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異語り 夏瓜(かか)
2022年3月10日 22:33
コトガタリ 082 ツジウラ昼間の観光地はとにかく人が多かった。土産物屋が並ぶメインストリートなのだから当たり前なのだけど、浮かれている人が多いせいか、道の端に立っているだけなのに何度も人にぶつかっている。「あっ、すいません」「……いえ」既に定型になりつつある受け答えが、自分の周りからも聞こえてくる。ふうっと息をつき改めて自分の周囲を確認する。ごった返す土産物屋。その出入り
2021年6月23日 22:04
コトガタリ 047 ムカエニキタモノ先週に続いて雨の日の思い出をもう一つ小学校の頃、住んでいたマンションに西向きの出窓があった。リビングに直角三角形に突き出た窓。膝上くらいの高さがあり、大人が腰掛けるのにちょうどいいくらいの奥行きも合った。でも、結構キツイ西日が入るので何かを飾ることはなく。いつもすっきりしていた。小学生の頃はよくそこに座って(子供には程よい広さだったので)外を眺め
2021年4月7日 23:00
コトガタリ 036 ニュウガクシキ小学校低学年の記憶はほとんどが断片的でおぼろげなものばかりだ。けれどもなぜか入学式の記憶だけは鮮明に覚えている。その日は珍しく父もいて、私は朝からはしゃいでいた。新しいピンクのワンピースに白いボレロを着て、ピカピカの真っ赤なランドセルを背負って小学校へ行った。教室の机には自分の名前が書いてあるシールが貼ってあり、新品の教科書が積んである。6年生の
2021年1月6日 21:37
コトガタリ 023 トビラ最近になって唐突に思い出した景色がある。今まで忘れていたというか、知っていたけど意識に上らなかったような。そんな気にならなかったものが、強烈な違和感とともに強く記憶を揺さぶってくる。高校を卒業し進学のために上京した。最初に住んだアパートはちっとも東京っぽくないのどかな所にあった。普通列車しか止まらない最寄り駅は歩いて5分。急行の止まる駅までは自転車で十分