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〜 ねぇ?聞いて? 〜




物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 ねぇ?聞いて? 〜


広がる砂浜には、白い貝殻が、あちらこちらに落ちている
広く深い静かな海から押し寄せる波に乗って、どこからかやってきたのだろう
荒れ狂う先日の嵐とは打って変わって、静かに穏やかに波は、同じ形をすることなく波打ち際を白くする
·
海から出てはいけないとあれほどまでに言われていても、恋い焦がれる人間の世界はいつも美しく、私の心を掴んで離さない
そして出逢ってしまった君を想うと、心が恋しく苦しく締め付けられる
『会いたい』
そう呟く私は、海岸にある岩場へと身を預けていた
もたれていた岩場に両手を付き体を陸上へと引き上げる
ザバッと上半身から勢いよく滴り落ちる海水は、鱗をまとう滑らかな魚の尻尾のような下半身へとつたう
ゆっくりと岩場に腰を下ろす
物思いに耽る儚げな表情に、きめ細かい透き通るような白い肌、その下でキラキラと煌めく鱗が、まだ朝日が顔を出す前の薄暗い景色の中で、人魚姫という神秘さをより引き立ている
『あの人は今頃何をしているのかしら』
ふぅっと物憂げに吐くため息は、私の心をより締め付ける
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海辺にある白い大きなお城
いつか行ってみたいと思っては、何度も海の中から見上げていた
あの日は、お城の近くにあるこの岩場へ初めて訪れた日
どうしても近くで見たかった私は、こっそり出掛けたのだ
初めて間近で見る憧れのお城から、歩いてくる人影にビクビクしながら、私は息を呑んだのを思い出す
恋に落ちるのは一瞬で、ハッと、ひと目見た瞬間に打ち砕かれる
ドキドキが止まらなくて思わず海の中へと引き返した
その後、何度かお城へ行き、たまに見かけるあの人に目を奪われる
これが恋だと気が付くのは容易いことで、人間界へ行きたい気持ちがより膨らむ
どうすることも出来ない私は、こうして遠くからいつも見つめるだけ
いつか話をしてみたい、一緒に笑い合いたい
そう胸に抱いて、時は過ぎる
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ゆっくりと岩場に腰を下ろした私は、もうすぐ顔を見せる太陽に向かって想いを歌に乗せる
『会いたいの
一目合ったあの日から
気持ちはあなたの元へ
声を聞かせて、笑ってみせて、どうかお願い
決して手の届くことがないあなたへ、この気持ちを届けたい
私の想いは一つだけ
あなたに焦がれ恋して胸が苦しくとも
それでもあなたを想っています
あなたを想う日はないくらい
愛おしく狂おしいこの気持ち
ねぇ?聞いて?私の声を
ねぇ?聞いて?私の想いを
ねぇ?聞いて?どうかお願い』
少しずつ明けてゆく朝に、優しく切なげに照らされる
想う気持ちは海の波と共に砂浜へ
いつか本当に出逢える日が来るまで胸に秘める
夜が明ける少し前の砂浜で、いつもこの歌を聴いている人がいる事を知るのは、いつの日になるだろう
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ねぇ?聞いて?
大好きなこの想いをあの人に
ねぇ?聞いて?
この歌声の君を想う僕の気持ちを
ねぇ?聞いて?
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今日も静かに波の音だけが、砂浜に響き渡る
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