雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【7】

子供の頃の話をしようと思う。

僕には姉がいたように思う。

いたように、というのは予防線だ。

僕の記憶は、移植されたものかもしれないから、事実は異なり、姉はいなかったとなったら、驚いてしまうだろうから、心の防衛をしようと思っている。
事実は小説よりも奇なり、という言葉もある。

幼い頃、姉とおままごとをして遊んでいた。
姉弟で夫婦を演じていた。

おままごとには、姉の友人や僕の友人も参加することもあった。

姉の友人が参加した時は、僕と姉の夫婦の家に、妻の友人として遊びに来た。

妻の友人は、僕ら夫婦の仲は冷えていると言った。

それから、僕の手を握ったり、抱きついて来たりして、ほっぺにチューをした。

妻は僕に怒り、あなたとは別れる離婚よ、と言った。そして、友人に向かって、あなたとは絶交よ、と言った。

僕が姉と離婚すると、妻の友人が、結婚しましょう、と言って、僕らは夫婦になった。

再婚というのよ、と妻の友人で今は僕の妻となったその女の子は教えてくれた。

僕と姉の友人の夫婦の家に、姉が遊びに来た。姉は、僕ら夫婦は偽物だ、と言った。
妻は僕に馬乗りになると、姉に向かって見てなさいよ、と言って、僕の服を脱がし始めた。

姉は妻を突き飛ばすと、代わりに僕に馬乗りになって僕の服をぬがしはじめた。

妻は、泥棒猫、と姉に向かって叫ぶとふたりで取っ組み合いになった。

僕はふたりに向かって、仲良くしようよ、と言うと、姉と姉の友人は、口々に、どっちが好きなの?と僕に言った。

僕は、ふたりとも好きだから、ふたりと結婚する、と言った。

姉と姉の友人は、目配せして、僕をおもちゃにし始めた。

僕はふたりの夫となって、3人で暮らし始めた。

ある時、僕の友人がやって来た。

その時、僕は、姉と姉の友人それぞれと結婚して、3人で暮らしていた。

友人は、お邪魔します、と礼儀正しく入ってきた。

姉と姉の友人は、恭しくおもてなしして、泥水の入ったカップを差し出して、お茶でもどうぞ、と差し出した。

友人は、それを両手に取って、いただきますわ、と言って飲むふりをした。

今日はどんなご用事ですの?と姉が友人に尋ねた。

今日来たのは他でもありませんわ。あなたのご主人に用がありますの。

どんなご用なの?姉の友人が睨みつけながら尋ねた。

ご主人は、前から私のことが好きですの。もちろん私も前から大好きですわ。だから、駆け落ちしますの。

なんですって!姉が僕の友人に飛びかかって顔を引っ叩こうとした。

友人は、立ち上がり様にさっと身を翻してそれを避けると、ぼんやりとしていた僕の腕を掴んで言った。

早く逃げましょ。こんなところから。

友人はにっこりと笑った。

僕は頷いた。

僕は友人の手を強く握った。

ちょっと待ちなさいよ!姉と姉の友人が、掴みかかって来た。

友人は、そのふたりの胸を強く押して、転がして尻餅をつかせると、僕に言った。

さあ、走って逃げましょ。

僕と友人は手に手を取って、3人の家から走り去った。

背後から姉と姉の友人の声が響いていた。

僕は友人を見た。

友人は僕を見返した。

あのお茶ね。友人が言った。

泥水だったのよ。そう言って笑った。

僕もつられて笑った。

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