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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2020年10月の記事一覧

異語り 013 パワースポット

異語り 013 パワースポット

コトガタリ 013 パワースポット

東京に進学した時。学費と家賃は親が援助してくれたが、生活費とお小遣いは自分で何とかする必要があった。
時期的にバブルがはじけた後ではあったが、まだそれなりに時給をもらえるバイトを見つけ楽しい学生ライフを送ることができた。

バイト先は新宿の居酒屋。
場所柄様々な人が集まってくる。
お客さんで芸能人を見かけたり、バイト仲間も海外からの留学生や訳ありのご夫婦、夢追

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異語り 012 夜の騎士バス

異語り 012 夜の騎士バス

コトガタリ 012 ナイトバス

珍しく時間通りにバスが来た
カードをかざし「そろそろチャージしないとな」などと考えながら中に乗り込む
いつもはガラガラの車内がこれまた珍しく8割方埋まっていた。

昨今の風潮から先客のいる2人掛けの席に座るのもためらわれる。
「まあいいか」と、手すりに寄りかかるようにして場所を確保した。

バスはすぐに発車した
降乗客は少なくスイスイと停留所を3・4個を通過する。

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異語り 011 銀河鉄道

異語り 011 銀河鉄道

コトガタリ 011 ギンガテツドウ

ある週末紅葉を愛でに足を伸ばした。
海のそばまで山が迫る田舎道を走る。道沿いにポツンポツンと小さな村が現れた。

目的の宿は山の斜面にうま埋め込まれるように建っていた。
窓からは海がよく見える。

夕食後少し飲み足りなくて酒を求めて宿を出た。
既に飲んでいるため歩くしかないのだが、この村唯一の売店は山の下の海のそばにあるという。

まるでハシゴのような急勾配の

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異語り 010 アンデルセンの森

コトガタリ 010 アンデルセンノモリ

まだ私が放浪していた頃だから、もう20年ほど前の話になる。
その頃は夏になると北海道にたくさんのライダーが上陸していた。
道内にはライダーハウスという安く泊まれる宿がたくさんあり、個性豊かなオーナーが暖かく迎えてくれる。基本予約も必要なく、ふらりと訪れまた次に流れていく人、一所に長くとどまる人、仲間と出会い一緒に旅を始める人。様々な出会いがあった。

富良

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