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エッセイ | テレビボードに隠れていた

自分の家に居ても落ち着かない時がたまにある。何をしていてもダメで、ソワソワする。

エッセイを書こうか? いや、言葉を選ぶ余裕がない。
テレビを見ようか? ダメだ、じっとしていられない。
散歩でもしようか? それは暑いから嫌だ。

わがままな私は何もしたくない。このソワソワと向き合っているしかないのだろうか。

部屋の中を歩き回り、扉を開けたり閉めたりする。収納の扉を開けた時に、長い間使用していなかった掃除道具が目に入る。
「……掃除でもしようか」


普段はロボット掃除機が私の部屋を掃除してくれているのだが、彼にも掃除のできる限界がある。

部屋の隅には手が届かないし、空気清浄機の後ろ側やサイドテーブルの下は狭くて入れない。

玄関付近は段差があって危険なため、私は彼が進入できないように設定している。そのため不可侵領域となっている玄関はホコリがたまりやすい。

まずはそういったところをハンディモップでキレイにすることにした。静かな空間で掃除するのは嫌なため、ラジオを聞きながら作業をする。


ロボット掃除機が掃除をできないエリアをキレイにした後、私はテレビボードの上やテレビにかかっているホコリをとっていく。

以前からうっすらとあるホコリが気になっていたのだが、気が乗らずに今日まで放置していた。今日でこのホコリともお別れかと思うとなんだか感慨深いものがある、なんてことはない。

ホコリをとり終え、テレビボードを眺める。キレイになっている。そういえば、このテレビボードには収納が付いている。テレビボード全体を3分割するように前方の扉を開けることができるのだ。


何をしまっていたのか気になり、右端の扉を開けてみる。そこには引っ越してから使用しなくなった家電類が入っていた。「懐かしいな」と思いながらも使用できていない状況に少しだけ罪悪感を覚える。

真ん中の扉を開けると、購入しているガジェット系の空箱が入っていた。使用感が良くなければ売るかもしれないと考え、空箱もとっておいたのだ。恐らく売ることはないのだけれど、なかなか捨てるには勇気がいると思い扉を閉める。

最後に左端の扉を開くと、そこに入っているのはほとんどゴミだった。壊れたハードディスクや、もう使うこともない小型スピーカー。ティッシュボックスケースなんかもしまわれていた。

恐らく引っ越してきた時に捨てるのが面倒で、ここに隠しておいたのだろうと思い、いい機会だからと引っ張り出して捨てることにした。


何かを捨てると、それと一緒に他の物も捨てたくなる。私は他の収納にも目を向け、不要な物を手当たり次第に取り出した。不要な物がごみ袋にたまっていくのは気持ちがいい。

その日の成果としては、捨てる物はあまり多くなかった。棚や収納がスッキリしたというほどまでは達していない。

本当は「スッキリした!」と思えるくらい捨てたかったのだが、定期的に断捨離欲が湧いてくる私の住む部屋には、あまり不要なものがない。

気付くとソワソワと落ち着かない気持ちはどこかに消え去っていたが、今度は「何かを捨てたい」という衝動が強く残っていた。



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