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最近読んで良かった本3選【読書記録】#18

ほんの些細なことでも考えれば考えるほど深みに嵌ってしまう。

自分の中で最近そんな傾向が強い。

日記を書くことを習慣にして早くも約1ヶ月。

noteに書いたり人に話したりするにはあまりにも個人的で雑多な内容を視覚化でき、そのプロセスが楽しくなってきた。

何より漢字の練習にもなる。

今回は捉えどころのないモヤモヤ感をいくらか和らげてくれた本たちをご紹介。


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「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

どこでこの本を知ったのか覚えていないが、長らくリストに眠っていたため購入。まだ20代とはいえ徐々に年齢を重ねるうちに、自分が”若者”であることに無理が生じていると感じていたこともあって一気に読了した。

”若者”と”大人”との立場の違いや変化について様々な視点で論が展開されていてかなり面白かった。

自分にとってベターなアイデンティティを探している最中の人間にとって最適な生き方と、すでにアイデンティティができあがってしまっている人間にとって最適な生き方は、イコールではない──この認識が「若者」をやめて「大人」になっていく際の心構えとして、きわめて重要なポイントになります。
アイデンティティが確立した中年のモノの見え方

”大人”は”若者”をそのままそっくり大きくした概念ではなく、全く別のベクトルの価値観で生きていると著者は言う。だから”大人”になれないままの”若者”もマズいが、”大人”が”若者”と同じ振る舞いをするのも心身を滅ぼすことになる。

しかし地域社会の希薄化やメディアの示す理想像などによって、若者らしくあることが正義であり自由の象徴であると印象付けられてしまった現代日本。情報社会にあって加速していく若い世代の成長。その中で”大人”に上手くシフトチェンジするための心の準備として特に20代前半の人は読むべきかもと思った。

個人的には恋愛・結婚についての章で非常に共感したことが多かった。

パートナー選びの重点も、美しいセックスの相手や自分のアイデンティティを補強してくれるアクセサリとしての適性から、共に生きていくための相棒、お互いに背中を預けられる戦友としての適性へと変わっていくことになります。
早く気付いた人から素晴らしい「戦友」を得る

”恋人”ではなく”相方・相棒”としてのパートナー。同じ方向へ人生を共に歩む戦友としての感覚。僕が最近辿り着いた心境を見事に言い当てており、思わず立ち上がりそうになってしまった。経験値を高めたり傷ついたりする体験として短く燃え上がる衝動的な恋愛も当然必要なのだが、やはり持つべきものは信頼し合えるパートナーシップだと思う。だから、外見を磨くことと同等以上に自身の持つソーシャルスキルを洗練させることが信頼関係の構築に直結するとのこと。

他にも引用したい部分が沢山あるほどこの本は総じて素晴らしかった。今年読んだ中で最も良かった1冊のひとつかもしれない。


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ミトンとふびん

とにかく言葉に触れたくて読んだ本。吉本ばなな氏の綴る心臓を鷲掴みにするような優しさに溢れた文章がとても好き。

覚悟が決まっていると見えてくる景色はみな穏やかで、地の底か海の底か、そんなところから眺めているようだった。
SINSIN AND THE MOUSE
だれかと暮らすというのは、青海苔が細かく散ったその人のTシャツをひたすら手で洗ったり、ラベンダーのろうそくをつけてごきげんに過ごしていた部屋に、全身酒と炙りものの匂いをさせながら帰ってきた人を、「ラベンダーに打ち勝つなんて最強のアロマだな」と苦々しく思っても文句を言わず良きタイミングで細く窓を開けたり、風呂に入ろうとすでに半裸になっていたのに、なかなか彼が風呂から出てこないで風呂の中で歌まで歌っていたりするのをなにか羽織りなおして待っていたりすることだ。
ミトンとふびん
ただ常に生活の全てが悲しみの重低音に覆われてるという程度だった。
カロンテ

短編小説集だから読み易いし、言葉の美しさがギュッと凝縮されている気がする。吉本ばなな氏の小説には別れをテーマにした作品が多く、今作でも人生の節目を迎えた登場人物たちが抱える哀しみの描写の緻密さは圧倒的だった。

それでも陰鬱な気分になることは無く、不思議と爽やかで凛とした読了感に包まれる。登場人物だけではなく読者にも救いの手を差し伸べるかのような温かさが印象に残った。


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断片的回顧録

装丁が素敵すぎる燃え殻氏の日記のような回顧録。断片的というだけあって2~10行程度の呟きに近い言葉が書き連ねられている。

特に得るものは無いのだが、時々芯を食った表現があって意表を突かれた感覚になる。

ただ生きているとそんなにキレイさっぱり割り切れるわけでもない。薄く死にたくなるときがある。心の中でなにかが壊死していく感覚に襲われる。そうなったときの解毒剤が、映画を観たり、小説を読んだり、美術館に行ったりすることなんじゃないかと思っている。
十二月十九日

ふとした時に降ってくる虚無感や憂鬱を解きほぐすものとしての芸術。この視点は鮮烈だったが、思い返せば確かにそうかもしれない。優しい言葉に触れたくて『ミトンとふびん』を読んだり、人生観に悩んで『「若者」をやめて、「大人」を始める』を読んだりした。

難しく考えずとも芸術なんてそれくらいが丁度いいのかも。


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そろそろ冬。

心と身体を温めながら、じっくりゆっくり成長していきたい。

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