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【連載小説】雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう

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毎日、自分に関する周囲の記憶がリセットされる男の話。自分の記憶だけは変わらない。
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2021年4月の記事一覧

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【14】

僕にも人並みに性欲がある。 いや、人並み以上、獣欲かもしれない。 たとえ人の記憶から僕だ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【13】

僕は名刺を受け取りながら言った。 「ありがとうございます」 そして、思ったことも正直に付…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【12】

店は細長く、赤い天板のカウンターと赤いファブリックの丸い椅子が鮮やかだった。ひんやりとし…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【11】

連続と非連続。 時間は連続と思われている。 開闢以来途切れることなく流れていると思われて…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【10】

図書館が閉館になる頃は、辺りはすっかりと暗くなっていた。 僕は図書館前の緩やかなスロープ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【9】

昨日の話をしよう。 昔のことではなく、1年前のことでもなく。 できれば一昨日、理想的なのは…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【8】

一番古い記憶は何だろう。 僕は目を閉じて思い出す。 岩の上だ。 海の中に立っている岩。 僕はその上に座っていた。 一体どんな記憶なのだろう、と思う。 周囲には誰もいない。 少し離れた堤防の上には、釣り竿や釣り道具、青いクーラーボックスなどが無造作に置いてある。 記憶、思い出、色褪せたイメージ。 僕は瞼を開いた。 人の記憶は、何千回、何万回とリセットされてしまっているから、その記憶の内容を問いかけても、答えてくれる人は、いない。 僕はその記憶を心の奥底に閉

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【7】

子供の頃の話をしようと思う。 僕には姉がいたように思う。 いたように、というのは予防線だ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【6】

葉子が作って来てくれたサンドイッチを囲んで、お昼を取った。 「このキュウリのサンドイッチ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【5】

僕は、井の頭通りの、だらだらとした坂道を登っていた。 坂の途中から、前方にモスクの玉ねぎ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【4】

仕事が休みの時は、図書館に行くことが多かった。 人の記憶はリセットされても、僕の図書カー…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【3】

見知らぬ女性の写真が添えられていた手紙は、今、机の上にあった。 僕は腕を組んでそれを見て…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【2】

ひとりで生きていくことは出来なかった。 仕事をしなくては食べていけなかった。 人と関わら…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう

子供の頃、雨の日は長靴を履いていた。 道路の所々には水溜まりがあって、長靴は濡れなくて平気だから、わざと水溜りを歩いて、じゃぶじゃぶと波立てて遊んだことがあった。 ような気がした。 記憶違いなのかもしれない、と思った。 僕は生まれて一度も、長靴を履いたことがない。 だから、長靴を履いて水溜りを歩いたことなんてない。 なんてことないのに、どうしてそんな記憶があるのだろう。 写真や映画や小説などの中にそんなシーンがあって、いつの間にか、自分の体験と思ってしまったのだ