月の影
あたたかな日の温もりと氷のような君の指先
絶え間なく流れる薄暗い血が、
今、ここにいることの唯一の証明だ
途切れ途切れのレコードと心を揺さぶるような針
部屋を満たす張り詰めた空気が、
僕の意識を鮮明にさせていってくれる
こげ茶色のキャビネットに並ぶビスクドールたちは
そのドレスを翻し、色褪せた瞳で君を見つめていた。
透き通る水に沈んでしまったように、
たゆたう月明かりと明度の低い青
君は無造作に、ガラス細工のバラを握りしめる。
救いのない月の光と氷のような君の心臓
冷めきった紅茶の中に、バラの破片は沈んでいく
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