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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2022年11月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#90

第五章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行惑星調査員ウリエルの現地報告1

荒魂よ…

また、空を見ているのか?

俺が物心ついた頃から見ている夢。もう一人の俺、「荒魂」が天の川広がる夜空を見ている。

腰まで届く銀色の髪をたなびかせ、服装は博物館で見た弥生人のような白い古代服。

足元は草原が広がり、草いきれがいやでも鼻腔に入って来る。

成長してみて分かったが、夢の中の荒魂は、俺とまったく同

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電波戦隊スイハンジャー#91

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行惑星調査員ウリエルの現地報告2

この国の中には、古(いにしえ)の日本を再現した「夢の国」があるらしい。

読者の諸君、私の名は大天使ウリエル。

地球の中では「破壊天使」などと不名誉な呼ばれ方をしているが、この際旧約聖書で得た微小な知識などはかなぐり捨てて欲しい。

伝説の中に事実など、ほとんど書き残さないのが人間という生き物なのだ。

私の主な活動は

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電波戦隊スイハンジャー#92

第5章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行惑星調査員ウリエルの現地報告3

人の子よ

これから私が話す事は荒唐無稽なお伽ばなしと聞き流してよい

もう3000年以上も前の事だから

「高天原族はこの地球から3億光年離れた銀河、NASAがArp 273と呼ぶ地点からこの国に飛来した一族…私が知る限り宇宙最強の戦闘民族である。

最盛期には30星系を支配下に治めた。知力、文明、ヒトとしての進化の最

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電波戦隊スイハンジャー#93

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行いなおり鉄太郎1

「えーっ、この人が聡介先生のじいちゃん!?」

2013年8月16日の夜、藤崎光彦少年は野上鉄太郎の幽霊を指さし、明らかに腑に落ちないって顔をした。

だって全然年寄りみたくねーじゃねーか!

「まあ生きてたら102だけどよー、死んだら心の年齢ってやつ?30の頃に若がえっちまったい。はっはっはっはっは!」

と鉄太郎は正嗣がくれたあず

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電波戦隊スイハンジャー#94

第6章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行いなおり鉄太郎2

黒たまごなう。in箱根。あと一泊してから帰りまーす。

と兄啓一と兄嫁の菜摘子、姪っ子の菜緒がそろって箱根大涌谷名物の「黒いゆで卵」を上半分だけ殻を向いてふざけてぱくついているほのぼの写メを眺めながら

野上聡介は、思った。

こういう時、つくづくと…あー嫁さんと子供が欲しい!!今彼女いないけど。

あー、新婚レッド隆文うらやましー!

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電波戦隊スイハンジャー#95

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行いなおり鉄太郎3

「そういうマリ達こそ何してんのさ、高校受験生がデートとは随分余裕ぶっこいてんじゃね?」

瑞樹がまあ座れよ、と自分の隣の席に16才年下の妹毬を、聡介の隣に、光彦を座らせた。

ち、ちげーよ姉ちゃん!と慌てて否定する毬を見て聡介は、ムキになる様子が可愛い。青春っていいなぁ…ととうに過ぎた季節を懐かしんだ。

「終業式の日に約束してたんだ

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電波戦隊スイハンジャー#96

第六章.豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行いなおり鉄太郎4

2003年8月13日の夜である。

野上鉄太郎は書斎の末孫の聡介を呼び出していた。

「明日は朝5半に着替えて道場に来い」と伝えてくるりと背中を向けた。

いつもは6時から朝稽古が始まるのだけど、念入りに稽古をつけたい時に開始時間を早めるなんてよくあった事だから、聡介は特に気にもしていなかった。

「はい」とだけ答えて聡介は出て行った

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電波戦隊スイハンジャー#97

第6章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行フレグランス1

俺が物心ついてからの父親の記憶は、あまりない。

だがすごく小さい頃、自宅の縁側でうたた寝をする男の寝顔が妙に美しかったのは覚えている。

3月のある日、まだ冷たい春風の気まぐれで桜の花びらがたくさん顔に降りかかっているのに男は微動だにしなかった。

近づくのさえも恐い程の静謐が男を覆っていた。

子供心に触れてはいけない恐怖を覚えて、

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電波戦隊スイハンジャー#98

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行ケール畑でつかまえて1

「見て下さいサトルさま、こーんなに大きなケールが採れましたよ」

西園寺真理子は青々とした巨大なケールを両腕で抱えて汗ばんだ顔に溌剌とした笑みを広げた。

「ああ、僕がブレンドした土はミネラル豊富だから、通常のケールよりは苦味もえぐみも少ない」

8月19日の午後3時。悟と真理子は勝沼家が所有する広大な家庭菜園、

通称「サトル

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