封鎖区域の向こう側　-チェンパラ異聞-｜夢を渡る小説家イーノ

2021年11月28日 21:50

No.13　恨みの連鎖

それをチームと呼ぶには、まとまりがなさ過ぎた。

大志などなく
勝手気ままに先を争い
軽薄で

そして粗暴だった。
それはまさに、烏合の衆だった。

誰が呼んだか「百万の勇者」

そんな連中が、遊び半分に救ってしまった世界があった。
もちろん、まともなハッピーエンドは迎えられなかった。

血祭りにあがったのは、世界を滅ぼす魔女に仕立て上げられた哀れな姫

この地での目的を達し、災いは去った

真の

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夢を渡る小説家イーノ

2021年11月15日 22:37

No.12　胡蝶の夢

これは今、混迷の時代を生きる私たちの物語。

かつて人は、みな冒険者だった。

仕事と遊びに区別は無く、異世界は身近に在り、人と自然はひとつだった。

しかしいつからか、人はそれらを二つに分けた。

己の魂に欠落を生じた人類は、無意識に新たな冒険の場を欲した。

私たちが夜の眠りに落ちるとき、そこには別世界の別の人生が待っている。

人は、それを「夢」と呼んだ。

あなたも冒険者だ。どんな姿で、ど

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夢を渡る小説家イーノ

2021年11月2日 14:08

No.11

いま、新宿島の衣料事情があぶない。

衣食住のうち、食は【口福の伝道者】や【液体錬成】でなんとかなる。
【植物活性】で、野菜も毎日収穫できる。

住も【ハウスキーパー】や【クリーニング】がある。

しかし「衣」は。新宿にはその手の生産設備が無いだろうから、新たに作るのは簡単でない。ハンドメイドする以外では。

街を歩くと。「刻逆」以前は品揃え豊富だった量販店は欠品が目立ち、逆に古着屋が繁盛している

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夢を渡る小説家イーノ

2021年10月8日 09:08

No.9

世界に災いの種がまき散らされた。それは、旧世界の負の遺産。

それは、カタチにならなかった物語。

ヤツらは、行き場を求めてその本質さえ変化させる。見せかけの姿だけを、そのままに留めて。

軍隊の歩みが止まった。あれは例えるなら、ヴェルサイユ条約。第一次世界大戦に負けたドイツが背負った、巨額の賠償金。

澱んだ空気は、のちに悪魔の所業を生んだ。歴史はまた繰り返すのか？

そうはさせない。

かつて

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夢を渡る小説家イーノ

2021年10月4日 11:55

No.8

ディアボロスには「刻逆」で記憶を失ったり、いきなり種族が変わったりで混乱している者も少なくない。彼らが適応して自力で目的を果たすまでは、継続的サポートの必要あり。

今日も、新宿島に朝日が昇る。

海岸で誰かと通信していたユッフィーが、ふいに不穏な気配を感じて後方に回し蹴りを放つと。

「ひいっ！許してくれよ、な！」

「平安鬼妖地獄変」ディヴィジョンからの漂着者だろうか、いかにも盗賊風の身なりを

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月30日 00:11

No.7　マッドシティ炎上

　街が怒りで燃えている。聞こえるのは怒声と、剣戟の響き。周囲は殺気に満ちていた。当然熱いし、何か焦げる臭いまで感じられるが、炎上しているはずの建物には何の変化も見られない。そこだけ現実感が無かった。

　この炎は、拡張現実めいたフェイクなのか。

　ここは夢の中のメタバース、マッドシティ。人が眠りに落ちれば、誰でも無意識にログインしている現実の裏側。
　目覚めている者には、ただの夜の街。だが夢の中

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月25日 13:19

No.6

スタートは、塀の中。ヘイヘイヘイ♪

（BGM：サガフロンティアより「ディスペア」）

「ホントのナポレオンさぁんはぁ、こんなことしませぇん！」

エルルちゃんにとって、ナポレオンは美食の英雄。
缶詰と、マヨネーズと、たまねぎの歌を広めた人。

なのにホントのことを叫んだら、捕まって牢屋に入れられちゃった。

「…入れ！」

キィと、鉄格子の開く音。また、誰かが連れられてきた。
裁判なしの処刑のた

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月23日 02:14

No.5

オレが許してやってんだ。みんなもな。
だからコレ見てるあんたも、許してやれよ。な！

許さなかったら。どうなるかって？

たぶんアイツら、人生詰むと思う。
それは、たぶん誰も望んでない。オレも含めて。

あんなのに人生20年か、30年か？それくらい捧げちまってるし。
いまさら一般社会で、会社員やってる姿とか…想像つかん。

社会不適合者だな。同類だから分かる。
オレのほうは、だからどうしたって程度

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月19日 22:17

No.4

いつ終わるのか、分からないけど。
明けない夜は、無いはずだ。

地球照、という現象がある。

太陽から来た光が、地球に反射する。
反射した光が、月を照らす。月の欠けた輪郭を、うっすらと浮かばせる。
その光がさらに月面で反射して、地球に届く。これが地球照。

こういう相互作用は、世界のあらゆる場所で起きている。

地球と月、グローバルとローカル、集団と個人…

そして、夢と現実。

スピリチュアルの

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月17日 00:03

No.3

「この地球、パイみたいに切り分けられちゃってますね」

　それはまさに、列強諸国による中国の分割を描いた風刺画のようで。

「ディヴィジョンとは、よく言ったものですの」

「今回は、ガーデナーにしてやられました」

（BGM：サガフロンティアより「ブルーのテーマ」）

　緑の髪の少年は、白衣の研究者らしく頭を掻いて。宿敵の作り上げた奇妙な「植民地」の遠景を見下ろし、どうしたものかと思案顔。

「全

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月16日 10:26

No.2

エルルは夢を見ていた。

ここは、ナポレオン１世が治める時代のフランスか。

彼女は異世界人だ。けれど根っこをたどれば祖先は地球人で、ヨーロッパには浅からぬ縁があった。

ある地球人と知り合い、教えてもらった日本の漫画。フランス革命の時代を生きた、男装の麗人の物語だ。

あの後、フランスはどうなったのだろう。聞いてみると、その人はこう答えてくれた。

ヨーロッパの王侯貴族はたいてい血縁のつながりが

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夢を渡る小説家イーノ

2021年9月15日 23:09

No.1

ここは、どこだ。

オレ様は…そう、地獄に落ちたはず。

京の都で。

あの日、羅城門の楼上で老婆から死人の髪で作ったカツラを奪い、一目散に逃げてから。オレ様は盗みに殺し、あらゆる悪事の限りを尽くしてきた。

だけど、ひとつだけ気まぐれに助けてやった蜘蛛の糸をたどって。オレ様はあと少しで極楽に登ることができたのに。

糸が急に切れやがった。

そうして、元の地獄へ真っ逆さま。そのはずだった。

な

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封鎖区域の向こう側 -チェンパラ異聞-

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