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【小説紹介】君は君らしく生きていいーー『カラフル』

これは私が中学生の時に読み、私の人生を大きく変えた本です。
『カラフル』森絵都/著(理論社・講談社・文春文庫)

オススメ度・読者対象

対象年齢:中学生(~高校生)
オススメ度 ★★★★★
読みやすさ ★★★★★

・”仲間外れ”になりたくないと思ったことのある人
・「みんなと歩幅を合わせる」ことに違和感を覚えている人
・なんとなく息苦しいなと思っている人

私の中学時代より、今を生きる中学生・高校生の方がよりそう思っているかもしれません。

読んだ後、晴れ晴れとした気持ちになって、
自分らしく生きたい、自分に素直になっていいんだと思えます。

人との関わり方や自分の在り方に悩んでいる人、それは友達でも、先生でも、上司部下でも、そして家族でもなんでもですが、ぜひ手に取ってほしい1冊です。

得るものが必ずある作品なので、読書感想文も書きやすいでしょう。

概要

「おめでとうございます、抽選にあたりました!」
『カラフル』森絵都(理論社)

大きなあやまちを犯して死んだ「ぼく」は、幸運(?)にもその前世のあやまちを思い出し輪廻の輪に戻る機会を与えられ、小林真の体に「ホームステイ」をすることになる。
たまにガイド役として天使のプラプラがアドバイスをくれる。こいつが、とても食えないやつだ。

小林真は中学三年生。兄が一人いる平凡な家庭だが、自殺を図ってしまった。
小林真として目覚めた「ぼく」は、案外いい家族じゃないかと思っていたが、徐々に小林真が自殺を図ってしまった理由を知ることになる。

なにが最も真を追いつめたのかなんて、そんなのぼくにもわからない。
たぶんそのぜんぶがからまりあって、毎日がどんどん重たくなり、その重たい毎日が積み重なってさらに重たくなり、とうとう一歩も動けなくなっちゃったんだ。
『カラフル』森絵都(理論社)

その小林真として生きる中で、彼は小林真でも知りえなかった、みんなの様々な面を知ることになる。

好きな言葉・この本が教えてくれたこと

「この世でもあの世でも、人間も天使もみんなへんで、ふつうなんだ。
頭おかしくて、狂ってて、それがふつうなんだよ」
『カラフル』森絵都(理論社)
人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。
『カラフル』森絵都(理論社)

この世は極彩色。
いろんな色があって、人それぞれにも色があるし、その人もいろんな色を持っている。
でもそれは当たり前なんだってことを、私たちはたまに分からなくなる。
あえて1色にしようとしたり、その色を認めようとしなかったり、見えないふりをしたりする。それが思い込みだと知らずに。

だから「くるって」いても、「ふつう」でも、
その両面を持っているのは決しておかしくない。

つまりは、あなたも普通なんだってこと。

読んだ背景・あなたが読むなら

たしか中学1年生のときに、中学校の図書室でふと見つけて読みました。
茶けた表紙かカラフルな表紙が多い中で、黄色一色に「カラフル」の丸い文字だけ。よく目立っていたのを覚えています。

中学生になってしばらくすると、いじめが始まりました。リーダー格のような人がターゲットを変えて順々に1人をハブりにするんです。私もその標的になりました。
理由もわからず、昨日楽しくお喋りしてた友達が突然、喋ってくれなくなりました。

周りに合わせて、はみ出さないように一生懸命だった矢先に起こったいじめ。親にも話せず、どうしたらよいかわからなくて、途方に暮れました。
それでも私は本が友達でしたから、いろんな本を読んで心を慰めました。その中で出会ったのがこの本です。

この本を読んで変わったのは、「周りに合わせる」のをやめたことです。
そのころはコギャルが流行っていて(古いですね)、女子はみんな同じような小物をじゃらじゃらつけたり、スカートを短くしたり、ルーズソックスを履いてきてたりしてたんです。クソダサイと思ってました。

だから合わせるのをやめたんです。
喋ってくれないなら構わないけど、それを恥ずかしいと思うことなく堂々と好き勝手していようと思いました。
みんなに合わせて伸ばしていた髪もバッサリ切りました。無視されても友達には話しかけました。あるいは、陰口を叩かれても無視して本を読んでました。

最初は辛かったけど、次第にみんなのツンとした態度なんかどうでもよくなったんです。
そしたら、いつの間にかいじめは違うターゲットに移っていました。
彼女はまた、誰かのちょっとした「はみ出し」を見つけてハブにしていましたが、私は気にせずその子と仲良くしていました。
それも彼女の色の1つに過ぎないと知っていたからです。

思い出話が長くなりましたが、この本は
一歩間違えば引きこもりになりかけた私を救ってくれた本とも言えます。

だから人間関係で悩んでいる人がいたら、
この本が間違いなくあなたの味方になってくれると確信しています。

読むならば、心に響いた言葉を書き出しながら、または付箋をつけながら読んでください。そして、その言葉を何度も振り返ってみてほしいんです。
お守りに持ち歩くのもいいです。

そしてあなたが感じた変化を忘れないでください。
それは言葉にならなくてもいい。
言葉になるなら、感想を書いてみてもいいかもしれません。

注意点

注意は、映像化されたものを先に見ないこと。

この本にはいわゆる余白がたくさん存在します。
その余白が、読者を新しい視点に導いてくれます。

映像化をするということは、その映像を作る監督が新しい解釈を添えて作品を作ることが多いです。
だから、その余白がその解釈で埋まってしまい、あなたが新しい発見をする前に、その解釈がフタをしてしまいます。
私はアニメを見ましたが、アニメは特に最後に監督の希望が描かれていました。
それを見て、その最後では私なら独り立ちできないな…と思います。

だから、まずは小説で読んでください。
雰囲気が欲しいなら、絶対単行本で読んでください。
ちなみに私は初版の理論社推しです。図書館でなら借りれます。

余談

物語は人生を変える。時に人を大きく変える力がある。
だから私はいろんな本をいろんな人に読んでほしいと思うようになりました。

これまで何千という本を読んだ(と思います)私ですが、やはり一番人生を変えられたこの作品を始めに紹介する本として選びました。
書かれたのが1998年で、今だと少し古い描写もありますが、中高生がその時に必ず直面する人間社会の闇と光を明るく描き出した作品で、今も変わらず共感できる部分があると思います。

アニメの主題歌に尾崎豊の「僕が僕であるために」が選ばれています。
なんて良いチョイスなんだろうと思ました。
アニメはラストの解釈違いはありますが、この作品を心から愛すものとして、またその解釈もいいなと思います。

読まれた方がいらっしゃったら、あなたの感じたこともぜひ教えてください。

「僕が僕であるために」を含め、尾崎豊の歌は生きづらい世の中で強く生きる力をくれるものが多いですよね。若い時に一度は聞きたい歌手の1人です。
合唱曲にもなっていますから、ぜひみんな力強く、この社会に歯向かうが如く歌ってほしいです。
歯向かうならば「15の夜」でしょうか。「盗んだバイクで走り出す」で有名なあの曲をアカペラで歌ったことがありますが、教師や保護者に向かって歌うのはもう爽快感最高です。笑
合唱コンクールの自由曲にいかが。

僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない
正しいものは何なのか それがこの胸に解るまで
僕は街にのまれて 少し心許しながら
この冷たい街の風に歌い続けてる
「僕が僕であるために」尾崎豊

ここまで読んでいただきありがとうございました。
それではまた!

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