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「自転しながら公転する」山本文緒 著 を読んで

 この本は、色んな意味でとても話題になったので、すぐには図書館で入手できないと思い、そのまま忘れていたのだが、最期の日々を書いた日記が出版されたときに思い出して図書館にリクエストを出したところ、割と早く手に入った。

 本を読み終えてから、プロローグとエピローグは出版されるにあたって、書かれたものだということを知る。
プロローグに引っ張られて、勝手に話の展開をこうだと決めつけて読んでしまったので、出来ればプロローグを読まずに本文を先に読めばよかったなぁとちょっと後悔。その後、読んだ母には助言したくらい。

 できれば連載中に読んでみたかった作品。おそらく製本されるにあたって、色々手直しされたのだと思うけれど、連載時に、その書いた勢いのまま、読んでみたかったとしみじみ。特にこれが最後の長編になってしまったので、なおさらそうだ。
 本書を読み終えてから、以前書かれた「なぎさ」を読んだのだが、色々と重なる部分はあるものの、やはりこちらの方がすっきり、そして、どの登場人物にも感情移入して読めたような気がする。

 この人の小説は、直木賞を取ってから年齢が近いというので読み始め、その後、ホームページとかをやっているのを知り、それがとても面白くて、秘書たちとのやりとりとか、再婚相手の「王子」とかとても楽しそうな感じで、小説よりかはそっちの方でも好きになった作家さん。その後、うつ病をわずらわれたり、長い長い迷路の中を歩いてきて、ようやく小説が書けるようになって、本当に読者が長年待ち望んだ長編がこの作品なんだと思う。

 もともと漫画が好きだったということだが、年齢が近いので、購読していた漫画雑誌も、もろにかぶる。うちは三姉妹だったので、三人のお小遣いで買うことが出来たのだが、一人だったら大変だっただろうなぁなんて思ったり。
 この本も、そういう意味ではなんだか漫画チックな恋愛小説といえばそうで、次はどうなるんだろう、この次は、そして結末は…とページをめくるうちに、あっという間に読破してしまった。それぞれの登場人物の悩みや生き方なんかもとても深く描かれていて、共感が持て、長編の代表作というのにふさわしい小説だった。

 もっともっとこんな長編を読みたかったなぁ。でも素敵な作品を残してくれて本当にありがとうと言いたい。またもう少し時間をおいて、新たな気持ちでじっくり再読してみたい作品。