医者の選び方

皆、何かしらの職業に従事する中で「その仕事をしていそうな人」になっていきます。

アメリカンエキスプレスのビジネスゴールド営業の人たちは空港の出発ロビーで経営者や個人事業主を見抜くスキルを持っています。このスキルの面白さは「経営者や個人事業主」であることを見抜くスキルに加え、「その人がまだアメリカンエキスプレスの会員でない」であろうことも見事に当てられるということで、彼女たちは(魅力的な女性が多い)人混みからダブルでスクリーニングして高確率でターゲットを当てていることになります。僕は一時期よく外国に出かけていたので空港でこれを観察するのが趣味でした。面白いほどデスクの方に連れていかれる人が多い(ノベルティーのペンがもらえるから?)んですね。

なぜ人は自分の仕事に「就いていそう」な風貌を纏うようになるのでしょう。仕事は人間の人生の時間を占める割合が大きいからでしょうか?レンガ職人はレンガ職人になっていくし、ラッパーはラッパーっぽくなっていくし、弁護士は弁護士になっていくし、ベンチャー勤務の人はベンチャー勤務っぽくなっていくんですよね。

これについての解釈は、人を共同体( 群れ )の中で生活する動物と捉えると、そのように同化した方が生存確率が上がるから、という見解が有力かと思います(例:上司が喫煙者なら部下の喫煙率が上昇する)。

しかしながら以前このnoteでも触れたことがある元トレーダーのナシーム・ニコラス・タレブは著書「身銭を切れ」の中で「自分の手術を任せる時の心臓外科医は医者っぽくない人の方がいい」という主張を展開しています。なぜかというと、そのように人は一般的に「っぽく」なっていくものだという原理に「抗って(あらがって)」もなおその医者っぽくない医者は自らの地位を維持できるということは「おそらく大変な実力の持ち主であるだろう」という推論ができるから、というのが理由です。僕は概ね(おおむね)この意見に同感です。

これを読んでくださっているあなたは果たしてどちらのタイプでしょうか?医者っぽい医者?あるいは医者っぽくない医者、ですか?

( 文・西澤伊織 / イラスト・illust_himeさん )

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