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理論化学

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金属と酸との反応

金属と酸との反応

水素H2よりイオン化傾向の大きい金属は、一般に塩酸や希硫酸などの酸の水溶液中の水素イオンH+ と反応し、水素を発生します。例えば、塩酸に鉄を入れると水素を発生します。

 Fe+ 2HCl → FeCl2 + H2

同様に、塩酸にマグネシウム、塩酸に亜鉛などの組み合わせも水素が発生します。

一方、水素H2よりイオン化傾向の小さい Cu や Hg、 Ag は、一般に塩酸や希硫酸とは反応しません。

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金属の反応

金属の反応

金属と水との反応
イオン化傾向の大きいLi や K 、Ca 、Na などは、常温でも水と激しく反応し、水酸化物を生じて水素を発生します。

 Ca+ 2H2O → Ca(OH)2 + H2

Mg は常温の水とはほとんど反応しませんが、熱水とは徐々に反応し、水酸化物を生じて水素を発生します。

 Mg+ 2H2O → Mg(OH)2 + H2

Alや、Zn 、Fe は、常温の水や熱水とは反応しま

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金属のイオン化列

金属のイオン化列

前回の記事で、金属のイオン化傾向について説明しました。

金属の単体が、水溶液中で電子を失って陽イオンになろうとする性質を 金属のイオン化傾向 といいます。例えば、硝酸銀 AgNO3 水溶液に銅 Cu を入れると、Cu が溶けだして銀 Ag が析出します。このことから、イオン化傾向は Cu > Ag といえます。

金属をイオン化傾向の大きいものから小さいものへと順に並べたものを 金属のイオン化列

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金属のイオン化傾向

金属のイオン化傾向

金属の単体が、水溶液中で電子を失って陽イオンになろうとする性質を 金属のイオン化傾向 といいます。イオン化傾向の大きい原子ほど、電子を失って陽イオンになりやすいです。つまり、陽イオンのなりやすさ を表しているといえます。

イオン化傾向は金属の種類によって異なります。イオン化エネルギーや生じたイオンの水溶液中での安定性など、様々な要因によって決まります。

硝酸銀 AgNO3 水溶液に銅 Cu を

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酸化剤・還元剤のモル計算

酸化剤・還元剤のモル計算

酸化還元反応では、受け取る電子の mol と 放出する電子の mol が等しいです。

酸化還元反応において、酸化剤と還元剤は一定の物質量の比で反応します。これを利用すると、中和滴定と同じような操作で、酸化剤や還元剤の物質量や濃度を求めることができます。このような操作を酸化還元滴定といいます。

硫酸酸性のもとで過マンガン酸カリウム KMnO4 とシュウ酸(COOH)2 が反応するときを考えてみま

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多原子イオン

多原子イオン

イオンには、1コの原子からできる単原子イオンと、原子が2コ以上結びついてできる 多原子イオン があります。

原子が2コ以上結びついたものを原子団ということがあります。この原子団が電子を失ったり、受け取ったりしてできているものが多原子イオンです。

主な多原子イオンの例を挙げます。

NH4 + アンモニウムイオン

H3O + オキソニウムイオン

OHー 水酸化物イオン

NO3 ー 硝酸イオ

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価電子

価電子

化学結合に関与する電子を 価電子 といいます。

原子中で、最も外側の電子殻中にある電子を 最外殻電子 といいます。最外殻電子は、原子がイオンになったり、化学結合するときに重要な役割を果たすことが多いです。

価電子の数え方18族元素の貴ガスを除けば、 最外殻電子 は 価電子 を指します。「最も外側の電子を価電子」と捉えておおむね良いです。

例えば、原子番号3番のリチウムLi の電子配置は、K2

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電子配置とは?

電子配置とは?

 原子の中心に原子核があります。電子は、原子核を取り囲む電子殻とよばれるいくつかの層に分かれて入っています。電子殻は、原子核に近い内側からK殻、L殻、M殻、N殻・・・とよばれます。

 電子殻は映画館の座席のようなものと捉えるとよいでしょう。座席に電子が座っていくイメージです。この座席の座り方にはポイントが2つあります。

① 電子は内側の電子殻から順に入っていく。

② それぞれの電子殻に入る最

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弱酸の遊離

弱酸の遊離

酢酸ナトリウム水溶液に塩酸を加えると、酢酸が生じます。これは弱酸の遊離といいます。

酢酸ナトリウムCH3COONaは塩であり、塩酸は強酸です。塩も強酸も、水溶液中で完全に電離しています。酢酸ナトリウムから電離したCH3COO-は、もともと電離度が小さいです。よって、酢酸イオンCH3COO-はH+を受け取り、酢酸分子CH3COOHに戻りやすいです。

このように、弱酸の塩に強酸を加えると、弱酸と強

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中和点のpHと塩の水溶液の性質

中和点のpHと塩の水溶液の性質

中和する酸と塩基の組み合わせによって、中和点のpHは異なります。それは、中和で生じる塩の水溶液の性質によるものです。ポイントは、強い方の性質が残ることです。

ふつう、強酸と強塩基の中和では、生じる塩の水溶液はほぼ中性です。だから、中和点のpHは7付近です。塩酸HClと水酸化ナトリウムNaOHで生じる塩化ナトリウムNaClは中性です。塩酸は強酸で、水酸化ナトリウムは強塩基です。

ところが、強酸と

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滴定曲線のかたち

滴定曲線のかたち

滴定曲線は、中和点付近で水溶液のpHが大きく変化します。これは、中和点付近では、水溶液中のH+ とOH- の濃度が非常に小さくなっているので、滴下した塩基(酸)に含まれるOH- (H+)がpHに大きな影響を与えるためです。滴定曲線の形は、滴定する酸・塩基の強弱の組み合わせで、変化します。

①強酸と強塩基

塩酸(強酸)を水酸化ナトリウム水溶液(強塩基)で滴定すると、中和点は中性で、中和点前後でp

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指示薬

指示薬

中和滴定で加えた塩基(酸)の体積と、滴定中の水溶液のpH変化との関係を示したグラフを滴定曲線といいます。「酸もしくは塩基の滴下量とpHの関係を表す曲線」ともいえます。滴下量がヨコ、pHがタテです。

滴定曲線は、中和点付近で水溶液のpHが大きく変化します。中和点は、急激にpHが変化している範囲の中央付近にあります。したがって、この急激なpH変化の範囲内に変色域をもつ指示薬を用いることで、中和点を知

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中和のモル計算②

中和のモル計算②

濃度未知の酸(塩基)を一定体積とって、これに濃度既知の塩基(酸)を中和点まで加えていくと、それに要した体積から酸(塩基)の濃度が計算できます。このような実験操作を中和滴定といいます。計算式は次のようになります。

 a × c[mol/L] × V/1000 [L] = b × c'[mol/L] × V'/1000 [L]

a は酸の価数、c は酸のモル濃度〔mol/L〕、V は酸の体積〔mL

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中和のモル計算①

中和のモル計算①

生じるH+(mol)=生じるOHー(mol)

このように式を立てることが、中和のモル計算です。

酸が与えるH+ の物質量(mol)と塩基が与えるOHー の物質量(mol)が等しいとき、酸と塩基は ”ちょうど中和” します。この ”ちょうど中和” を過不足なく中和するといいます。過不足なく中和するところを中和点といいます。

例)塩酸1molと過不足なく中和する水酸化バリウムは何molか。

 

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