香ばしさも感じます。 それがゆえに、味の切れがよく、脂もきれいで、きわめて鮮烈なうまみを内包しています。全てを使い切って召

          12月 - さばきたての天然の鴨 一年の締めくくりにふさわしい芳醇な味わい

          11月、蟹の王様ズワイガニ、最高級の雄・松葉蟹と雌・セイコガニを味わう

          蟹の王様といえばズワイガニ。蟹の頭(かしら)だからズワイガニと呼ばれるともいわれます。ぜひ冬の風物詩を思う存分、味わっていただきたいですね。 ◆新鮮なまま水揚げされる小室ではもう20年も、兵庫県の香住の蟹屋さんに選んで送ってもらっています。このズワイガニは、とれる漁場によって呼び方が変わるんです。 京都から島根沖で獲れる、最高級のズワイガニの雄を「松葉蟹」といいます。雌は「セイコガニ(セコガニ)」と呼ばれています。 ほかにも、京都でとれる「間人蟹(たいざがに)」や、越前

          11月、蟹の王様ズワイガニ、最高級の雄・松葉蟹と雌・セイコガニを味わう

          秋の実りの王様・香り高き「松茸」と「紅葉鯛」で食欲の秋を満喫する10月

          秋といえばやっぱり香り高き「松茸」。焼き松茸はもちろん、土瓶蒸しや松茸ごはんのほか、鮮度のいい松茸だからこそできる「生」の味わいも楽しんでいただきたいですね。あわせて10月は、春の次に再び旬を迎える「紅葉鯛」を味わって、食欲の秋を満喫していただければと思います。 ◆収量の減った天然のきのこたち実は松茸は、初夏にもわずかながら食べることができます。ある時期の冷え込みを秋になったと勘違いして出てくるもので、「早松(さまつ)」と呼ばれます。 熊本・天草の方から採れていって北上して

          秋の実りの王様・香り高き「松茸」と「紅葉鯛」で食欲の秋を満喫する10月

          9月、鰻とスッポンで夏バテを吹き飛ばす

          お江戸の甘辛文化の筆頭格といえば、鰻でしょう。この夏の酷暑の疲れは、鰻とスッポンで吹き飛ばしていただきたいですね。 ◆天然鰻を味わっていただく鰻は胸のあたりが黄色みを帯びている〝胸黄(むなぎ)〟が語源ともいわれます。産卵のために海へ向かう「下り鰻」という言葉もございますけれど、うちでは天然鰻を9月10月にお出ししています。 南は熊本・天草、岡山・児島湾などで「青鰻」とも呼ばれるシャコ鰻、広島・福山の鞆の浦周辺、浜名湖、四国の四万十川、北は秋田の鰻まで使っています。 鰻が少

          9月、鰻とスッポンで夏バテを吹き飛ばす

          8月、真鯒と鱸…さっぱりした白身と、潮風の香りの鮑で暑気払い

          暑さがいよいよ増してくる8月、こんな酷暑のなかでは、やはりさっぱりしたものを味わっていただきたいですね。真夏に旬を迎える白身の代表格、真鯒(マゴチ)と鱸(スズキ)、そしてもしかすると「お正月の縁起物」のイメージの強い「鮑(アワビ)」についてお話しましょう。 ◆「照りゴチ」とも呼ばれる真夏の魚真鯒(マゴチ)と目鯒(メゴチ)を一緒の魚だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。魚の形がすごく似ているんですけれど、別のものでございます。 どちらかが上下のある魚というわけではあ

          8月、真鯒と鱸…さっぱりした白身と、潮風の香りの鮑で暑気払い

          7月、夏の魚といえば鱧 「廃れ者」が脚光を浴びるまで

          なんといっても夏の魚は鱧です。京都祇園祭の季節に漁が始まるハモの話をしたいと思います。 現在では鯛と並んで「高級品」というイメージが圧倒的ですが、実は鱧は「廃れ者」だったんです。美味しいものを食べることへの欲求と、交通網の発達が、鱧を高級品の地位に押し上げました。 ◆小魚が豊かな漁場、鹿ノ瀬から小室のハモは、兵庫県明石の鹿ノ瀬から仕入れています。ここは、知る人ぞ知る豊かな漁場です。 大阪湾で5mの波があるときでも、1mぐらいしか波立たない穏やかな浅瀬です。海底が隆起して

          7月、夏の魚といえば鱧 「廃れ者」が脚光を浴びるまで

          鮎・星鰈・蓴菜・ハモ。多彩な顔ぶれを味わう6月

          ◆瓜のような爽やかな香り、川魚の女王・鮎 川魚の女王ともいわれる鮎。6月はまさに鮎の季節です。そのほか、星鰈や、梅雨時においしくなる蓴菜、初物を味わうレンコンなど、多彩な顔ぶれが楽しめます。この時期ならではの食材を味わっていただきたいですね。夏のお楽しみである「ハモ」も出回ってまいりますが、ハモのお話は7月にたっぷりお伝えしたいと思います。 ◆苔をはむようになった若鮎この時期になると、若鮎は苔をはむようになります。そんな鮎のいる清流を高いところから見下ろしてみると、魚の側

          鮎・星鰈・蓴菜・ハモ。多彩な顔ぶれを味わう6月