記事一覧
事実ーanotherー
◯本編
少しだけ早く生まれた。少しだけ苦労が多かった。少しだけ私たちは顔が似ている。夢中にならないように互いに距離をとっていた。でもだめだった。何かがひっぱりあった。その何かとは生まれた時の星の運命のようなものだと思って占いに頼ったけれどそれらしい結果は得られなかった。
私たちが惹かれあったのは一体何だったのか。私は毎日それについて考えを巡らせている。運命という言葉ではこの頃落ち着かなくなってし
事実ーノンフィクションー
○本編
私は何も知らなかった。本当に。彼の存在も彼が何者なのかも私は何も知らなかった。だから急に長い爪で引っ叩かれたときには驚きのあまり言葉を失った。何がどうなっているのか判断がつかなかったのだ。
世界が知らない間に回っていた。
「邪魔するな!」
という金切り声の意味がうまく飲み込めなかった。なぜなら私は彼の何者でもなかったからだ。つまり私と彼は他人同士だった。
事実-another-
〇序章
冷たいお水を口に含みそこから10秒。口腔内を冷やすように滞留させる。舌の上、舌の裏、歯茎、喉の奥。キスの順番で口の中を冷やしていく。キスの後に口を冷やすのは昔からの私の癖だ。見抜いた目をするanother*story
知っているのか知らないのか確認を取るつもりはない。確認を撮ったところで何も生まれないし、逆に何かが死んでしまうと思っているから。すでに私たちの歴史はそこまで進んでしまっている
事実ーノンフィクションー
〇序章
私と彼には共通点がある。15。
私たちのことを知りたいという人がどれくらいいるかはわからないけれど、私たちのことを書かずにはいられない。私たちは15の中に抱かれた運命の相手だった。
あなたの明日でいさせてと懇願したのはどちらからだっただろう。愛しているとささやくこともメッセージも欠かさずに伝えているはずなのに、一人で眠る夜は独り言のように互いの名前をつぶやきながら、泣きながら眠ってし
マルスとリリス2<※臨床済み>
リリスに憧れたマルスだがすぐには行動には移さなかった。なにせ相手はルシファーに惚れこんでいるリリスである。自分の片思いが成就するなど夢にも思わなかった。それにホワイトムーンと言われる第七階層随一のうるさ型であるアポロンもリリスを狙っていたし、誰より一番の難敵はケンタウロスに似たカイロンと言われる賢者だった。カイロンはリリスの痛みをすぐに見抜きその瞬間だけ寄り添うように魂に自分を重ねる。
賢者ではな
From Buenos Aires2
薔薇の花束を差し出して、跪いて「will you marry me?」
映画では幾度も見ることができた。イヴァンの懇願の目が私を困らせる。No
とは言えない雰囲気だった。
私が彼にはっきりできないのは彼が何を考えているのかいまいちつかめないところだった。また、こんなに性急に異国のどこの馬の骨ともわからない女に求婚するなんて何かあるに違いない。最悪何もなくてただ純粋に好んだとしても、いったい何がよか
From Buenos Aires
ジプシーなの。
私は彼にそう挨拶した。どこまで彼が本気にしているかはわからなかったけれど、「ok」とだけ言った。
何が了解事項だったのかはわからない。でも、ただ「ok」とだけ言って私を抱きしめようと試みた。彼は最初からそうだった。すぐに急いてくる。私のタイミングなんかお構いなしだった。異国の香りはどことどこのミックスなの?という問いからはじめた。彼がどこにも属していないような雰囲気を見抜いたの
ゴシップ1<マルスとリリス1>
火星を収める軍神マルス。彼は前進あるのみ、後退はないと言い切る闘将でもある。闘将の気高い品性に対して、男らしいとあがめているのは若いキューピッドたち、危なっかしいと自分の手元に住まわせようとするのが熟れたヴィーナスたちだった。
マルスの魂は辟易としていた。毎日同じことの繰り返しで、魂を震わせるような交わりがない。単調で平坦で、自分が軍神であるのに、それさえも忘れるほどに平和な日々。
男を自認する稀
第七階層のゴシップニュース創刊
雌を勝ち取った天使が悪魔と呼ばれ、奇しくも雄しか得られなかった天使が天使と呼ばれたことは先にも述べた。
天使が地球上でもてはやされているのは、秩序を重視した神のご計画だったわけだが、第七階層の天国では今もなお天使たちの性交が神の頭を悩ませていた。
人間たちに伝えてしまえばそれがまるで免罪符になってしまうような第七階層の天国での性交の話をここでは記事として伝えていこう。
ゴシップのようでありな