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ドラえもん 話を聞いてそばにいて ひみつ道具は出さなくていい

2011年に被災地支援団体である「東京里帰りプロジェクト」のお手伝いをしていました。被災地の妊産婦さんが安心して産前産後を過ごせるよう、東京の助産院で受け入れを行うといったプロジェクトでした。1年後、東京での受け入れというフェーズを終え、現地で産前産後を支える活動へと変わっていくタイミングで、このプロジェクトはいったん幕を下ろしました。

その後、「東京里帰りプロジェクト」を立ち上げた方々は、産後の母親の支援者を養成する団体を立ち上げる準備をはじめます。その時、「次の活動もよければお手伝いしてもらえませんか」ということで、また関わる機会をいただきました。

2017年に厚生労働省から、「子育て世代包括支援センター業務と産前・産後サポート事業のガイドライン」が発表されるなど、最近は注目を集めつつある領域ですが、当時はほとんど認知されていない状態でした。

妊娠・出産は病気ではないけれど、どう考えたっていろんな負荷がかかる出来事です。赤ちゃんが生まれることはとても幸せなことですが、自分の体中で生命を育んで、生まれた後も不安定な生命を支えていくのですから、幸せの一言では言い尽くせないアレコレがあるわけです。このあたりの事情を話し出すと長くなるので割愛しますが、いろんな意味で、母親へのサポートが必要不可欠なわけです。

そういった産前産後の母親の状況を理解し、必要な支援ができる。そんな人材を欧米諸国では「ドゥーラ」と呼んでいて、一般的なサービスとして利用されています。「ドゥーラ」はもともと、文化人類学者がギリシャの文化から発見したものです。ギリシャでは、妊娠・出産・育児の場面で、経験と知識をもつ女性が新米の女性を支えており、とても尊敬される存在だそうです(このあたりもとても奥が深いものなので、なかなか語り尽くせないのですが……)。

産後の母親の支援者である「ドゥーラ」を日本でも養成しよう!そんな試みとして立ち上がった団体のお手伝いをするうちに、私はこの「ドゥーラ」というものに魅せられていきました。妊娠・出産・育児にはじめて取り組む女性がうまくいくよう、包括的なサポートをするのですが、それは単にやり方を教えることでも、作業を手伝うことでもありません。人間的な関わりの中で、ケースバイケースの関係を紡ぎ出す、そんな存在なのです。

「ドゥーラ」として活動する方や「ドゥーラ」になりたいという方にお会いするたびに、私はひそかに感動していました。人はこんなにも純粋に生きることができるんだなと思ったのです。そして、彼女たちに会うたび、私が生きていることも許されていくような、そんな気がするのです。文章にすると、なんて大げさなと思うのですが(笑)。

冒頭の短歌は、私が2005年に詠んだもの。今ふと気づいたのですが、これってまさに、ドゥーラのような存在への希求のような気がします。

まだ要望として言語化できない。けれど、自分の存在や挙動をあたたかな眼差しで見つめていてほしい。そして、ひみつ道具を持っている人に、あえて出さずにそこにいてほしい。でも、必要になったら差し出してほしいので、持っているということが大事。という、とっても高度な(わがままな?)お願いなわけです(笑)。でも、人は誰しもこんな思いを根底に持っているのではないでしょうか。子どもの願いって、だいたいこんな感じです。すべての大人は子どもだったわけですから、ほら、ね。

そんなこんなで、「ドゥーラ」という概念と偶然出会い、今も魅せられています。これからの私の人生においても、キーワードになるような、そんな気がしています。



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