「春園やしやがむ二歳の目の高さ」ほか自作俳句18句(『松の花』2021年6月号掲載+α)

松の花集掲載句

春雨や吉田博の版画展
暮れかぬる空に弦月潔し
春園やしやがむ二歳の目の高さ
昨年(こぞ)の葉とともに吹かるる柳の芽
母の木のひこばえは我が新居へと

春雨や吉田博の版画展→上野の東京都美術館に見に行きました。印象に残ったのが、「東京拾二題 神楽坂通 雨後の夜」など、雨の情景をやわらかく描いた版画でした。折しも展覧会を見に行った日も、春雨の日で、こんな一句となりました。

暮れかぬる空に弦月潔し→弦月は、上弦・下弦の月。弓張月ともいいます。少しずつ日が長くなっている、春のやわらかな夕景のなか、やたらに月がくっきりと見えました。「潔し」と評価語を入れるのはどうかと悩みましたが、あえて。

昨年(こぞ)の葉とともに吹かるる柳の芽→添削前は〈柳の芽昨年の葉と吹かれをり〉でした。より、新芽にフォーカスした詠みぶりに変わりましたね。

母の木のひこばえは我が新居へと→添削前は〈母の木のひこばえ我の新居行き〉でした。小さな桜の木を譲ってもらう予定です。

今月、秀句として巻頭ダイジェストに掲載されたのは〈春園やしやがむ二歳の目の高さ〉でした。妹がSNSに投稿している、二歳の姪っ子の動画から着想したものです。

翠嶺集掲載句

出番前楽屋机の春蜜柑
金屏風背に心中を語る春
二階から三味の音梅の神楽坂
大学院大の大人の大試験
一仕事終へり薇ほどけをり

大学院大の大人の大試験→京都芸術大学の通信制大学院で学んでおりますが(現在M2)、M1→M2の進級のかかった期末レポート提出期間の思い出です。「大試験」が季語で、進級のための学年試験や卒業試験のこと。必修科目の提出〆切が近付くと、Facebookグループが阿鼻叫喚の様相でございました(苦笑) 「大」という字を連呼した遊びの句でもあります。

一仕事終へり薇ほどけをり→生け花のお稽古で、薇(ぜんまい)を使いました。くるりとかわいらしい薇。職場に飾っていたところ、少しずつほどけていくことが分かりました。一仕事終えて顔を上げたときに、そのことに気が付いた様子を詠みました。

松の花集・翠嶺集に投句するも未掲載の句

お弾き初め禿頭翁(とくとうおう)の娘役
ごみ出しの我の鼻腔に沈丁花
乗換を紛ひたる日の春夕焼
締め切りの朝のまどろみ春嵐
街道の消失点や遠がすみ
街路樹の根もと花韮(はなにら)缶ビール

乗換を紛ひたる日の春夕焼→これは飯田橋駅から見た、こんな夕焼けの句でした。

鑑賞文をお寄せいただきました

四月号に掲載された〈鐘凍る初の共通テストなり〉に、松田さんからこのような鑑賞文を頂戴しました。

上記の句で、気に入ったものなどありましたら、スキ・コメント等で教えていただけたら嬉しいです。

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