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映画鑑賞

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2022年6月の記事一覧

"ムショ"のコミュニケーションから"シャバ"を考える~映画『プリズン・サークル』~

以前の拙稿で2021年にスクリーンで観た映画をリストアップした。
その映画のほとんどについて、習作という意識で頑張って何かを書いたが、書かなかった映画もある(別に誰かに頼まれた訳でも、それによって収入を得ている訳でもないので、書かないことについて何とも思わない)。

その中の一つが『プリズン・サークル』(坂上香監督、2017年)だ。
この映画については「書かなかった」のではなく「書けなかった」。

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映画『空気人形』

2022年6月、韓国の女優ペ・ドゥナの過去作を2本、別々の映画館で観た。
1本目は「新宿東口映画祭」として新宿武蔵野館で上映された『リンダリンダリンダ』(山下敦弘監督、2005年)で、2本目が是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』関連企画として渋谷のWHITEシネクイントで上映された『空気人形』(是枝監督、2009年。以下、本作)(彼女は『ベイビー~』にも出演している)。

本作は冴えない中

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映画『スープとイデオロギー』

映画『スープとイデオロギー』

映画『スープとイデオロギー』(ヤン ヨンヒ監督、2022年。以下、本作)の冒頭。
いきなりヤン監督のオモニ(母親)の口から、耳を塞ぎ目を逸らしたくなる体験談が語られる。
無知な私の記憶ではこのシーンを語れないので、本作のパンフレットに掲載されている立命館大学名誉教授・文京洙氏の文章を引用する。

『サムチュンが銃床で殴り殺された記憶』は、もっと生々しく語られる。『銃床で後頭部を強く殴られた勢いで、

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音楽が「心通わせる」希望~映画『リンダリンダリンダ』~

2022年6月、新宿武蔵野館(及びシネマカリテ)による「新宿東口映画祭」の企画でリバイバル上映された映画『リンダリンダリンダ』(山下敦弘監督、2005年。以下、本作)を観て思った。
本作の舞台である2004年が、20世紀と21世紀の「端境期」だったのかもしれない。

2022年公開の映画『麻希のいる世界』(塩田明彦監督)を観て、私は『「音楽」が、心通わない無力な存在になってしまったことに対する絶望

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