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サブカル界の奇祭・アニメ最萌トーナメントを振り返る【歴代優勝者一覧】

2ちゃんの祭りかつ、メディア学の重要資料なのが「アニメ最萌トーナメント」である。電車男などで2chとヲタク文化が浸透した2000年代においてアニメにどっぷり浸かっていた方々なら、懐かしい祭りなのではないか。

このトーナメントこそ、2000年代のいわゆる萌えアニメ全盛期のアニメカルチャーの盛り上がりを代表するようなイベントだ。

「ま〜た2chの酔狂か」と思われがちだが、実はこの祭りにはサブカル研究の大学教授なども注目している。当時の2chのスレは、今から15年前くらいのサブカルチャーを知るうえで重要な資料と化した。

今回はサブカルの奇祭・アニメ最萌トーナメントについてROM専だった私が語ってみる。

スレのURLを彼女に誤送したのは黒歴史

私は2007年から参加(ROM)したが、当時は胸を震わせていたものだ。推しが勝ちぬくと、友人とハイタッチして喜んだし、優勝者が決まると「やっぱりか〜、あのキャラって………」とあれこれ語ったわけだ。見事にキモヲタの鏡だった。

当時はあまりに白熱しすぎてて、ガラケーのメールで彼女に「タコス(アニメ「咲」のキャラ)負けた……死にたい」とURLを誤送したのは黒歴史すぎてもはや白い。真っ白に燃え尽きて、有機物ゼロだった。

さて、そんな人の思春期を爆破する破壊力を持つ「アニメ最萌トーナメント」とはいったい何なのか。概要からご紹介しよう。

アニメ最萌トーナメントは2ch上でのアニヲタのぶつかり合い

アニメ最萌トーナメントは、2ちゃんねるのアニメサロン版で開催されたイベントだ。実は毎年、主催者によってルールが微妙に変わるが、基本は年間に放送されたすべてのアニメ作品に登場する女性キャラがノミネート。だからむっちゃ膨大になる。

そこで第一次投票がおこなわれ、こぼれたキャラから敗者復活投票がなされる。その後はランダムに10ブロックほどに分けられて、投票される。その後、各ブロックの勝者が10名ほど決勝に進み、トーナメント表にのっとって、その年に最も萌えたキャラは誰かを決めていくのである。

この大会の元ネタは2001年の「葉鍵板最萌トーナメント」だった。もともとはLeafとKeyのエロゲ、ギャルゲーに出てくるキャラクターのみの話だったのだ。

この主の提案に、みんな「いや無理だろこれ。荒れるだけや。駄スレ立てんな」という感じ。この殺伐さが懐かしい。怒られるの怖くて、とても書き込めなかった思い出が香ばしい。

しかし蓋を開けてみれば葉鍵版最萌トーナメントはかなり盛り上がり(もちろん荒らしは多々あったものの)約5ヶ月の投票期間中、山ほど投票された。

これをきっかけに2002年にアニメ最萌トーナメントが開催開始となる。トーナメントとありアニヲタたちかなり白熱して投票したが、根本的な目的は「キャラを語らせろ」という点にあった。毎回投票スレとは別スレッドが立ち上がり、そっちではヲタク特有のディープなキャラ設計話とか、キャラモチーフとか、作画裏話とか、そんな会話が盛り上がっていたのだ。

この現象に東京工科大学 准教授でサブカル研究者の暮沢剛巳氏は「ネットの無法地帯・2ちゃんねるで管理者と参加者が法を守りながら10年近く開催している異例のイベント」と評している。たしかに……。

ただ2ちゃんねる民の結託の強さは我々の知るところだ。「24時間テレビの企画ぶっ壊そうぜ!」とか「田代まさしをTIME誌の表紙にしようぜ」とか、そんなイベントのときってけっこうチームワークを発揮する。このイベントの際は「荒らしを追い出す動き」もあった。おもしろいことをする際のネット民はけっこう横のつながり強いのだ。

歴代優勝者を一覧で並べてみる

では、2002年から2014年まで続いたアニメ最萌トーナメントの歴代優勝者を並べてみよう。ちょっとおもしろい傾向も見られる。

2002年優勝者・木之本桜(カードキャプターさくら)

「はにゃ〜ん」「ほええ〜」など、完全にあざとかわいい小学生である。完全にCLAMPの生み出した萌え兵器。アニメはNHKで18:00〜放映されていた。

2003年優勝者・原田梨紅(D・N・ANGEL)

テレ東の夕方アニメ「D・N・ANGEL」のメインヒロインのひとり原田梨紅が勝ち抜いた。デレ寄りのツンデレみたいなキャラで、ショートカットに運動神経抜群。完全に萌え要素の集合体だった。

2004年・ローズマリー・アップルフィールド(明日のナージャ)

テレ朝の朝アニメであり、爆死マンガの代名詞「明日のナージャ」から。ちなみに準優勝はナージャだった。ローズマリーのほうが人気なのが2ちゃんねるらしい。ナージャに異常なほどの嫉妬を覚える名悪役である。可哀想でいじらしい部分に萌えたのか。

2004年・春日歩(あずまんが大王)

2004年は2回に分けて開催。こちらではあずまんが大王の大阪が優勝した。ボケーっとしてるドジっ子で、かつ腹も立たない。しかもノリがいい。素晴らしいキャラクターである。この年から深夜アニメのキャラが常連になっていく。

2005年・高町なのは(魔法少女リリカルなのは)

声優・田村ゆかりの出世作であり、魔法少女系アニメの金字塔・魔法少女リリカルなのはの、なのはが優勝した。さくらほどあざとくはないが、少しばかりのメンヘラ気質のある「守ってあげたくなるキャラ像」を確立した萌えキャラだ。

2006年・翠星石(ローゼンメイデン)

ローゼンメイデンのオッドアイお姉さん・翠星石が優勝。ですます口調でコミュ障。しかし心を開くとテンション高いというオタクの象徴のようなキャラ。ちなみに前年の2位は同作の蒼星石で、今年の2位はリリカルなのはのフェイトだった。完全に2強時だ。この年は(覚えている限り)ローゼンメイデン強強で、金糸雀も真紅も雛苺も決勝にいた気がする。

2007年・古手梨花(ひぐらしのなく頃に)

ひぐらしの梨花ちゃん。CV田村ゆかりがやはり強かった時代である。ここにきてがっつりロリキャラが人気になった年で、2位はハヤテのごとく!のナギだった。

2008年・柊かがみ(らき☆すた)

らき☆すたのツンデレツッコミ役・かがみが優勝。ちなみに前年の準優勝は妹のつかさだった。2006年もそうだが、結局優勝するのはロングヘアーの姉のほうである。気づけば2002年の原田さん以来、ショートカットが勝っていない。インキャで自分のクラスに友だちがいないところも萌え要素だった。

2009年・逢坂大河(とらドラ!)

とらドラの手乗りタイガーが優勝。引き続き、ツンデレロリキャラが人気である。とらドラ!もみんな見ている名作だろう。コミュ障で友だちがいないキャラブームはいつまで続くのか。

2010年・中野梓(けいおん!)

2010年はたしかにあずにゃんの年だった。ちなみに前年の2位はけいおん!の主人公・唯である。京アニ強し!といった感じだ。以前、ツンデレロリキャラブームは続く。

2011年・巴マミ(魔法少女まどか☆マギカ)

まさかのマミさんが優勝。この年はマミさんがお菓子の魔女に首を食われた年であり、殺されるを「マミられる」という文化もできた。なので純粋な萌えというより、ちょっとネタも含まれている。2位は同作の佐倉杏子。いかにまどマギのマミられた衝撃がすごかったがわかるだろう。

2012年・園城寺怜(咲 阿知賀編)

クールな病弱キャラで仲間思い、しかも麻雀で一手先を読める天才……という好かれるためのツボを押さえたキャラである。あまりの人気にスピンオフが出た。ちなみに2位は咲屈指のおっとりキャラ松美玄である。このあたり「おっとりお姉さん」も人気だったのかも。

2013年・鹿目まどか(魔法少女まどか⭐︎マギカ)

ここで主人公・まどかが優勝。2位は同作の美樹さやかだった。やはり強しまどマギ。まどかはドジっ子属性もあり、メンヘラ気質もあり、なんかエヴァのシンジくんを思い出すキャラ。

2014年・原村和&宮永咲(咲 阿知賀編)

咲の主人公・宮永咲と、天才キャラ原村和が同点優勝。この時代は萌えアニメの代表格だった。

この2014年で終了したのは、完全に荒らしが目立ったのがきっかけであり、最後はなんか多重投票できるツールが開発されて、同点優勝という変な感じになったからである。この作業、だいぶめんどくさい。一銭の金にもならんのに、熱がすごいわけだ。しかしそれほどまでにキャラへの愛情があったのだろう。

2000年代の萌えキャラの作り方が見えてくる

アニメ最萌トーナメントを振り返ると、萌えるキャラの作り方というのが、何となくわかってくるのではないか。ここに日本アニメ史を振り返るうえでのおもしろい部分が見えてくる。

・ロリ、ツンデレ、ツッコミ
・のんびりどじっ子
・コミュ障、弱メンヘラ
・おっとりお姉さん

このあたりに何となく萌えるキャラの法則性がある。まだアニメオタクが市民権を得る前だったので特に「コミュ障のうち弁慶」というキャラに惹かれた部分もあるのかもしれない。

当時は空気系アニメの全盛期だったので、今はどうか分からんが、今だと禰豆子が勝ったりするんだろうか。まさか「半オニ竹筒食いキャラ」がこんなに人気になるなんて。でも確かにキャラデザは完全にロリ寄りであり、ときに甘えたりするあたり、萌え要素は感じる。

もう一度、Twitterあたりでアニメ最萌トーナメントをしたらおもしろそうだ。一般層までアニメカルチャーが浸透しているからこそ、また新しい視点で萌えキャラのつくり方がわかってくるかもしれない。

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