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恋愛小説

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(短編小説)シイシイ

(短編小説)シイシイ

 シイシイは恋をした。
 
 17歳にして初めての恋だった。それは不意に訪れた。ほんの数秒まで彼のことも、ときめきさえ知らなかったのに、恋の矢は閃光のごとくシイシイの胸を貫いた。

「これ、誰?」

 昼休み、隣の席の男子が広げていたサッカー雑誌のページにシイシイは目を奪われた。そこには異国の選手がゴールを決めた写真があった。青いユニフォームと、後ろにたなびく茶色い髪。瞳を開いたりりしい顔つき。厚

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(短編小説)ルッキングフォー

(短編小説)ルッキングフォー

 去年の秋から時が止まっている。
「もう別れよう」陽人は唐突に告げた。「お前におれは必要ないから」と。
 そんなことなかった。大好きでずっと一緒にいたかった。けれども去年私
は隣人トラブルや家族の入院でバタバタして疲弊していた。思うように陽人と会えなくなったが、そういう時こそ彼が心の拠り所だったのに、丸1日連絡を返さなかった翌日に別れを切り出された。
 私の待ってを待ってくれず、うんと年下の彼女が

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(短編小説)さよならジェノベーゼ

(短編小説)さよならジェノベーゼ

 好きな人に好きと伝えるより、好きだった人にもう好きじゃないと伝える方が難しい。相手がいい人なら特に。まだこちらを好きだと分かっていればなおのことためらう。 
 だから、ないだろうか。傷付けずに別れる方法が。即座に感じ取ってもらえる仕草や目線が。それがあれば簡単なのに。こんなに悩まなくてもいいのに…。
 沙帆はもうずっとそのことばかり考えていた。朝起きて顔を洗ってる時も、賞味期限を過ぎて固くなった

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(短編小説)ドライブ・ヒズ・カー

(短編小説)ドライブ・ヒズ・カー

 さっきカーラジオで流れた歌が頭に残ってる。まるで今の私みたいだからだ。けど本心と悟られたくないので、口ずさむのを抑えた。
「昔の歌はいいねえ。感情じゃなくて気持ちを歌ってるもんな。最近の曲は我が強くて聞き流しちまうよ。感性重視で心に残らない」
 運転席でハンドルを握る広田さんは笑いながら毒づくのがうまい。彼の笑顔は素敵だ。本人もそれを自覚していて、三十四歳になっても衰えない万能の必殺アイテムだっ

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