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#研究

脳に情報を「書き込む」(後編)

脳に情報を「書き込む」(後編)

(2021年12月31日に、2021年時点の最新情報を追記しました。)

こんにちは。東京大学医学部を卒業し、現在は東京大学の池谷裕二先生の研究室で脳と人工知能をつなぐ研究をしている紺野大地と申します。

本noteは"脳に情報を「書き込む」"の後編記事であり、
"脳への情報の書き込み(write-in)"についての新しいテクノロジーや全体についての考察を記していきたいと思います。

前編note

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「侵襲型のNeuralink」、「非侵襲型のKernel」

「侵襲型のNeuralink」、「非侵襲型のKernel」

こんにちは、東京大学の大学院で脳の研究をしている紺野大地と申します。

先日Twitterで取り上げた、
「近い将来Neuralinkとの双璧になりそうな神経科学スタートアップKernel」
について簡単にまとめたいと思います。
(Kernelの一般的な情報はこちら。研究についてはこちら。)

なお、Neuralinkについては以前まとめた記事があるので、興味のある方はぜひそちらも参照ください。

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イーロン・マスクとNeuralinkは脳科学をどう変えるのか(2019年版)

イーロン・マスクとNeuralinkは脳科学をどう変えるのか(2019年版)

2019年7月17日、「脳とコンピューターをつなぐ」ことを目的にイーロン・マスクが設立した会社Neuralinkから衝撃的な発表がありました。
あまりに衝撃的な内容だったので以下のようなツイートをしたところ、多くの方から反響をいただきました。

このnoteでは、脳科学(神経科学)の現場で研究をしている私の立場からの感想を述べ、脳科学が今後向かう先について考えてみたいと思います。
(なお、本記事の

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人工意識について(3):機械の意識を証明するには?

人工意識について(3):機械の意識を証明するには?

前回は、人工意識の問題は2つあり、1つ目は「実装すべき意識の機能とは何か?」という問題だった。今回は、2つ目の問題について書く。

人工意識の問題2:機械に意識のあることをどうやって証明するのか?
意識の機能を明確にして、それを機械に実装できたとしても、それに本当に意識があることを証明することはできるのかという問題がある。たぶん、この問題があるから、そもそも人工意識ってものを考えても無駄だと思って

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意識から情報へ

意識から情報へ

自分自身の興味の起源は、意識をサイエンスで明らかにしたいというのがすべての始まりだが、現在は、意識への興味が、情報への興味へと発展している。

情報への興味は、幅広い分野での研究に由来するため、体系立てて説明することができていない。その中でも、特に重要に感じている問題が複数ある。

それらの問題について簡単に書いてみようと思った。というのは、同じ問題に興味を持っている人も世の中にいて、もっと仲間を

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感覚過敏と時間的な情報処理の過剰

感覚過敏と時間的な情報処理の過剰

トップの画像はNew Atlasの時間知覚に関するページから。

感覚処理障害の質問紙に基づく評価・実験的な評価 前回のnoteでも取り挙げたように(本文末にリンクを貼りましたのでご覧ください)、ASDを含む発達障害の感覚処理障害の評価に、感覚プロファイルという質問紙が世界的に広く用いられています。感覚プロファイルは、日常生活で多様な感覚刺激にさらされる状況を例に挙げ、それに対する反応のパターンに

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感覚過敏と時間的な情報処理の過剰-Part 2

感覚過敏と時間的な情報処理の過剰-Part 2

画像はScienceNewsより

11月9日に開催された「教えて井手先生!感覚過敏のほんとのところ」(発達障害サポーター'sスクール主催)で、ASDの方の中には高い時間分解能(ごくわずかな時間差の刺激の順序を正確に区別できるということ)をもつ人がおり、この特性が感覚過敏の一因になっているという研究を紹介しました(詳細は末尾にリンクした以前のnoteを参照)。また、短い時間の情報処理での高い分解能

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