イツキ 彩

日常の出来事をヒントに創造を/主に短編小説、SS、エッセイを投稿/小説、漫画、アニメ好…

イツキ 彩

日常の出来事をヒントに創造を/主に短編小説、SS、エッセイを投稿/小説、漫画、アニメ好き/バレー好き/家庭的な料理好き/旦那&娘小5&息子小3の4人暮らし/IT企業で時短勤務/in日本海側/Twitterでも日常をポロッと/icon from @kotani_shio

マガジン

  • 短編小説と呼ばせて

    2,000文字程度の作品です。短文で読みやすく仕上げています。

  • 私の周りのあれこれそれら

    日常から切り取ったこと、頭の中をエッセイにしています。

  • ショートショートみたいな

    1,000文字以内の作品です。気軽にさらっと読めます。

  • 長編小説には及びませんが

    連載小説です。・僕の気になる彼女は・私が気になる彼は

最近の記事

3月:ママが教えてくれたいちご餅【短編小説】1400文字

「やっぱり、出れなかった・・・」 ママの白い軽自動車の助手席に座ってドアを閉めると、外で同じく卒団する子たちの騒いでいる声が遮断されて、つい本音がこぼれた。 他の親たちや監督に挨拶していたママがもう隣にいるなんて、見えてなかった。 「まぁ、しょうがないけどね!うちら6年生多いもん。ピッチャーとキャッチャーは上手な5年生コンビだし、卒団試合だけどその交代は無理!いつもみたいにベンチ3人で声出しの方が思い出あるし!」 ママはちらっと優しく私を見て、シートベルトをつけて車を走らせ

    • 3月:エクレアまでの階段は続く【短編小説】1200文字

      「いってらっしゃい。では、お願いしますー」 「はーい。いってきまーす」 9時半。 幼稚園バスに子供が乗り込んだのを笑顔で見送る。 入園した頃は、家を出る直前に行きたくないと暴れて遅れそうになったり、スムーズに家を出たかと思えばいざバスに乗る時に大泣きしたり、同じバス停から乗る他の園児のママさんたちの視線が痛かった。 「かわいいねぇ」「うちもそうでしたよー」なんて言われても、こっちはどっと疲れる。 本当にそうだったの?いつから笑顔で手を振ってバスに乗って行くようになりました?

      • カレーで表現する私の愛情【エッセイ】1400文字

        私が作る定番のカレーは合いびき肉のカレーです。 キーマカレーじゃないんです。 どろりとしたルーのカレーです。 子供から保育所のカレーはおいしいと、私が作ったカレーを食べながら言われたこともありますが、みんなおかわりしてたくさん食べてくれます。 たぶん、子供が1歳の時から合いびき肉でカレーを作っています。 その前はどうだったかあまり覚えていないほど、私の中で「カレーのお肉は合いびき肉」が定番になっていたのです。 1歳ぐらいはまだお肉が上手に嚙み切れないので、ミンチ状のお肉は子

        • 2月:いつの間にかあなたのためにクッキーを【短編小説】1300文字

          「お疲れ様です。どうぞこちらにおかけください」 怪我人の手当てをするわけでも、ましてや実験をするわけでもないのに、私は白衣を着ている。 10畳程の会議室を借りて、ダイニングテーブルのようにくっつけた机の上には薄い水色のテーブルクロスをかけている。 邪魔にならないように飾られた花は今朝買ってきたピンク色のガーベラだ。 「お疲れ様です。よろしくお願いします」 彼が椅子を引いて座ったので、電気ケトルで沸かしておいたお湯をティーカップに注いだ。 「ストレートでいいですか?今日のクッ

        3月:ママが教えてくれたいちご餅【短編小説】1400文字

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        • 短編小説と呼ばせて
          44本
        • 私の周りのあれこれそれら
          59本
        • ショートショートみたいな
          17本
        • 長編小説には及びませんが
          11本

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          2月:フロランタンは時を越えて【短編小説】2200文字

          「前から・・・綺麗な人だと、思っていました」 真っ直ぐに私を見つめるヘーゼルアイは、いつの間にか夜空に溶け込む深いグリーンに見えるようになっていた。 はっきりと発音されたその言葉は急速に私の鼓動を早めて、8年間が埋まっていく。 紅葉したミナヅキが入荷し始めた10月頃から、毎週火曜日の閉店間近に彼を見かけるようになった。 遅い時間に学生が花屋を覗いているのも珍しいが、それよりも彼の容姿に目が奪われる。 夜風にサラッとなびくブラウンの髪に、つぶらな瞳はヘーゼルアイだ。 最初は遠

          2月:フロランタンは時を越えて【短編小説】2200文字

          2月:祝福のシュークリーム【短編小説】1300文字

          「好きだよ」 桃色の唇がうっすらと開いた。4文字で蕾が花開くような、甘い囁き。 あぁ!この気持ちをどう伝えよう。 どう言えばこの想いがちゃんと届くのか、願わくば相手の心に響いて揺らいでくれるような。 やっぱり、頭で考えるより、ストレートなこの言葉には叶わない。 「私も・・・好きです」 先輩の顔を直視することができず、二人の間にある雑誌に目を落とす。 午後の勤務開始まであと5分。 この季節には珍しく太陽の光がカフェスペースいっぱいに降り注がれて、窓際の席に座っている先輩の細く長

          2月:祝福のシュークリーム【短編小説】1300文字

          1月:炊き込みご飯より愛を込めて【短編小説】1200文字

          「せっかくだから、お父さんが作ったやつ、食べたいな」 年に一度の帰省した娘に言われたら、ただBGMとしてつけているだけのテレビから目を離し、カップに半分残ったままの冷めたコーヒーを飲み干し、もう買い替えることのないソファから腰を上げることなど、容易いものだ。 「ん」 夕飯には十分間に合う時間だ。 「じゃあ、お願いしますね」 妻はいつもの3倍はあろう新聞の類を、猫のように床に丸くなって、めくった。 冷蔵庫の中は隙間を見つける方が難しいくらいに込み合っている。 スーパーで買った

          1月:炊き込みご飯より愛を込めて【短編小説】1200文字

          圧力鍋が怖いなら、電気圧力鍋を使えばいいじゃない【エッセイ】1300文字

          圧力鍋が怖いんです。 何故かって?自分でもよくわかりません。 そもそも圧力鍋は使ったことはなく、母も持っていなかったので、身近な人が使っているのを見たのは義母が初めてでした。 でも、その頃には既に「圧力鍋は使い方を間違えると爆発するモノ」という観念が定着していました。 微かな記憶では、母が圧力鍋のことをこんな凶器のように言っていたような気がします。 また、母は料理上手なのですが揚げ物はほとんど作らず苦手だと言っており、それも私の揚げ物料理をするのが苦手となる意識に繋がっている

          圧力鍋が怖いなら、電気圧力鍋を使えばいいじゃない【エッセイ】1300文字

          1月:シンお雑煮【短編小説】1400文字

          離婚をするなら12月と決めていた。 否応にも清々しさと、気持ちを新たにさせようとする風がどことなく吹く1月。 ズルズルと余韻を引きずるのは好きじゃない。 パッと結婚したように、パッと独身に戻ろうと思った。 住んでいたのは彼名義の部屋だったのでちょうどよかった。 既に新しい部屋は借りていたので、有休をつかってコソコソと荷物を運んだ。彼は本棚からごっそり本が無くなって部屋に穴が開いていようと、服が減ってクローゼットの中の見晴らしが良くなっていようと、何も尋ねてこなかった。 お互

          1月:シンお雑煮【短編小説】1400文字

          ついに!娘に出会いが訪れた【エッセイ】1500文字

          子供には良い出会いに恵まれて欲しい。人、物、体験。 親が良いと思うこと。子供自身が好きだと思うこと。 ぴたりと一致することはなくても、親が勧めたものを「うーん、ちょっとなぁ」とか「いいね!」とか感じてくれて。 そこからの付き合い方は、子供が決めればいいかなと思っています。 と言いつつ、ついつい自分の好きなものを勧めちゃってます。 アニメのハイキュー!!は確か娘が小1ぐらいの時に勧めたけれど、その時は響かず。 小3になってバレーボールをやっていることもあり再度勧めたらどハマり

          ついに!娘に出会いが訪れた【エッセイ】1500文字

          幸せ おすそわけ【短編小説】1200文字

          「ちょっと!それどうしたの?テニスボール・・・ん?」 リビングで英語の参考書を読んでいると、お母さんが、今は購入しないともらえない貴重なスーパーのビニール袋を両手で持って、現れた。 「おばあちゃんのとこの柚子よ。ほら、高い所はおばあちゃん取れないから」 車で30分ぐらい、家の周りは田んぼか畑のTHE田舎に、私のおばあちゃんは一人で住んでいる。 晴が東京の大学に決まって家を出る時、私たちと一緒に暮らす話も出たんだけど、おばあちゃんにははぐらかされた。 「柚子の木だってまだ元気。

          幸せ おすそわけ【短編小説】1200文字

          好きなもの 気になるの【短編小説】1300文字

          つやつやしたイチゴが真っ白なお城に鎮座しているようなショートケーキ。 月の光が水面に映り込むように滑らかなグラサージュのチョコレートケーキ。 丸いフォルムに沿うように流れるクリームで守られているモンブラン。 妖艶なダンサーが踊るベリーケーキ、南国の王族に控えるマンゴームース、一瞬で京都にトリップする魔法の抹茶ケーキ。 ケーキ屋のショーケースは宝石箱というより、私にとってはカラフルな図書館かな。 「真理、決めた?」 「うん、決まってるよ。晴香は?」 「うーん、やっぱここのスポ

          好きなもの 気になるの【短編小説】1300文字

          悲鳴が聞こえて、お風呂屋さんへ【エッセイ】1300文字

          我が家の築年数は十年以上です。 中古で購入して約七年。元からあった設備がいつ悲鳴を上げてもおかしくない状態ですが、悲鳴が聞こえるまで事前に私たちにできることはたぶんなく、その時が来たら対応しようと思っていました。 そして、まずは小さな悲鳴が聞こえました。 「シャワーのお湯が熱いよ」 子供たちと一緒にお風呂に入っていた旦那が言ってきました。 旦那がまだ服を脱いでいるとき、先に入っていた娘がシャワーを出したのですが、熱くてきゃあきゃあ言っていたと。 子供たちは熱さに敏感なので、

          悲鳴が聞こえて、お風呂屋さんへ【エッセイ】1300文字

          ママの秘密【ショートショート】900文字

          エマには秘密がある。 保育園で一番仲の良いお友達のアリスや、大好きなケイト先生にも言ってはいけない。 「もしバレちゃったらお引越ししなきゃいけなくなっちゃうかも。そうしたら保育園にも行けなくなっちゃう。」 ママの秘密は誰にも言っちゃいけない。 エマはいつもママと一緒だ。 朝起きると隣にはママが寝ている。ママが寝ているからまた安心して眠る。 次に起きる時は、優しいママの声で目覚め、リビングに向かうと毎朝違うアロマの香りに包まれる。 二人が離れるのは保育園の時間だけ。 寝る時も

          ママの秘密【ショートショート】900文字

          キャンプ・トラップ【ショートショート】1000文字

          ありがとうございました~。 あ、笹さん、私、フライヤーやっておくんで上がってもらっていいですよ。すみません、延長してもらって。 「あぁ、いいよー。どうせ帰ってもテレビ観て飯食うだけだしねー。亜希ちゃん、週末行くの?天気もちそうだね」 そうなんです~、ほんと良かった!実習も終わったんで自然の中でリフレッシュしてきますよ~。 「今回も一人?女の子一人だと怖くない?」 うーん、あんまり思ったことないですね~。私が行くとこって山の中って感じじゃないので。離れたところに家族連れがいたり

          キャンプ・トラップ【ショートショート】1000文字

          キャラメル・トラップ【ショートショート】1100文字

          数学の授業中、前の席の島田くんの頭が右に傾いて倒れていくかと思ったら、急に立て直してぐるりと左に回転した。一瞬目が合った。 黒いリュックをあさって、今度は上半身ごと左に回転するとあたしの机の上に小さな箱をこつんと置いた。 「咳、辛かったら、どうぞ」 返事をする間もなく島田くんは前に向き直って何かを口に入れ、また数学の授業に戻っていった。 合服のベストに慣れたかと思った次の日には仕舞ってあるカーディガンを探すけど見つからない。布団を出すのが億劫でタオルケットにくるまって寝よう

          キャラメル・トラップ【ショートショート】1100文字