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忘れられない言葉たち

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強く共感したもの。心を突き動かされたもの。また読みたいとふいに思い出す素敵なnoteを入れさせてもらいました。やわらかな言葉に、切なさに、激しさに、もう一度スキを。
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2020年6月の記事一覧

無言の音

“さようなら” って美しい言葉だよね 彼女はときどき変わったことを言う。なんで? と聞い…

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掌編小説 | にじいろ、オルゴール

「ちょっと、スマホ見て?もうこれ何回目?」 扉が開いた瞬間、私のおかえりを掻き消すように…

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雨の夜のキャバクラと焼き鳥と

6月の金曜の夜、上司にスナックとキャバクラが合わさった様な店に付き合わされた。キャバクラ…

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母の喪失 #磨け感情解像度

 母はいつも「お父さんとは話ができない」と言った。  会話が成立しない、食事を作っても「…

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私を黙らせる方法(週報_2020_06_12)

三月の初週に会ったきり、どちらからともなく、私とあしながおじさんは長い自粛期間に入った。…

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若葉のころの僕らは

風が運ぶ草をかき分ける足音。制服のシャツがつんと引っ張られる感触。声をきかなくても、まぶ…

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配慮の時代  #磨け感情解像度

映画館に来るなんて久々だと思いながら、チケットに書かれた座席を探す。 目当ての席を見つけるとなぜかそこには先客がいた。何度も座席の番号とチケットの番号を交互に見比べたが、やはり合っている。 「あの」 私はおずおずと私の席にすわっている男性に声をかけた。 チケットを見せながら事情を説明すると、 「僕はなんて失礼なことを。たいへん申し訳ありませんでした」 その男性は何度も頭を下げた。彼の席は私の右隣りだったようだ。彼は全身で恐縮しながら席を1つずれ、私はつられたようにぎくしゃくし

望む時期は、とうに過ぎた。

誰の心のなかにも、触れられたくない「聖域」がある。そこは他人が気安く手を触れていい場所で…

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碧月はる
4年前
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【エプロンの結び目】

ぐらぐらと煮立つ白い湯気と、肩幅の広い後ろ姿に巻き付くエプロンの結び目を見ていた。 耳を…

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巡れ、巡れ、ぐるぐると。

「大丈夫だよ。だって、これはほんとのことじゃないから」 虚ろな表情でそう言った息子は、ま…

200
碧月はる
4年前
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いちばんとおい、半径ゼロ

このままマイナスになることはないんだろうな。 となりにぴったりくっついたとき、いつでも思…

お茶
4年前
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延長高校生 〜【#選択のあとに】企画始まりました〜

本日から28日まで受付の、【分岐点話〜選択の後で】の概要は目次から飛んで下さい。ルールの小…

呼べないから言うよ

「そろそろ帰ってくるから」 「うちもそろそろだわ」 スマホを置いた22時40分。懐かしいドラ…

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【かすみ草なあの子の横で】

「お母さぁん、この花なんていうの?」 母が玄関に飾った花瓶の花を指差して、私は台所へ声を飛ばした。 「あぁ、ピンクの花?」 「ちがうちがう、白いやつ。」 「え?白?」 白い花なんかあったっけ、とでも言うように首を傾げながら、母が近づいて来る。 「あぁこれか、これは、かすみ草。」 くるりと方向転換し、母は笑いながら台所へ戻っていく。 脇役よ…安い安いやつよ… そんなのより、ピンクのバラが素敵でしょ… 母の声が遠のいていった。 構わない。 私には、その「脇役」で「