教育における主体性の正体 #7教える側の権力を弱めるための条件

 だいぶこの話が長くなりそうなので、前段に結論への意図を書いておきます。自分が行き先を見失いそうですから。 
 現時点の学校教育で明確に評価の対象となっている主体性は現状の「やる気」という見方でよいのか?
 そして主体性を高めることが学習効果と成員平等に連動するためにはどうなる必要があるのか?という2つの視点から突き詰めてみようということです。というわけで、

権力の弱まりと学びのベストミックス

 これまで長々と考えてきた権力というのは、教員の側の都合でどうとでもなる部分です。そのことを明らかにするためにごちゃごちゃ綴ってきました。それくらい大切な概念、そして観点だと思います。
 主体性は子どもの側の都合の話で基本的には教員の介入できる部分は非常に少ない。私は少ないと考えています。ここには異論反論おありになる方もおられるでしょうが、これが主体性についての一番のアポリアではないかと考えられます。というのも結局外的な要因というのは、どんなものであっても内的な要因をくぐって作用するからです。たとえどんなに上手に子どもをその気にさせたとしても最終的にはそれが持続するか、深化するかは子ども次第の部分の方が大きくなってしまいます。
 私の場合は子ども次第の割合は相当大きいと考えています。もちろん子ども次第の部分に対して十分にコミットしていく努力はするのですが、そこにコミットし過ぎてしまうとそれはもはや子どもの主体性ではなく教師が主体になってしまうというということになりかねません。
 よく親がやった夏休みの課題を出す子どもがいますが、あんなもんに何の意味もないことは誰にでもわかると思います。たまにこれに意味付けを行うやつがいますが。
 ペーパーテストでは測れない、しかもその測り方ではそのときの気分で0から100まで平気で移動してしまう厄介な概念です。特に初等教育段階では測定すら困難です。授業中、こちらの話を聞いているかどうかもなかなかわからないんだから。

 だからこそ、教師の側のどの権力性を弱めるかということが子どもの側のどの部分の主体性を強めていくのかというベストミックスを考えなければならないのではないかということ。
 ここまで言ってしまえば実は普通の学校教員が普段やっていることにだんだん近づいていっていることに気づくんですが、構わず進めていきます。
 そもそも主体性へのコミット自体は単純に子どもに授業の主導権を委ねることでクラスルームの何人かの何%かは解放されます。そこは非常に簡単な仕組みなんですが結局それではどの子にどれくらいの効果が上がり、授業における教師の意図としてどれぐらい伝わっているかということが全くと言って良いほど分かりません。
 それではたまにやる分には良いのかもしれませんが、日常的に教科書ベースで取り込むためにはいささか乱暴な建て付けになってしまいます。それをやってるのが附属学校という名の実験学校です。特に抽選型の選抜方式をとっている附属はヒドい傾向にあります。肌感覚ですが。
 そこを日常的な教材において日常的な取り組みとして基本的に何も削らないで子どもの力をなるべく自然な形で引き出していくという教育本来の可塑性を主体性と重ねるためにはどうすれば良いかという視点です。

学習規律の存在と権力

 そうした授業を作る上での前提としての学習規律が非常に重要なのだと考えています。というか絶対必要です。 
 権力と規律との相関は前回のnoteで述べた通りだが、この規律ということと学習規律は違います。これは混同されがちなのですが、簡単にいえば子どもが真摯に向き合う相手が違います。規律は社会や教員に対して向き合わせますが、学習規律は学習に対してとにかく真摯であるように要請します。そこに一般的常識、とくに教員や学校に対する畏敬は必要ありません。
 しかし、学習や共に学習に臨む主体に対してはできる、できないという価値観をさておいて、真摯であることを求めます。クラスルームとしてこれを実現することはなかなか難しい。これは教科担任をしていればよくわかります。やり易いクラス、やりにくいクラスは一目瞭然だからです。複数学級担任制を主張する人間はここがわかっていないんです。このことに平準化はありません。
 YES or NO、ゼロサム、できるかできないか、そういうもんです。学習に対する主体性というはグルーピングにおける教える側からの権力との別離であります。もちろんこれがうまくすすめられ権力からのお別れの仕方が解れば教える側は必要なくなってきます。同時に共に学ぶ仲間すら必要としなくなります。主体性を最大限に発揮する学びとはそういう形ではないかということです。
 では、初等教育段階でどこまで学ぶ主体が主体的に権力から抜け出すことができる、学びの場を意図的に設定することができるかというさじ加減、ベストミックスになります。

 最後にそこを考えていきたいと思います。
 やっと次、最後です。


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