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黒田隆憲さん・前田敬子さん「ビートルズを愛する二人の“すべてを楽しむ暮らし”」

インドで瞑想をするビートルズの姿をとらえたドキュメンタリー映画『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』。その公開を記念して、ビートルズと同じ「超越瞑想(TM)」を学んだ音楽ライター・黒田隆憲さんと、ファッションブランド〈LOISIR〉デザイナー・前田敬子さんに、映画の感想や瞑想と日々の生活の関係についてお話をうかがいました。

映画に描かれた「軽やかな人間関係」

──映画『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』、ご覧になっていかがでしたか。

黒田さん:「インドでビートルズと交流した監督の視点からビートルズが浮き彫りになっていく」というのが作品としてまずおもしろいな、と思いました。僕は元々ビートルズが好きで、アルバムは『The Beatles』(通称:ホワイトアルバム)が一番好きなんです。その影響でTMやインドに興味を持って、2001年にはリシケシュにも行きました。実際にビートルズがTMを学んだ施設の近くまで行ってみたんですけど、その頃は今のようにリニューアルされておらず、廃墟同然でボロボロでした。それでも、映画の中に出てくるリシケシュの風景は懐かしかったです。

敬子さん:私は、監督がTMを通してビートルズと出会って、その後この作品を通して世界の人とつながっていくところがおもしろいな、と思って。映画はTMがメインのテーマになっているのだけど、映画を作ることを監督に後押ししてくれた娘さんはTMに興味がなかったりして、そんな軽やかな人間関係も含めて良かったです。監督が、娘さんに言われるまでビートルズの写真を撮ったことを忘れていたというのも、ビートルズのメンバーたちと自分自身があまりにも自然にその場に溶け込んでいて、瞑想することが主体になっていたからなのかな、と。

ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・トーキョー

──ところで黒田さんもポール・マッカートニーとリンゴ・スターに実際にお会いになったことがあるそうですね。

黒田さん:ポールは2018年、リンゴは2019年の来日のときに単独インタビューをさせてもらいました。ポールは若者向けのメディア1社のみ受けるということで、20分くらい、東京ドームの楽屋で独占インタビューとなりました。トップスターの場合、通常は取り巻きの人がたくさんいる中でインタビューを行うことが多いんですけど、その時は僕と通訳さん、編集さん、向こうの公式のカメラマンと5人だけで。ポールは本当に気さくで、質問の意図を瞬時に理解してくれたので、短い時間でとても濃いインタビューをすることができました。一流の人というのは人柄も一流なんだな、とその時思いました。

──それは貴重な体験ですね。リンゴ・スターはどんな印象でしたか。

黒田さん:リンゴはイメージどおり「陽気なおじさん」という感じで終始「ピース」って言っていました。時間はポールの時より短くて10分くらい。その時はまわりにたくさん人がいたんですけど、一緒に記念写真を撮ってくれたりして、ポールとはまたちがう人柄の良さを感じました。

『Yesterday』でつながるビートルズ体験

──最初にビートルズの音楽と出会ったときのことはおぼえていますか。

敬子さん:小学校三年生の時にはじめて買ったレコードがビートルズだったんです。ピアノ教室の下が本屋さん兼レコード屋さんで、お店の人が飾っていたんだと思います。お小遣いで買えるのがEP盤だったので、なんとなく知っている『Yesterday』を買ったんですけど、帰って家で聴いたら衝撃でした。そういう音楽はそれまで聴いたことがなくて、自分の中にものすごく「切ない」みたいな感覚が生まれたというか。ポップソングに目覚めたのもそれがきっかけだし、自分の感情が広がる感じもあったんじゃないかと思います。とにかくビートルズを聴くのが楽しみで、親に「今からお出かけするよ」と言われた時に、「このレコードを聴きたいから行きたくない」みたいに言ったことをすごく覚えています。

黒田さん:僕は13歳の時でした。音楽の授業で、教科書に載っていた『Yesterday』をリコーダーで吹いたら先生に褒められたんです。それで「ビートルズに詳しくなったら学校で人気者になれるかな」と思って聴きはじめたから、きっかけはよこしまな気持ちでしたね。でもそこから音楽が本当に好きになって、楽器をやるようになって、今こうして音楽ライターをしているのはビートルズのおかげだと思っています。

コロナの時期に考えた「やってみたいこと」

──そして今年ご一緒にTMを学ばれたんですね。

黒田さん:TMのことを知ったのも13歳でした。当時はマハリシとビートルズの関係はさまざまな説があって、「実際はどうなんだろう」と思っていたんです。今はだんだん研究が進んできて、否定的な説は本当ではなかったというのが定説になりつつありますよね。僕も後になってからデヴィッド・リンチがTMについてポジティヴに話しているのを知ったり、ポールが今でもTMを続けているのを聞いたりして、「それが答えなのかな」と思いました。

2020年からコロナ禍になり、行動が制限されている時に「自分にとって楽しいことをもっとやりたい」と思うようになったんです。それでやってみたいことを並べていったらその中にTMがあって。それが去年の暮れで、年明けにNHK BSで『ザ・ビートルズ・アンド・インディア』を観たのもきっかけの一つになりました。TMを知って40年後にようやく門を叩いたという感じですね。

──敬子さんは黒田さんに誘われる形で受講されたんですか。

敬子さん: TMではないんですけど兄が瞑想を長くやっていて、自分も興味はあったんです。黒田さんから誘われた際に兄に相談したら「良いんじゃない」と後押しされて、それで始めてみました。

黒田さん:受講について調べていたときに「友人と一緒に受講しても良いか」と問い合わせたら、「親しい方と一緒にTMするのは良いですよ」と言われて、それもまた後押しになりました。敬子さんがいたからこそTMをやってみたいという気持ちが強まったんです。

忙しくても休日は映画やライヴを楽しんで

──TMを始められて、それまでと何か変化を感じることはありますか。

黒田さん:日々いろいろな刺激の中にいるので、「これはTMのおかげだ」とはっきりわからないところもあるけど、以前と比べて何事にもリラックスして取り組めるようになったかな、と思いますね。一日二回ちゃんとできているかと言われたら正直「すみません」って感じの時もあるんですけど。でも気持ちがもやもやする時に、TMをすることでリセットできる感じというのはあるから、「精神衛生上良いんだろうな」というのは感じていて。欠かさずにやりたいな、とは思っています。

敬子さん:たとえば一緒にいる時に、以前だと言われてイラッとしたようなことも最近はしなかったり。ユーモアで返す余裕が出てきたんだと思います。ここ最近は仕事が忙しかったんですけど、「あれもこれもやらなきゃ」と思っているときほどTMすると一旦落ち着くというか、「そこまであわてることもないか」という気持ちになれる。あと、忙しいのに休日はよく映画やライヴに行ったりしているので、仕事先で「よく時間がとれますね」って不思議がられることもあります。

犬も猫も、すべてをいつくしみたくなる

──TMは活動を楽しむために行うものなので、お二人の楽しそうなご様子は本当にうれしいです。ご受講のきっかけにもなった、ご一緒に行うTMはいかがですか。

敬子さん:一緒にTMするとやっぱり落ち着きます。猫が同じフロアにいるんですけど、直前まで「ごはんごはん」と鳴いていても、TMを始めると静かになって終わるまで待っているんです。

黒田さん:やっぱり一緒だと全然違いますね。何が良いとは説明しづらいんですけど、つながっている感じというか、静寂を共有しているというか。うちは猫と犬もいるんですけど、一緒にTMをした後は、それらも含めた空間すべてをいつくしみたくなるというか、そういう気持ちになれるのがすごく良いな、と思って。その場が浄化されるというと変ですけど、すごく穏やかな気持ちになるんです。これからもなるべく一緒にTMできたらと思います。


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