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感想

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読んだ本の感想を書いていきます。 もしかすると読んでないかもしれません。 映画や演劇などに射程が伸びる可能性も拭えません。
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#小説

滝口悠生【半ドンでパン】

【たべるのがおそい】の西崎憲編纂のアンソロジー、【kaze no tanbun 特別ではない一日】所収。なぜ「風の短文」ではなくローマ字表記なのか? という疑問は残るが、執筆陣の豪華さというか私の琴線への触れ度合いが中々凄かったので購入。第一の目当てはやはり滝口悠生だが、やはり大層面白かった。

この店には、近年人気で専門店も増えつつあるいわゆるハード系のパンは多くなかったが、バゲットの横には、ず

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ウティット・ヘーマムーン×岡田利規【プラータナー:憑依のポートレート】

ウティット・ヘーマムーン×岡田利規の『プラータナー:憑依のポートレート』を最終日に観てきました。休憩時間を含めて四時間という長丁場、当日券の滑り込みだったので観客席の階段にお座布団を敷いてという尻の拷問だったが身体的な苦痛を上回る静かな興奮がありました。

タイの芸術家の人生・性愛の遍歴が、タイの政治的な変動とともに描かれる本作には、『「あなた」の人生の物語』というキャッチコピーが付されている。

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堀江敏幸【傍らにいた人】

堀江敏幸【傍らにいた人】

日経新聞に連載されていた書評を一冊にまとめた書評集。仏文学の印象も強い著者だが、語られるのは日本の古典である。日経新聞という相当に実利を重視するはずの新聞の片隅に、この生産性という概念から遠く離れた緩やかな散文が載せられていたということ自体が、何というか嬉しい。

「解釈の誘惑から離れて」「全体の流れや構造とは関係ない細部につまづくこと」を掲げ、要約すれば零れ落ちてしまう「傍ら」の描写に着目して丹

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