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【連載小説】雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう

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毎日、自分に関する周囲の記憶がリセットされる男の話。自分の記憶だけは変わらない。
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記事一覧

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【24】

海の近くに住んだことはあるだろうか。 電車や車なんて使わなくても、歩いてすぐのところに海…

蓮
2年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【23】

明代の存在を否定されて、僕は途方に暮れていた。 僕と明代の記憶は何だったのだろう。 明代…

蓮
2年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【22】

葉子は身体を震わせた。 僕は立ち上がってストーブをつけた。置きっぱなしのストーブ。 「す…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【21】

リリー・マルレーンは2回目だった。 真由美という名前の子猫は、街角にはいなかった。 だか…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【20】

「ここのコーヒーは美味しいですな」 本庄氏はコーヒーを飲むと、椅子に深く腰掛けた。 「そ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【19】

記憶というのは、想像のひとつだと聞いたことがある。 断片を繋ぎ合わせて、事実を作る創造だ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【18】

国道沿いに南に歩いて行った。 この道路は一車線しかない。狭いのに主要道路となっていて、ひっきりなしに車が通っていた。 歩道は白線で分けられているだけの質素なもので、隣をトラックが通ると風が巻き起こる。 右手に、小さな漁港が見えた。 漁を終えた小舟の漁船が、たくさん舫で繋がれていた。 子供の頃、桟橋でよく遊んだ記憶が蘇る。 町の様子は変わっていないように思えた。 本当は変わっているのかもしれないが、記憶のままだった。 記憶を頼りに、国道を外れて、なだらかな坂道に入っ

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【17】

雲を掴むような話だろう。 誰だってそうだ。 自分のことを誰も彼もが、一日だけしか覚えてく…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【16】

単線の線路。 山と海の間を走る列車。 ゴトンゴトンとリズミカルに刻んでいく。 車窓から見…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【15】

ふるさとは 遠きにありて思ふもの そして 悲しくうたふもの 室生犀星の小景異情詩を、何故…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【14】

僕にも人並みに性欲がある。 いや、人並み以上、獣欲かもしれない。 たとえ人の記憶から僕だ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【13】

僕は名刺を受け取りながら言った。 「ありがとうございます」 そして、思ったことも正直に付…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【12】

店は細長く、赤い天板のカウンターと赤いファブリックの丸い椅子が鮮やかだった。ひんやりとし…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【11】

連続と非連続。 時間は連続と思われている。 開闢以来途切れることなく流れていると思われている。 そこに疑問の余地はない。少しでも疑問を示したら、変な人と思われることだろう。 天気は非連続だと思われている。 今日は晴れても明日は雨だ。 天気は猫の眼のように変わると思われている。 3,000年続いた、と言われている太古の地球の雨も、非連続だというのだろうか。 3,000年。 人の身では、気が遠くなる程の悠久の時の重なり。 3,000年切れ目なく続いても、3,0