『BLUE/ブルー』

負けてばかりのボクサーが主人公と聞いた時、「『アンダードッグ』に似た作品なのかな」って思ったら、設定こそは似てはいるが、新たな負のボクサー達の蒼き群像劇だった!

 

 

主人公が負けてばかりのボクサーというだけでなく、エリートボクサーや素人ボクサーなどを出す辺りは『アンダードッグ』に近いが、当然ながらその中身と見せ方が大きく違う。

負けても負けてもヘラヘラしているジムのベテランボクサーの瓜田信人、瓜田と同じジムにいて早くから才能を開花させタイトルを狙える位置にいるがパンチドランカー症候群の兆候を見せる小川一樹、本気でプロになる気はなくボクサー風を目指しジムに入門した素人の楢崎剛、と見事な負のボクサーの群像劇を展開。

 

この中でも小川の彼女との一時とパンチドランカーの症状、素人の楢崎が徐々にボクシングにハマるサマなど見応え充分。特に楢崎となぜかずっと練習生の先輩を対峙させ、プロのボクシングの真骨頂とボクシングの本当の怖さを見せる。

 

タイトルの「BLUE」に負け犬、青コーナー、新人、憂鬱さなどあらゆる意味を重ねていて、『タクシードライバー』に重ねた『アンダードッグ』よりも青く見える。加えて、ボクシング以外の日常をより多く見せた『アンダードッグ』にその描写も一見近いようで実は控え目。その分、昼間の事務の様子やプロテスト、試合前の様子や軽量、試合の打ち上げなど、いわゆるボクシング周りの日常を存分に楽しめる。主婦たちがボクササイズをやってる様子や、かつて選手であったであろう会長の友達がジム内でたむろしてる様子など味わいがある。

 

 

これらに中学以来30年近くボクシングを経験した監督・脚本・殺陣指導の吉田恵輔監督の30年近くの経験がずっしり詰まったリアリズム溢れるボクシング映画。「あしたのジョー」や「はじめの一歩」が好きな方には絶対に見るべし!!

 

 

評価:★★★★★

 

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