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光触媒:光と水を用いてセルフクリーニングで消毒や防汚を行う(CASE: 6/100)

▲「光触媒」とサステナビリティ

博士課程の学生だった頃、光触媒の研究室に所属し、日々白衣を着て光触媒の薄膜を作成していました。

物質に光を照射したときに、その物質そのものは形を変えないにもかかわらず、その周辺の物質に化学反応を促すものを、光触媒と呼びます。

代表的な光触媒物質である酸化チタンは、その結晶構造を化学的に最適化し、紫外線を照射することで、主に2つの光触媒作用をもたらします。

一つ目は、有害物質の分解です。たとえば病院の手術室の壁・床を酸化チタンでコーティングすることで、消毒液などを用いず紫外光ランプを照らすだけの容易な殺菌処理が可能となります。

二つ目は、超親水性と呼ばれるもので、ガラス表面や外壁等を酸化チタンでコーティングしておけば、水がついても表面で水滴とはならず、そのまま流れ落ちます。雨などで定期的に水が流れることにより、表面が自然と洗浄されます。

つまり、光触媒である酸化チタンのコーティングと紫外線さえあれば、床の有害物質の分解と外壁の洗浄が行えるという仕組みです。

私たちの日常生活で考えると、たとえばビル外壁や窓ガラスなどを酸化チタンでコーティングすることで、太陽光に含まれる紫外線を用いて、表面に付着していた汚れを分解したり、汚れと材料表面の隙間に雨水を流して汚れを落としたりと、「セルフクリーニング」とも呼ばれる作用を生じさせることができます。

追加の化学物質も人為的な作業も必要がなく、太陽光と雨水のみでセルフクリーニングでき、ある意味、局所的に再生可能エネルギーによる洗浄作用を実現しているとも言えるでしょう。

身体に害のある物質に対して、石鹸やエタノールなど別の化学物質を用いて消毒や洗浄を行うといった対抗的な対処に、私たちはいつの間にか慣れ親しんできました。光触媒の例では、自然との境界面を考え直すことで、人間の作り出した人工物に自然の力を最大限活用し、利用するエネルギーを最小化することに成功しています。相手の力を利用する合気道的な対処と言えるかもしれません。人工物と自然は本質的には対局するものではありません。この光触媒の事例は、私たちがその境界面を工夫することで、それぞれの力を相互に活かし、エネルギー利用を最小化できる事例で、まだ他にも活用シーンが考えられそうです。

▲参照資料

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。

2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab マネージング・ディレクター 横田幸信

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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