マガジンのカバー画像

映画批評

29
運営しているクリエイター

記事一覧

『関心領域』批評

『関心領域』批評

本当に久々の更新になってしましました。死んだのか?って思われるレベルに久しぶりです。すみません。今日は映画『関心領域』について書きたいと思います。

アカデミー賞国際長編映画賞、音響賞を2部門受賞した映画『関心領域』を新宿ピカデリーで観てきました。監督はジャミロクワイの『ヴァーチャル・インサニティ』のMVやスカーレット・ヨハンソン主演『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013)で知られるジョナサ

もっとみる
『ザ・クリエイター/創造者』批評

『ザ・クリエイター/創造者』批評

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督として有名なギャレス・エドワーズ監督の新作『ザ・クリエイター/創造者』を鑑賞しました。

ギャレス・エドワーズ監督はポストコロニアリズムが根底にある監督です。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』はアウトローたちが力を合わせて帝国に一矢報いる作品でした。今作も抑圧された人々の抵抗がテーマの作品であり、西欧諸国の人間たちがアジアに散らばるA

もっとみる
『君たちはどう生きるか』批評

『君たちはどう生きるか』批評

もう8月下旬なのに今年初めてのnoteの更新です!
実は下書きは少し書いていたのですが、多忙を極めているうちにネタが腐ってしまいました。。。

久しぶりの更新は宮﨑駿の10年ぶりの長編映画作品『君たちはどう生きるか』について書きたいと思います。
予告を一切打たないという前代未聞のマーケティング方式にも関わらず、公開初動4日間の興行収入は『千と千尋の神隠し』を超えるなど、大きな話題を呼びました。

もっとみる
月末映画紹介『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『愛なのに』

月末映画紹介『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『愛なのに』

久しぶりに映画について書きます。
お時間ある方は是非。

狂気の並行世界を生きる 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

量子力学には並行世界という概念があります。並行世界(=パラレルワールド)は今僕たちが生きている宇宙とは似て非なる無数に広がる別の世界のことです。
僕たちは常に大なり小なりありとあらゆることを選択しています。どんな仕事をして、休日はどこで何をして、誰と人間関係

もっとみる
アカデミー賞総括① ウィル・スミスビンタ事件と『最後の決闘裁判』

アカデミー賞総括① ウィル・スミスビンタ事件と『最後の決闘裁判』

長いこと仕事が忙しく、noteが更新できませんでした。
4月は少し余裕がありそうなので、毎週書いていこうと思います。

今回から3週かけてアメリカのアカデミー賞について個人的な感想を書いていこうと思います。
本当なら、受賞作についてだけ書いていきたいのですが、受賞作の栄誉を覆い隠すほど盛り上がってしまったウィル・スミスビンタ事件が起きてしまったので、それについて触れないわけにはいかないでしょう。

もっとみる
なぜゲームの実写化は失敗してしまうのか?

なぜゲームの実写化は失敗してしまうのか?

ゲーム誕生から一貫して失敗し続けるゲーム実写化『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』を映画館で観てきました。厳しい映画でした。あまりの厳しさにお手本のような苦虫をすり潰したような顔をしながら映画を観てしまいました。

思えば、ゲームの実写化というのはほとんど上手くいっていません。

古くは『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』『ストリート・ファイター』、21世紀に入ってからもミラ・ジョ

もっとみる
『フレンチ・ディスパッチ(略)』の話 

『フレンチ・ディスパッチ(略)』の話 

ウェス・アンダーソン監督の最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を鑑賞しました。

これはある視点から見れば、ここ数年で最も素晴らしいと思える映画でした。

ウェス・アンダーソン監督は、アメリカの映画監督で『ザ・ロイヤル・テネンバウムス』(2001)『ダージリン急行』(2007)『ムーンライズ・キングダム』(2012)『グランド・ブタペスト・ホテル』(201

もっとみる
絶品三つ星映画紹介〜壊れゆく世界を予言した怪作〜『ファイト・クラブ』

絶品三つ星映画紹介〜壊れゆく世界を予言した怪作〜『ファイト・クラブ』

兼ねてからずっと名作映画を紹介する記事を書きたいと思っていたのですが、タイトルが決まらず、なかなか書けずにいました。「名作紹介」だと味気ないし、「これ見ずに死ぬな!」は既になんかの連載であった気がするし。。。
結局タイトルが決まらずに書けてなかったんですけど、ミシュランにちなんで絶品三つ星映画なんてどうだろうと思い、今回初めて書き始めました。悩んだ割には微妙なタイトルだな、グルメ紹介するみたいだな

もっとみる
月末映画紹介『DUNE /デューン 砂の惑星』『ひらいて』批評

月末映画紹介『DUNE /デューン 砂の惑星』『ひらいて』批評

『DUNE /デューン 砂の惑星』は何が素晴らしく、何が嫌われてしまったのか
あらすじ
アトレイデス家の後継者、ポール。彼には未来が視える能力があった。宇宙帝国の皇帝の命令で、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる、過酷な《砂の惑星デューン》へと移住するが、それは罠だった・・・。そこで宇宙支配を狙う宿敵ハルコンネン家の壮絶な戦いが勃発。父を殺され、巨大なサンドワームが襲い来るその惑星で、全宇

もっとみる
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』批評〜過去作と共にクレイグボンドを振り返る〜

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』批評〜過去作と共にクレイグボンドを振り返る〜

映画史にシリーズ作品、007の25作目になる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が度重なる公開延期を経て、10月1日に公開された。実に1年半以上の公開延期を経てのファン待望の最新作であり、2006年の『007 カジノ・ロワイヤル』から今作含めて5作に亘ってジェームズ・ボンド役を務めてきたダニエル・クレイグのボンド役引退作です。
007を見たことない人にも伝わるように007シリーズと『007/ノー・

もっとみる
月末映画紹介『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『君は永遠にそいつらより若い』 批評

月末映画紹介『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『君は永遠にそいつらより若い』 批評

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』アジア文化の集大成
ディズニー+問題
MCU初のアジア文化映画作品。MCUは『ブラックパンサー』(2018)でアメリカ黒人社会の文化やアフリカの歴史を描き、『ブラック・ウィドウ』(2021)では女性を主演にした大作映画を製作した。『ブラック・ウィドウ』は DCEUの『ワンダーウーマン』(2017)に女性のスーパーヒーロー映画としては先を越され、構想の練り直しも

もっとみる
月末映画紹介『プロミシング・ヤング・ウーマン』『サマーフィルムにのって』批評

月末映画紹介『プロミシング・ヤング・ウーマン』『サマーフィルムにのって』批評

女にとっての地獄の悪夢とは? 『プロミシング・ヤング・ウーマン』あらすじ
30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそ

もっとみる
月末映画紹介『クルエラ』『くれなずめ』批評

月末映画紹介『クルエラ』『くれなずめ』批評

エヴァについて3つも記事を書いたので、他の映画見てないと思われたかもしれませんが、僕は映画廃人ですので、他にもいろいろ見ておりました。

今回は『101匹わんちゃん』の悪役クルエラをエマ・ストーンが演じた『クルエラ』と松居大悟監督の青春映画『くれなずめ』について書いていこうと思います。

今回もネタバレ全開ですので、鑑賞済みの方とネタバレ上等の方のみお願いします。

爽快な"勧善懲悪"映画『クルエ

もっとみる
エヴァンゲリオン批評③ 〜日本は「私」を獲得したのか〜

エヴァンゲリオン批評③ 〜日本は「私」を獲得したのか〜

庵野が「私」を獲得するための儀式の映画『式日』『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』は、シンジ、アスカ、綾波、カヲル、ゲンドウ、人類、使徒、90年代の若者たちすらも解放、救済し完結しました。
TV版、旧劇場版でエヴァが完結しなかったのは、当時の若者たちが「現実に帰る」ことを拒否したことが理由でした。だからエヴァは完結することが許されず四半世紀にわたって円環の物語を続けてきました。

つまり日本が「私

もっとみる