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効率的に退会を防ぐ最適な手法は「カスタマーサクセス」

「カスタマーサクセス」という言葉を知っていますか?

カスタマーサポートのことだよね?という方、残念ながらハズレです。SaaSやサブスクリプションでサービスを提供している方は知らないと、この先時代遅れになるかも知れません。

カスタマーサクセスは営業支援ツール(SFA)で世界的シェアを誇るSalesforceを中心として提唱されている概念です。一見するとカスタマーサポートと似ている言葉ですが、その手法や目的は全くと言って良いほど違います。

カスタマーサポートとの違いは…?

カスタマーサポートはプル型と言われており、顧客からお問い合わせが無い限りこちらからアクションを起こすことはありません。また役割についても、海外ではbreak&fix(壊れたら治す)と表現される通り、基本的は顧客に何かしらトラブルが発生していて、その解決を行うのが主目的となります。当然、トラブルは発生せず人件費は抑えられた方が良いので、KPIは対応件数や対応時間が指標となります。

一方でカスタマーサクセスはプッシュ型の動きを行います。顧客からの連絡を待つのではなく、顧客の目的を達成する為のより良い改善方法をこちらから提案する形となります。主な目的は退会(チャーン)の阻止とアップセルやクロスセルとなるので、プリセールス(営業サポート)とも捉えられています。KPIは契約更新、アップセルなどが当てられます。

簡単にまとめると、カスタマーサクセスとはこちらから顧客がビジネスの目的を達成出来るよう働きかけて、退会を阻止したり、更に売上につなげていくものです。

サブスクは解約こそが一番怖い

サブスク型サービスに取り組んだことがある人は「穴の空いたバケツに水を注いでいる」感覚に陥ったことがあると思います。

サブスクが世の中の潮流となっていますが、利用者の獲得には、プロモーションや施策、営業など思った以上のコストが掛かります。一方でどんなに良いサービスでも、最初のうちは解約率が高く、利用者が増えて同じくらい(時にはそれ以上)利用者が減っていく状況に陥ります。

退会の理由は様々だと思いますが、商品自体が悪い場合や明らかに競合商品に負けている場合はカスタマーサクセスよりも商品作りに力を入れましょう。一方で、良い商品を提供しているのに退会率が高い理由は、利用していることを忘れてしまって思い出したタイミングで退会している、使い方が良く分からない、社内浸透が図られていないなど、主に「利活用されていない」ことが原因となります。

つまり「利活用」してもらうためにアプローチをかけることがカスタマーサクセスの本質と言えます。

実は解約のリスクは、ある程度顧客の動きから推察する事が出来ます。例えばシステム系サービスでは、意図しないサービス停止が発生した場合にしばらく時間を置いてから解約が発生します。また、顧客から細かい問い合わせが多くなったり、ログインなど利用頻度に関わる指標が減少していたり、支払いが遅れる場合などは解約のリスクが極めて高いと考えられます。これらを自動的にスコアリングして測る指標は「カスタマーヘルススコア」と呼ばれています。

このカスタマーヘルススコアに基づいたアプローチも非常に有効です。

"顧客を平等には扱わず"効率的にアプローチする

ではカスタマーサクセスでは全員の顧客に対してひたすら提案するのかと言うと、当然そんな事はありません。

「お客様は神様」なんて言葉がありますが、カスタマーサクセスは逆に「全ての顧客は平等ではない」という考え方に基づいて、施策を実施します。

顧客をライフタイムバリュー(LTV)によってハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという3つの段階に分けます。シンプルに考えると、1万円の収益が得られる100社を丁寧にカバーするよりも、100万円の収益が得られる1社に手厚く対応する方が楽ですよね。ABC分析に近い考え方とも言えます。

ハイタッチは売上が大きい大口顧客で、個別のサポートや専任の担当者を当てるなどの手法を採ります。人的コストを掛けて、丁寧に対応を行うわけですね。

テックタッチは、売上は小さいけれど対象者が一番多い層で、人による接点では無く、デジタルを活用します。例えば、メルマガなどもその一つですね。他にもウェビナー、顧客同士のコミュニティの形成、カスタマーサミットなどの手法があります。お問い合わせサポートも、テックタッチ層には電話ではなく「チャットボット」「お問い合わせフォーム」に促すのも一つの手かも知れません。注意が必や要なのは、テックタッチも重要であるという点です。ちりも積もれば山となるように、テックタッチの収益への影響は大きいのも特徴です。

ロータッチは中間層で、ハイタッチの手法とテックタッチの手法の両方を取り入れながら連携するイメージです。

利活用さえしてもらえれば、間違いなく継続利用には繋がります。一方で、カスタマーサクセスは万能ではありません。例えば、商品に重大な欠陥がある場合は、いくらカスタマーサクセスに取り組んだとしても穴埋めにはなりません。また、競合となる商品が大きな優位性がある場合も同様です。こう考えると、カスタマーサクセスは穴を埋めると言うよりも、商品本来の力を最大限に発揮出来るように顧客に提案し、信頼を獲得することと言えるかもしれません。

ぜひ一度、自社の組織や施策を見直してみてください。

より深く知りたい方は

こちらの本はカスタマーサクセスについて、組織の作り方から顧客対応まで網羅的に書かれていて参考になりました。


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