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事実ーノンフィクションー

〇序章

私と彼には共通点がある。15。

私たちのことを知りたいという人がどれくらいいるかはわからないけれど、私たちのことを書かずにはいられない。私たちは15の中に抱かれた運命の相手だった。

あなたの明日でいさせてと懇願したのはどちらからだっただろう。愛しているとささやくこともメッセージも欠かさずに伝えているはずなのに、一人で眠る夜は独り言のように互いの名前をつぶやきながら、泣きながら眠ってしまう。恥ずかしいから照れ隠しに正直に白状したら彼もそうだと照れ笑いした。だから私たちはあなたの明日になれていたんだね!とその日を記念日にした。今年の6月だったように思う。日にちは定かではないけれど。

出会ったのは昨年の晩夏と初秋ごろ。昨年のクリスマスには互いに祈りあっていた。互いを知らずに互いを求めすぎてすれ違ってしまったらしい。私たちの物語が私の離婚と同時にはじまったことには驚きを隠せない。私が離婚した直後、彼は友達から私のことを聞いたらしい。実際に私を見たのはきっとハロウィンだったのだろう。10月31日。
入れ違いのような出会いに私は息をのんだ。
ひゅうと息をした。肺が壊れてしまったように、私は彼と出会うと息ができなくなる。肺胞が壊れる肺気腫は肺胞に空気がたまった状態になり収縮されなくなるから広がりっぱなしになり、心臓を圧迫したりして息苦しくなるらしい。
私にとって彼は肺気腫のように何もかもが体に蓄積してしまうような存在だった。声も存在も体温も視線も。保持したいから壊れてしまったのか、壊れてしまったから保持するようになったのか自分の体でもわからない。どちらにせよ麻薬のような存在だった。実際彼と出会って私は煙草を覚えた。彼が教えてくれた。ニコチンが含有されていないからと吸ってみたら、私は煙草に陶酔するようになった。吸っている自分の姿に酔いしれたなんて、中学生みたいだと思ったけれど、そう笑う私を愛しそうに見つめほほ笑む彼がまた好きになっていった。

私を守るという言葉にいつも嘘偽りはなかった。言葉と行動力であれば、言葉に対して行動力は3割増しで動いてくれた。仕事が忙しいと弱音を吐くことはない、ただ仕事に関しては「君がいるから頑張れる、いてくれてありがとう」と言う。
弱音を吐いてくれないことに文句を言ったこともあった。それでも彼は笑った。結局今の今まで弱音らしい弱音を吐いたことはない。

抱いてくれたことは一度や二度ではない。何度私の心を抱いて寝てくれたかわからない。この一年、泣いた夜の全てに彼がいた。そっと寄り添ってくれた。言葉もなくただ体温で私の心を温めた。
冷たい印象が先行して私は彼が最初のころ苦手だったけれど、よく笑うようになった。彼がよく笑うようになったことは私にとって何よりの大きな勲章でありトロフィーであった。
今日はとりあえずここまでに。序章だから。
仕事をしたいからと先に帰ってもらった。サプライズだから事情も言わずに。彼が待っている、早く帰らないと。


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