Ryota Kanai

㈱アラヤの創業者。科学で意識の解明を目指し、京大卒業後、オランダ・ユトレヒト大学でPh…

Ryota Kanai

㈱アラヤの創業者。科学で意識の解明を目指し、京大卒業後、オランダ・ユトレヒト大学でPhDを取りCaltech・UCLで脳と意識の研究。Sussex大学で准教授となるが起業。AI技術の応用と、さらなるNeuroTech時代の実現を目指している。

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意識から情報へ

自分自身の興味の起源は、意識をサイエンスで明らかにしたいというのがすべての始まりだが、現在は、意識への興味が、情報への興味へと発展している。 情報への興味は、幅広い分野での研究に由来するため、体系立てて説明することができていない。その中でも、特に重要に感じている問題が複数ある。 それらの問題について簡単に書いてみようと思った。というのは、同じ問題に興味を持っている人も世の中にいて、もっと仲間を見つけていきたい。そして、自分の理解を深めるきっかけにしたい。それで、自分の情報

    • サイエンスと経済をつなぐ

      アラヤで目指しているものは何か アラヤという会社で、何を実現しようとしているのか。自分の中では一貫したイメージがありつつも、なかなか表立って言えずにきた。それでも、ずっと隠せずに自分の本心と思うところを言語化したものが「サイエンスと経済の融合」という表現だった。こういう目標は、投資家などにとっては、儲かるイメージも湧きにくいだろうし、嫌がる人もいると思い、ある面では一貫してとってきた態度でありながら、あまり安易に言えない空気の中で生きてきた。 しかし、自分の心の芯の部分と

      • 夢モードBMIというアイデア

        現在のBMIでは脳への高精細な情報入力ができない ブレインマシンインターフェイス(BMI)への期待が高まっている。NeuralinkやSynchronのようなBMI企業もでてきている。脳の活動データから情報を読み取る技術は、計測の観点でも、読み取りの機械学習部分においても、技術は今後どんどん伸びていく見込みがある。 一方で、脳に情報を書き込む技術というのは、まだまだ既存の技術の延長で精度の高いものが生まれてくる感触がない。脳とインターネットを繋ぐようなことを想像すると、現

        • クオリア主義という考え方

          この頃、自分の中で「クオリア主義」と呼んでいる思想が芽生えつつある。これは、学術的に定義された考え方ではなく、個人的に子供のころから感じていたことに名前をつけたものだ。少しだけ言語化できそうだから説明を試みてみたい。 クオリア主義とはクオリア主義とは「世の中に存在すると信じられている価値は実は幻想で、突き詰めて考えると価値は自分自身の意識の体験しかない」ということだ。 クオリア主義というのは、社会の中の多くの価値は本質的にはフィクションで幻想に過ぎないのだが、クオリアはリ

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        意識から情報へ

          孤独について

          なぜか突然、孤独と向き合うことについて書きたいと思った。孤独を感じているというわけではない。むしろ、孤独に戻れない環境に身をおいていることで、孤独を懐かしんでいる。孤独というのは、ある種のタブーで、自己主張と相反する。 孤独は、多くの人が体験している。「寂しい」という感情とは少し違う。 大きな夢を持つと、孤独と共存することになる。例えば、研究者になろうと思った人は、多かれ少なから同じような経験があるかもしれない。たぶん、研究者だけでなく、多くの分野で、何かにとりつかれた人

          孤独について

          自由について思っていたこと

          子供の時から自由が好きだった。これまでの人生を振り返っても、自由を求めてずっと生きてきたような気がする。でも、その自由とは何かという概念は曖昧で、大人になった今でも、自己と社会の関係において、自由の概念は更新され続けている。 好きなことをして生きる自由子供のときに最初に知った自由は、「好きなことをして生きる」という意味での自由だった。大人になったら、多くの人は会社で働いて、別に好きでもないことをして生きていかないとならない。そんな風に人生の大半を過ごしてしまうのは、つまらな

          自由について思っていたこと

          アカデミアから起業した理由

          今から、6年位前に、イギリスのSussex大学でReaderという聞き慣れない大学教員のポジションを辞職して、株式会社アラヤを立ち上げた。 それ以来、幾度となく「なぜアラヤを始めたのか?」と尋ねられてきたし、会社を紹介する場面では説明を試みてきた。 研究が何よりも中心の生き方をしてきたのに、大学での研究職をやめてスタートアップを始めるというのは、何か特別な理由があるのだろうと思われるのかもしれない。あるいは、会社を作るっていうのは、人それぞれ動機があり、興味深い話が聞ける

          アカデミアから起業した理由

          AIブーム終焉の意味するところ

          この前の日経の記事でプリファードの西川CEOが「AIブームはもう終わる」と発言していたのが、とても象徴的なできごとだと感じた。AIブームが終わるというのは、誰もが分かっていて、話題にも良くなっていたが、AIに直接関わっている当事者としては、言い出しにくい雰囲気があった。

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          AIブーム終焉の意味するところ

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          人工意識について(3):機械の意識を証明するには?

          前回は、人工意識の問題は2つあり、1つ目は「実装すべき意識の機能とは何か?」という問題だった。今回は、2つ目の問題について書く。 人工意識の問題2:機械に意識のあることをどうやって証明するのか? 意識の機能を明確にして、それを機械に実装できたとしても、それに本当に意識があることを証明することはできるのかという問題がある。たぶん、この問題があるから、そもそも人工意識ってものを考えても無駄だと思っている人もいるのではないかと思う。 結局、「機械の意識」はハードプロブレムだ。意

          人工意識について(3):機械の意識を証明するには?

          人工意識について(2):実装すべき機能は何か?

          意識の話は、どこまでいっても現象的意識とアクセス意識の間をいったり来たりしてしまう。人工意識についても、まさに現象的意識とアクセス意識の問題に突き当たる。 今回は、自分が勝手に名付けている「人工意識の2大問題」について、その1つ目、イージープロブレムに対応する問題について書く。 人工意識の問題1:実装すべき意識の機能とは何か? 人工意識の問題の1つ目は、そもそも、何を作ったら良いのか?という問題だ。人工意識というと、AIが主観的感覚を持つのかということを真っ先に考えがちだ

          人工意識について(2):実装すべき機能は何か?

          人工意識について(1):2つのメリット

          実は、人工意識をつくることを目指している。 こう聞くと、何かとんでもないことをやっていると思われるかも知れない。でも、実のところは、人工知能や人工生命が本来は知能や生命の理解を深める学問であるように、人工意識というのは意識を理解するためのアプローチだと思っている。 人工的に意識を構築するというやり方を考えることには、従来のニューロサイエンスによる意識を研究では得られないメリットがあり新しい視点をもたらしてくれる。そのメリットとは次のふたつ。 1.観念的な概念の数理的な具

          人工意識について(1):2つのメリット

          意識から情報へ(続き)

          前回、研究の興味が、情報という概念にシフトしてきたということを書いた。そして、とても気になっている情報に関する問題、いわば研究テーマの概要を4つ書いた。 でも、まだ書ききれていない、さらなる疑問がいくつかある。今回は、それらについて追加で記しておきたい。 問題5:目的とはなにか? 決定論的なダイナミクスを仮定すると、各時間において、過去の状態を変換させる時間遷移が起きていくだけで、そこには「目的」という概念はない。 人間の視点では、あるシステムが目的に向かって行動を選択

          意識から情報へ(続き)