どうやら私は何にでもなれるらしい
手に職がある人のことを、私は羨ましく思う。
そんな私は文系出身で、ズバ抜けた特技や資格は何も持っていない。
生まれ変わったら、何とかして理系脳になれないものかとすら考えてしまう。
でもある時、知人から思いもよらない言葉を耳にしたのである。
その知人はシステムエンジニアとして何不自由なく働いていた。
フレックスも在宅勤務も可能で、柔軟な働き方。
どこの会社に行っても必要とされるポジションだろうし、未来も安定だろう。
住む世界が違いすぎて比べるにも至らないのだが、私からしたら羨ましいでしかない。
しかしそんな知人がふと、私のような人のことを羨ましいと言っていたそうだ。
「自分はどこに転職したとしても、おそらくシステムエンジニアとして採用される。もちろんこれまでもそれ以外の仕事に就いたことはない。
ツナ(※筆者である私)のように、会社の広報や人事など、何にでもなれる人が羨ましい。」
とのことだった。
目から鱗だった。
もちろんどこまで本気で言っているかなんて分からないけど、
少なくとも自分にはそんな発想、1mmもなかったから。
たしかに私は、前に勤めていた会社では広報などの仕事をしていた。
異動の対象になれば、何の仕事をするのかどこの地域で働くのかも、すべて未知、もはや運でしかなかった。
転職を考えている今はどうだろうか?
正直、仕事としてどうしてもやりたい職種はない。
自分にできそうなことを無理のない範囲でやりたいという、なんとも意思のない人間である。
周りからは、「文章を書けばいいじゃない」と言われるけど、
それを本業とできる人がこの世には一体何人いるだろうか。
でも今回のことで、逆に考えれば、
❝いい意味で❞こだわりがない、のかもとも思った。
「私にできそうな事があれば、とりあえず全力で頑張ってみます」
バカすぎる発言かもしれないが、正直にそう伝えてみようかしら、なんてね。
無職になってから行った長崎旅行で、久しぶりにお店に一目ぼれをした。
それは『こどもの本の店 童話館』。
昔から絵本はなんとなく好きだったが、正直、大人になってからのほうがその奥深さに気づき、つい読みたいなと思ってしまう。
店内に入ると、幼い頃に読んだことのある懐かしい絵本や珍しそうな英語の絵本など、たくさんの種類が取り揃えられていた。
その中で、一冊の表紙と目があった。
_______『ぼちぼちいこか』。
どこかで見たことのあるようなカバの表紙。
でも、中身は想像がつかなかった。
私の手が勝手にページをめくり始める。
1ページに10文字もないくらいのその絵本は、
すぐに読み終わってしまう。
でも、
「あ、私絶対これ買う。家に連れて帰りたい。」
即決だった。
内容を簡単に言うと、
ある一匹のカバが、消防士や船乗り、バレリーナ、ピアニスト、宇宙飛行士などいろんな職業になろうと挑戦するが、どれもさっぱり上手くいかない。
「どないしたら ええのんやろ。」
カバは途方に暮れる。
一般的な絵本だと、ここで何かしら自分にピッタリの職業が見つかってハッピーエンドだと思うのだが、この絵本はここからが違う。
ハンモックに揺られるカバのイラストとともに、物語はここで終了する。
「まじか。ここで終わるんや。」
いい意味で肩の力が抜けてしまった。
旅行から帰った今も、私にとって大切な一冊になった。
相変わらず何のあてもない私だけど、
ま、ぼちぼちいこか。
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