吉田裕子の自作俳句メモ

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自選十句「翠嶺の花」(結社誌『松の花』11月号掲載)

うちの結社に「翠嶺集」という同人の枠があります。各月の巻頭作家になると、数ヶ月後の結社誌で自選十句を掲載してもらえます。

ありがたいことに、8月号で巻頭作家に選んでいただいたため、11月号に、以下の自選十句+近況エッセイを掲載していただきました。 

自選十句春一番鋭き解に大きマル
受験子の意志の漲る成の撥ね
籠り居の読書進まず兼好忌
小町忌や借りたる本に付箋あり
紫陽花の糸雨 鷗外荘閉館す

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心より御礼申し上げます。

〈筆止まる窓に日増しの木下闇〉ほか自作俳句6句(『松の花』松の花集 9月掲載)

松の花集の掲載5句結社誌『松の花』の2021年9月号に掲載された句です。投句したのは7月上旬でした。

風薫る書風明るき書道展
青き峰ローン三十五年なり
花びらを外し目玉の日輪草
筆止まる窓に日増しの木下闇
侵入の蝿と階下の工事音

風薫る書風明るき書道展→知人の出品する書道展へ、お招きにあずかりました。鳴鶴流天溪会、明るく清らかな書風が印象的な流派でした。東京芸術劇場にて。

青き峰ローン三十五

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ありがたいです。これを励みに頑張ります。

「泣く人の傍にただ居て六月尽」ほか自作俳句6句(『松の花』9月号「翠嶺集」掲載+α)

『松の花』9月号 同人「翠嶺集」掲載5句2021年6月25日〆切分ですが、編集長の寛大さに甘えて7月になってから投句しました……。

昼寝せる鼾(いびき)と見たる悲劇かな
信長の暴虐を読む外は雹(ひょう)
亡き夫(つま)を九十の夏に綴る人
落雷や命は道理外のもの
泣く人の傍にただ居て六月尽

信長の暴虐を読む外は雹(ひょう)→主宰している吉祥寺古典を読む会で、太田牛一『信長公記』を読みました。天正

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嬉しいです。これからも精進します。

〈枝払ふ日の予告ある緑かな〉ほか自作俳句8句(『松の花』8月号掲載+α)

結社誌の『松の花』の8月号、全員参加の「松の花集」に掲載された5句をご紹介します。
2021年5月25日〆切分のため、初夏の句が多いです。

松の花集掲載5句枝払ふ日の予告ある緑かな
大工らにアイスコーヒーお茶に水
棟上げの二階へ梯子夏の雲
嵌め込みの窓の向こうの青嵐
コロナ禍を夫(おっと)着慣れしアロハシャツ

松の花集掲載句へのコメント枝払ふ日の予告ある緑かな→5句中、秀句とされた句です。青々

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わざわざ押してくださるとは! 感謝いたします。

「小町忌や借りたる本に付箋あり」ほか自作俳句8句(『松の花』8月号翠嶺集掲載+α)

『松の花』8月号 同人「翠嶺集」掲載5句2021年5月25日〆切分です。

小町忌や借りたる本に付箋あり
かすかなるむぎぶえ里は暮まだき
遠雷や太宰渡りし跨線橋
江戸の歌習ふ稽古場青簾
髪洗ふ源氏の姫は月一度

小町忌や借りたる本に付箋あり→小町忌は旧暦の3月18日で、2021年でいうと新暦の4月29日でした。図書館で借りた本に、誰かの学んだ痕跡である付箋が残っていたとき、改めて、多くの人に読み継

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心より御礼申し上げます。

「かはづ鳴く千枚の田は靄の底」ほか自作俳句16句(『松の花』2021年7月号掲載+α)

松の花集掲載句5句われの背の倍の花桃つよき紅
養花天ぱんだはのたりのたりかな
熊野へと続く道なり春の雨
鳥曇り内海凪ぎて色もなく
かはづ鳴く千枚の田は靄の底

『松の花』7月号(4月25日〆切分)では、結社誌のメインとなる「松の花集」で第七席に選出していただきました。掲載句はいずれも、年度代わりの頃の三重県・奈良県・和歌山県の旅を詠んだ句で、いい記念になりました。

われの背の倍の花桃つよき紅→実

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嬉しいです。これからも精進します。

「春園やしやがむ二歳の目の高さ」ほか自作俳句18句(『松の花』2021年6月号掲載+α)

松の花集掲載句春雨や吉田博の版画展
暮れかぬる空に弦月潔し
春園やしやがむ二歳の目の高さ
昨年(こぞ)の葉とともに吹かるる柳の芽
母の木のひこばえは我が新居へと

春雨や吉田博の版画展→上野の東京都美術館に見に行きました。印象に残ったのが、「東京拾二題 神楽坂通 雨後の夜」など、雨の情景をやわらかく描いた版画でした。折しも展覧会を見に行った日も、春雨の日で、こんな一句となりました。

暮れかぬる空

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ありがとうございます。いい一日になりますように。

「赤子の手ほころぶがごと羊歯萌ゆる」ほか自作俳句18句(『松の花』2021年5月号掲載+α)

「松の花集」掲載句春の月見をるに見られてをるやうな
赤子の手ほころぶがごと羊歯萌ゆる
天井に迫る盆梅二百歳
お鮨屋のレジに売らるる春蜜柑
苦虫やバレンタインの日の歯痛

こちら、第八席でした(嬉しい!)。

春の月見をるに見られてをるやうな→元々〈春の月見るに見らるる心地せり〉としていたのを直していただきました。添削後、状態であることが強調されるとともに、説明より実感の向きが強くなったと感じます。

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楽しんでいただけていたら幸いです。

「消毒の机に冬の小さき蠅」ほか自作俳句(『松の花』2021年3月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(12月末投稿分)
寒風や一席空けの落語会
再検査せよとの通知もがり笛
消毒の机に冬の小さき蝿
よちよちと着ぶくれの子は鳩を追ひ
王朝の恋を紐解く聖夜かな

寒風や一席空けの落語会→12/5、日比谷図書文化館で開かれた桂春蝶さんの落語会を訪ねました。感染対策のため、一席空けで、常時換気。実際に吹きすさぶ寒風以上に、心は寒々しさを感じてしまいます。噺家さんもこの空気の客席を笑わせ

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「松は色変へず藤十郎逝きぬ」ほか自作俳句(『松の花』2021年2月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(11月末投稿分)
新宿に空のあるなり鰯雲
秋うらら面接へ向かふ夫(つま)送る
夕日さす割れ窓の庭ゆず実る
新居建つ更地いちめん草紅葉
踏まれずや桜紅葉を散り重ね

新宿に空のあるなり鰯雲→職場のそばで見上げた秋の空。私の好きな空です。もちろん『智恵子抄』の「あどけない話」を意識して詠んだ句です(智恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ……)。
今月の「松の花」

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楽しんでいただけていたら幸いです。