- 運営しているクリエイター
#連載
アンフィニッシュト 47-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「岡田君――」
「分かっている」
岡田も事務所内の動きを見つめている。
突然、電話を持った男が、周囲にいる者に何事かを指示した。事務所内の人の動きが慌ただしくなる。
「ばれたかな」
岡田が唇を嚙む。
アンフィニッシュト 47-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「国家権力を守るために、俺は戦ってきたわけじゃない」
「おいおい、あんたも俺も、奴らにとっては虫けら同然なんだぜ。虫けらが何を言ったって、誰も聞いてはくれないよ」
「俺たちは、政府にとって虫けらなのか」
アンフィニッシュト 46-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
岡田は琢磨の口から煙草を取り上げると、自分で吸い始めた。どうやら煙草は、何本もあるわけではないようだ。
「日本政府がひそかに北朝鮮政府と接触し、安全を確保していたとも考えられる」
「まさか――」
国交断
アンフィニッシュト 46-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
――果たして、うまくいくか。
今になって恐怖が込み上げてきた。だが、もう後戻りできない。
「海図や磁石もありましたよ」
いつの間にか傍らに来ていた岡田が得意げに言う。
船内で見つけてきたらしい。
アンフィニッシュト 45-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「田丸さんを裏切れない」
――裏切れないのは、田丸ではなく北朝鮮政府だろう。
その言葉を琢磨はのみ込んだ。
今は命の恩人というか細い線でつながっているが、日が経てば経つほど、柴本の洗脳が進むのは必然
アンフィニッシュト 45-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「君はそれでよいのか」
琢磨の問い掛けに、よどみなく柴本が答える。
「もちろんです。少なくとも今の中野さんは、仲間も北朝鮮政府も裏切るようなことをしていません。首領様のために心を入れ替えたと信じます」
アンフィニッシュト 44-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「何事にも手順というものがあります。まずわれわれのやるべきことは、同志を増やすことです」
「同志を増やすといっても、どうやって――」
「このカリキュラムが終わった後、あなたたちの仕事はヨーロッパに行き、そ
アンフィニッシュト 44-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
寺島が島田の問いに答える。
「先に警察に飛び込んでから、警察官と一緒にコインロッカーにノートを取りに行くという手順でしょう。きっとあのノートに書かれた暗号は、何かの証拠か、赤城にとって都合の悪いことを指
アンフィニッシュト 43-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「こいつはラグビー部でね。商社マンになったんだが、昨年、脳梗塞で亡くなった。最後の方は、働き過ぎでふらふらだったとさ。あんなに頑丈な男が若死にするとはね。人間、一寸先は闇さ」
寺島は「そうですか」としか答
アンフィニッシュト 43-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
石山の部屋を辞した後、鑑識に向かった寺島は、一千枚近い写真の中から目当てのものを見つけ出した。
その写真は、簡宿の隣の駐車場を写したものらしく、現場から火災風で飛ばされたとおぼしき「Disk Lord
アンフィニッシュト 42-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
第四章 天国からの脱出
一
平成二十八年(2016)の正月が明けた。
国内では沖縄県知事が、宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移転先とされていた名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを正式決定し、政
アンフィニッシュト 42-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
庭にある車回しには、すでにユーチョルがいて、兵士に何か指示している。
琢磨が駆け付けると、ほぼ同時に、田丸をはじめとしたメンバーも駆け寄ってきた。
「ユーチョルさん、いったいどういうことだ!」
田丸
アンフィニッシュト 41-2
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
騒動が一段落したところで、田丸が立ち上がった。
「柴本の言う通りだ。主体思想は唯一絶対のものであり、無条件に従うべきものだ」
「あんたは間違っている!」
背後から中田に羽交い絞めにされながら、吉本が喚(
アンフィニッシュト 41-1
サンデー毎日(毎日新聞出版)にて2017年秋まで連載していたミステリー小説を毎週火・木にnoteにて復刻連載中。
1960年代後半の学生運動が活発だった日本を舞台に伊東潤が描くミステリー小説。
「よせ!」と言って中田が吉本を引きはがそうとするが、吉本は放さない。
「今は、ユーチョルさんたちに任せるしかないじゃないか!」
田丸がうめくように言う。
――その通りだ。俺たちは北朝鮮政府に生殺与奪権