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「小町忌や借りたる本に付箋あり」ほか自作俳句8句(『松の花』8月号翠嶺集掲載+α)

『松の花』8月号 同人「翠嶺集」掲載5句

2021年5月25日〆切分です。

小町忌や借りたる本に付箋あり
かすかなるむぎぶえ里は暮まだき
遠雷や太宰渡りし跨線橋
江戸の歌習ふ稽古場青簾
髪洗ふ源氏の姫は月一度

小町忌や借りたる本に付箋あり→小町忌は旧暦の3月18日で、2021年でいうと新暦の4月29日でした。図書館で借りた本に、誰かの学んだ痕跡である付箋が残っていたとき、改めて、多くの人に読み継がれていく本の力を感じました。

かすかなるむぎぶえ里は暮まだき→山村暮鳥の「風景 純銀もざいく」からの本歌取りです。元の詩から、菜の花畑の広がる山里の情景を借りながら、そこが暮れていくときを描きたいと思いました。

遠雷や太宰渡りし跨線橋

太宰が愛した跨線橋、撤去の危機 VRで残すなど検討
朝日新聞 2021年3月19日11時49分
https://www.asahi.com/articles/ASP3L6WWSP3KUTIL03Z.html

三鷹駅の西に、太宰治ゆかりの跨線橋(こせんきょう)があります。老朽化に伴い、撤去される恐れがあると聞き、訪ねておくことにしました。
あいにくのお天気でしたが、曇天や遠雷のどこか不穏な感じは、少し太宰治という人を思わせます。

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掲載から漏れた句

山寺に幾星霜の竹床几
心経を五回せめての夏書かな
万緑のベンチにぽつん老眼鏡

夏書(げがき)とは、夏の季語で、4/16から90日間の夏安居(なつあんご)の期間、写経を行うことをいいます。在家信者でも読経、写経を行って、解夏(げげ)ののち、先祖供養のため納経するのだそうです。

〈万緑のベンチにぽつん老眼鏡〉を作ったときに思い出していたのは、宇多田ヒカルさんのお話。本来あるはずのないところにある落とし物に、どこか自分を重ね、妙に惹かれてしまうのだと語られていました。

宇多田ヒカル「本来たどるべき運命からこぼれ落ちて…」 落とし物の世界を熱弁 
サンスポ 2020/01/04
https://www.sanspo.com/article/20200104-MTYELKDOWBIHTBGXPHEIFXOJ7Q/


以上、掲載句でも非掲載句でも気に入った句がありましたら、お聞かせいただけたら嬉しいです!

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